2014 Fiscal Year Research-status Report
ARBs服用患者における血清中EETs濃度と心血管系イベント発症との関係
Project/Area Number |
26460229
|
Research Institution | Hokkaido Pharmaceutical University School of Pharmacy |
Principal Investigator |
戸田 貴大 北海道薬科大学, 薬学部, 教授 (00254706)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
猪爪 信夫 北海道薬科大学, 薬学部, 教授 (10191892)
早川 達 北海道薬科大学, 薬学部, 教授 (50337044)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | エポキシエイコサトリエン酸類 / アンジオテンシンII受容体拮抗薬 / LC-MS/MS / 血清中濃度 / アラキドン酸 / EETs |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARBs)服用患者におけるアラキドン酸代謝物である血清中エポキシエイコサトリエン酸類(EETs)濃度と、ARBsの有害作用として認められている心血管系イベント発症との関連性について評価することを目的としている。 ヒト血清におけるEETsおよびその代謝物のジヒドロキシエイコサトリエン酸類(DHETs)濃度測定におけるサンプル精製方法について検討した。その結果、ヒト血清250 µLにエタノール1 mLを加え十分に混合した後20分静置し遠心分離して得られた上清を、固相抽出カラムにOasis HLB(3 cc, Waters)、抽出溶媒に酢酸エチルを用いた固相抽出を行うことにより、申請者の研究グループがすでに確立しているLC-MS/MSを用いたエイコサノイド類同時定量法によりEETsおよびDHETs濃度を測定することができた。精製法と測定のバリデーションについては、第74回国際薬学会議において発表した。 2015年4月現在で、ARBsを服用していない患者51名、ARBsを服用している患者42名の血清中EETsおよびDHETs濃度を測定済みである。EETsとDHETsの総濃度(以下、エイコサノイド類濃度)を対象に、Mann-Whitney U testにより有意差検定を行ったところ、ARBs服用患者におけるエイコサノイド類濃度(中央値0.50 ng/mL)は非服用患者のそれ(中央値0.86 ng/mL)に対し有意に低値となった(p=0.020)。これは、我々がすでにin vitro研究で見出した、ARBsが各種P450(CYP)酵素を阻害しアラキドン酸からのEETs生成速度低下を引き起こすという現象が、ヒト体内においても起こっている可能性を示している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヒト血清サンプルの精製については、エタノールによるタンパク変性および固相抽出を行うことで、血清中EETsおよびDHETs濃度測定が可能となった。患者例数については、約1年で目標のおよそ半分まで到達している。一方、電子カルテからの患者情報の収集については、血清中濃度測定と比べると若干遅れている。
|
Strategy for Future Research Activity |
まずは、若干遅れている患者情報収集に力を入れる。ここまで得られているARBs服用患者と非服用患者間における血清中エイコサノイド類濃度の有意差をより確実なものとするため、目標例数である各群100名に向けて血清中濃度測定の例数を増やす。それと同時に、服用ARBsごとの血清中エイコサノイド類濃度の違いや、血清中エイコサノイド類濃度に及ぼす患者背景の影響、血清中エイコサノイド類濃度と心血管系イベント発症との関連性についても検討する。これらに関しては、各群100名では十分な統計処理ができない可能性がある。その場合には、共同研究施設である手稲渓仁会病院の倫理委員会に対象数の増加(各群200名)を申請する予定である。これら解析の結果については、平成27年12月をめどに中間報告としてまとめ、適切な学会において発表するとともに論文化し投稿する。
|