2016 Fiscal Year Annual Research Report
Comprehensive understanding of bacterial adaptation mechanism in diabetic host
Project/Area Number |
26460062
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
松本 靖彦 帝京大学, 医真菌研究センター, 講師 (60508141)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 黄色ブドウ球菌 / 感染症 / カイコ / 糖尿病 / 高血糖 |
Outline of Annual Research Achievements |
糖尿病は、慢性的な高血糖や耐糖能の低下を示す症状のことであり、様々な合併症を引き起こす要因となる。その合併症のひとつに、糖尿病感染症がある。黄色ブドウ球菌は、ヒトの皮膚や鼻腔に常在する細菌であるが、糖尿病患者に対して高い感染性を示し、敗血症、心内膜炎、足部潰瘍など重篤な疾患を引き起こす。本研究では、独自に開発した高血糖カイコ感染モデルを用いて、黄色ブドウ球菌の糖尿病宿主感染に必要な宿主適応機構の解明を行った。 平成26年度において、我々は、高血糖カイコの感染モデルを用いた網羅的な遺伝子発現解析により、糖尿病宿主内で発現誘導されている遺伝子群の同定を行った。黄色ブドウ球菌が糖尿病宿主に感染するために必要な特殊な遺伝子群を発現上昇する機構を有していることを明らかにした。 平成27年度において、我々は、同定された複数の代謝経路からin silicoでのpathway解析により、分岐鎖アミノ酸合成経路が最も重要であることを推定した。そこで、黄色ブドウ球菌のある分岐鎖アミノ酸合成酵素の欠損株を用いた遺伝学的解析を行った。黄色ブドウ球菌の分岐鎖アミノ酸合成酵素の欠損株が高血糖カイコに対する殺傷能が低下していたが、通常カイコに対する殺傷能は低下していないことがわかった。 平成28年度において、我々は、黄色ブドウ球菌の分岐鎖アミノ酸合成経路に関わる複数の欠損株を作成し、それらの遺伝子欠損株が高血糖カイコに対する殺傷能が低下していることを見出した。また、これらの遺伝子欠損株は、通常カイコに対する殺傷能は低下していなかった。 本研究から、黄色ブドウ球菌が糖尿病宿主に感染するために分岐鎖アミノ酸合成経路の酵素群の発現誘導を介して糖尿病宿主環境に適応することにより病原性を発揮することが示唆された。
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