2016 Fiscal Year Research-status Report
哺乳類下顎の形態進化の背景にある発生モジュールの解明
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26460256
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
武智 正樹 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, テニュアトラック助教 (10455355)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 下顎 / 鼓膜 / 形態進化 / 咽頭弓 / 中耳 / 発生進化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、哺乳類が独自の下顎形態を進化させた発生学的背景を明らかすることである。哺乳類の進化過程では、それまで複数の骨要素から形成されていた下顎が下顎骨のみから成る一枚骨となり、その他の骨要素の一部は聴覚器官である中耳として機能するようになった。これまでの研究成果として、哺乳類の下顎の形態進化に深く関与する中耳の成立に着目したところ、鼓膜が哺乳類では下顎の一部、爬虫類や鳥類では上顎の一部として形成されることから、鼓膜を伴う中耳が両系統で独立に進化したことを明らかにした。また両系統において鼓膜が異なる骨要素と関係を持った背景には、顎関節の発生位置の相違があることが示唆された。具体的には、マウスでは上下顎領域の境界がニワトリと比較して背側に形成され、これが両者の鼓膜形成位置の違いを生み出していると考えられる。本研究では、上下顎領域の境界がマウスとニワトリで異なる原因を調べるため、ニワトリの胚発生において上下顎の形態形成が起こる時期を特定し、この時期における上下顎の形態形成に関与する遺伝子の発現をマウスとニワトリで比較した。その結果、これらの時間空間的発現パターンの相違が両者における上下顎境界の形成位置の相違に関与していることが示唆された。次に、マウスとニワトリの鼓膜形成の発生メカニズムの共通点と相違点を明らかにするため、両者における鼓膜形成過程を詳細に比較した。マウスとニワトリにおける第1, 2咽頭弓の境界と鼓膜の形成位置の関係を調べたところ、両者の鼓膜形成位置が大きく異なることがわかった。また、ニワトリにおいて鼓膜形成に関与する咽頭弓を同定するため、ニワトリとウズラを用いた神経堤の交換移植を行い、現在、得られたキメラ胚の表現型を解析している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画と一部異なるものの、本研究課題の目的に関する重要な研究結果を得ることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに哺乳類と爬虫類-鳥類における上下顎境界の形成位置の相違、鼓膜の形成位置やメカニズムの相違について明らかにすることができた。今後はこれまでの実験結果の追試、追加実験によって得られた結論を補強するデータを取得し、研究成果として原著論文や総説を発表する予定である。
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Causes of Carryover |
研究期間中に得られた結果より、一部の研究計画に見直しが必要になり、研究計画当初の想定よりも時間がかかっているため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究計画のうちのまだ遂行していない実験や、すでに得られた研究結果の追試実験に必要な研究用消耗品、試薬の購入費として使用する。また、研究成果を原著論文や総説として発表するための投稿費用に充てる。
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Research Products
(7 results)