2015 Fiscal Year Research-status Report
ナノ化技術を用いた貼付型眼瞼透過性製剤“貼る目薬”の開発と眼感染症治療への応用
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26460243
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
伊藤 吉將 近畿大学, 薬学部, 准教授 (50128633)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | レボフロキサシン / 貼付型眼瞼透過型製剤 / ナノ粒子 / 界面活性剤 / マイボーム腺 / 抗菌薬 / アクリル酸ポリマー / マイバム |
Outline of Annual Research Achievements |
広範囲な眼抗菌療法の確立及び使用時の煩雑性改善を可能とする「ナノ結晶を用いた貼付型眼瞼透過性製剤“貼る目薬”」の開発を目指すべく、平成27年度は薬物ナノ結晶を含む貼付型眼瞼透過性製剤法の眼瞼透過経路について検討した。
薬物ナノ結晶含有製剤の涙液移行機構を解明する: ナノ結晶製剤の涙液移行ルートを解明するため、比較的扱いやすい医薬品であるトラニラストを用いて調査を行った。その結果、家兎眼瞼への薬物適用後、涙液中にてトラニラストの検出が認められた(in vivo実験系)。一方、家兎摘出眼瞼を用いたin vitro系にて、薬物の眼瞼透過性を確認したところ、薬物の透過は見られたが、in vivo系の結果に比べわずかであった。本結果からナノ結晶製剤中の薬物は眼瞼を直接通過し涙液側に移行しているわけではないことが示唆された。そこで、眼瞼中に存在するマイボーム腺に着目し、in vivo系にて家兎眼瞼への薬物適用後のマイボーム腺からの分泌液 マイバム中薬物濃度を測定したところ、涙液中に移行していた薬物の大部分が、マイバムを介していたことが分かった。
以上、ナノ結晶含有ゲルパッチの眼内移行ルートは、眼瞼表面から侵入した薬物が、マイボーム腺に移行し、マイバムとして眼表面に排出されることで、涙液に移行していることを明らかとした。マイボーム腺の障害はオキュラーサーフェスの異常やドライアイ発症などにも密接に関わることが知られており、本剤形がこれらマイボーム腺をターゲットとした新規剤形に繋がることが期待できる。来年度は、すでに作成しているレボフロキサシンナノ結晶含有ゲルパッチ貼付後の涙液移行ルートとその薬効について評価する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、レボフロキサシンナノ結晶含有ゲルパッチ貼付後の眼組織・涙液移行性の把握を計画していたが、レボフロキサシンの眼瞼透過ルートを確認するところまでは到達できなかった。しかし、他の薬物(トラニラスト)にてナノ結晶貼付後の眼内移行はマイボーム腺を介したこれまでにない新たなルートであることを明らかとし、これら結果は本来期待していたものよりも非常に有用なものと思われる。また、すでにレボフロキサシンナノ結晶含有ゲルパッチの調製法を確立していることから、同実験系にて容易にレボフロキサシンナノ結晶含有ゲルパッチの眼瞼透過ルートの確認が可能である。これら新たな眼瞼透過ルートの確認と評価系の確立は、本年度の研究が順調または当初の計画事情の進展に向かっていることを示している。
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Strategy for Future Research Activity |
日本白色種家兎の眼周辺部を除毛後、今回作成したナノ粒子含有貼付型眼瞼透過性製剤を貼付し、経時的に涙液・房水中レボフロキサシン濃度の測定を行う。また、家兎瞼を摘出し、フランツ型透過セルを用いたin vitro薬物透過性及び滞留性についてについて明らかとする。これにより本年度作成したゲルパッチの貼付後の薬物動態を明確に評価する予定である。また、本製剤の皮膚、角膜傷害性や薬効等、より実践的な評価も行っていく予定である。
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