2015 Fiscal Year Research-status Report
麻酔薬が大脳皮質興奮性に及ぼす影響についての二連発感覚刺激を用いた解析
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26460329
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Research Institution | University of Occupational and Environmental Health, Japan |
Principal Investigator |
藤木 通弘 産業医科大学, 産業生態科学研究所, 教授 (80334928)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤原 広明 産業医科大学, 産業生態科学研究所, 助教 (10369051)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 体性感覚誘発電位 / 電流源密度推定法 / マイクロダイアリーシス |
Outline of Annual Research Achievements |
具体的内容:平成25年度までにおこなった基盤研究(C)「二連発刺激による誘発電位を用いた麻酔深度・睡眠深度の新しい評価方法の開発」の研究成果として、二連発の感覚刺激の刺激間隔が300 ms程度と短い場合、麻酔深度を深くするにつれて、二発目の刺激に反応する体性感覚誘発電位の振幅が一発目の刺激に反応する電位の振幅より、より大きく低下する現象を見いだした。この発見は、客観的な麻酔深度の評価方法の開発につながる可能性があると同時に、麻酔薬による大脳皮質神経細胞の興奮性変化の生理学的な理解を深めることにおいて重要であると考えられる。 平成26年度は当初の計画に従い、上記の現象が感覚野の皮質層のどの部分で観察されるのかを、電流源密度推定法を用いて確認する実験のセットアップをおこなったが、ノイズ除去が困難であった。平成27年度は記録方法の改善に脳深部電気活動記録の専門家の助言を得て、記録の安定化の試みの効果が現れているところである。また、電流源密度推定法の解析ソフトウェアとして国際的に用いられているCSD plotterを採用することとし、そのセットアップをおこなった。 意義及び重要性:上記の誘発電位の振幅比における現象は、皮質への連続入力が高頻度になると、麻酔などによって皮質の興奮性が低下した場合には、その入力に対して十分に応答できなくなることを示している。これは皮質の興奮性を左右するメカニズムそのものに深く関わっている可能性も考えられ、麻酔や睡眠などによって皮質の興奮性が低下し、意識レベルが低下する機構を理解するために重要な研究であると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
平成27年度は、平成26年度におこなったミシガンプローブを用い電流源密度測定実験のセットアップを継続しておこなった。実験方法としては、セボフルラン麻酔およびベンチレータによる呼吸管理下の正常ラットに、末梢感覚神経電気刺激のための電極を前肢末端に設置し、さらに脳定位固定装置に固定後、刺激と対側の、刺激部位と対応する体性感覚野上の頭蓋骨にドリルで穴を開け、硬膜を切開し、電流源密度推定法のための多チャンネル電極(ミシガンプローブ)を体性感覚野皮質に刺入して遠隔電場電位を記録するというものである。平成26年度はノイズが少ない記録を得ることがどうしても困難であり、記録方法の見直しが必要と考え、脳深部電気活動記録の専門家である福島大学の小山純正教授の研究室を訪問し、記録方法についての相談をおこなった。いくつかアドバイスをいただいた中で特に重要であったのは、誘発電位という局所フィールド電位を記録するには、我々が用いているミシガンプローブのインピーダンスが高すぎる可能性があるという指摘であった。そのアドバイスに従い、インピーダンスが低いプローブを購入して用いたところ、ノイズの低減が得られた。現在は記録系の安定化をさらに図りながら実験をおこなっているところである。また、記録ソフトウェアは平成26年に作成したが、解析用ソフトウェアは自作せず、国際的にも用いられているMATLABベースのツールボックスであるCSDplotterを採用することとし、そのセットアップをおこなった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は引き続き実験系を安定させたうえで、計画の遅れを取り戻すよう研究を推進していく予定である。平成28年度は、二連発の感覚刺激の刺激間隔が300 ms程度と短い場合、麻酔深度を深くするにつれて、二発目の刺激に反応する体性感覚誘発電位の振幅が一発目の刺激に反応する電位の振幅よりより大きく低下するという現象が、体性感覚野の皮質層のどの部分に現れているのかについての探索を行う。具体的には、二連発刺激の間隔が1秒程度と十分離れている場合と、300 ms程度と短い場合との間で、電流源密度推定法による測定結果にどのようなの差が見られるのかについて検討する。また、当該現象におけるガンマアミノ酪酸(GABA)の関与を調べるために、経皮的電気刺激が単発刺激である場合と二連発刺激である場合とで、大脳皮質感覚野の細胞外液中のGABA濃度に差が見られるかどうかをマイクロダイアリーシスプローブによって採取し、高速液体クロマトグラフ装置(HPLC)を用いて測定する実験をおこなう予定にしている。
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Causes of Carryover |
実験計画の遅れにより、平成27年度に購入する予定であった物品や消耗品等の購入が予定に満たなかったため次年度使用額が生じている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度に購入する予定であった物品や消耗品等は、平成28年度の実験を遂行し研究計画の遅れを取り戻すなかで、改めて購入することにしている。さらに当初の計画通り、マイクロダイアリーシス実験に必要なシリンジポンプ、HPLCのカラムなどを購入する計画である。また、最終年度にあたり、学会発表に必要な旅費及び論文発表に関連する経費について使用する予定である。
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