2014 Fiscal Year Research-status Report
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26460270
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
井関 尚一 金沢大学, 医学系, 教授 (50167251)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 顎下腺 / 導管系 / 性差 / 細胞分化 / アンドロゲン / 受容体 / 甲状腺ホルモン / マウス |
Outline of Annual Research Achievements |
1) 雌雄マウスの3大唾液腺において消化酵素アミラーゼのmRNAおよび蛋白質の発現と局在を定量的および組織化学的に調べたところ、耳下腺の腺房細胞に強く発現するほか、顎下腺では雄に発達する顆粒性導管細胞に中等度の発現、腺房細胞に弱い発現が見られ、舌下腺では漿液性半月細胞のみに発現が見られた(論文1)。 2) マウス顎下腺の導管系は著しい性差をもち、顆粒性導管(GCT)は雄の顎下腺で発達し、雌へのアンドロゲン投与で線条部導管細胞がGCT細胞に転換する。アンドロゲン受容体(AR)を欠損するマウス(ARKO)の顎下腺を調べたところ、雄のARKOでも雌と同様にGCTが発達せず、アンドロゲン投与によってもGCT細胞への転換がなかったが、甲状腺ホルモンを投与するとARKOでもGCT細胞への転換が見られた。このことから、GCT細胞の分化には古典的なARを必要とすること、甲状腺ホルモンはARなしにGCT細胞の分化を引き起こすことがわかった。正常マウスとARKOマウスとの間で、またARKOマウスにアンドロゲンや甲状腺ホルモンを投与する前後で顎下腺の発現遺伝子を網羅的に比較解析することにより、GCT細胞特異的な新規遺伝子や、ARなしに甲状腺ホルモンにより誘導される遺伝子を同定した(論文2) 3) マウス顎下腺の生後発達において細胞骨格蛋白質のケラチン5(K5)の局在を免疫組織化学で追求したところ、K5は生後まもなくから筋上皮細胞に局在した。さらに、出生直後では導管系細胞に広く存在するが、介在部導管が形成される2週以降は、介在部導管のうち腺房に近い顆粒性介在部導管細胞には存在せず、線条部導管との境界部分の二層性上皮の基底側の細胞、また排出導管の基底側の細胞に局在した。このことから、K5は筋上皮細胞のマーカーであるとともに、線条部導管細胞に分化する前駆細胞のマーカーであることが示唆された(論文準備中)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マウス顎下腺におけるアンドロゲンによる線条部導管細胞から顆粒性導管細胞への分化がアンドロゲン受容体(AR)に依存することが、ARの欠損マウスへのアンドロゲン投与により確認された。さらに、甲状腺ホルモンがAR欠損状態でも顆粒性導管細胞分化を起こすことを発見した。正常とAR欠損マウス、およびこれらにアンドロゲンや甲状腺ホルモンを投与した場合の顎下腺の遺伝子発現をマイクロアレイとPCR法により網羅的に解析し、いくつかの興味深い遺伝子の発現を見いだした。
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Strategy for Future Research Activity |
1) 正常雌マウスへのアンドロゲン投与により、またAR欠損マウスへの甲状腺ホルモン投与により顆粒性導管細胞が分化するときのシグナル伝達経路を明らかにする。このため、両ホルモンの非古典的な(細胞膜経由の)シグナル伝達経路の候補としてMAPK系とPI3K-Akt系に注目し、それぞれの阻害剤を動物に投与したときのシグナル伝達の抑制および顆粒性導管細胞の分化の抑制の有無を調べる。またAR受容体欠損マウスへの甲状腺ホルモン投与により誘導される遺伝子が顆粒性導管細胞に特異的な遺伝子であるという仮説のもとに、網羅的解析で明らかになったいくつかのそのような遺伝子とその産物の発現と局在を解析し、新たな顆粒性導管細胞に特異的な遺伝子産物を解明する。 2) マウスの顎下腺でアンドロゲンに依存して雄と雌とで異なった形質を示すものとして、顆粒性導管以外に顆粒性介在部導管細胞に注目する。この細胞は出生時の顎下腺の介在部導管に多く存在し、腺房細胞に分化するとされ、生後発達において雄では早期に消滅するが、雌では成獣に到るまで少数が存続する。アンドロゲンが働かないAR欠損マウスの雌雄顎下腺においてこの顆粒性介在部導管細胞の存在とその生後変化を調べる。
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Causes of Carryover |
今年度予算は計画的に使用したが、使用額が予算額と完全には一致しなかったため、4,332円を次年度に繰り越した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の試薬購入費の一部にあてる予定である。
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Research Products
(5 results)