2015 Fiscal Year Research-status Report
腸炎ビブリオエフェクターVopQによるカスパーゼ-1活性化抑制機構の解明
Project/Area Number |
26460531
|
Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
比嘉 直美 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 技術専門職員 (70457688)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高江洲 義一 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (60403995)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 感染防御・制御 / 炎症 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は腸炎ビブリオの3型分泌装置が分泌するエフェクタータンパクVopQによるカスパーゼ-1の活性化阻害機構、および個体レベルでの感染過程におけるその役割について明らかにすることである。これまでの結果からVopQとオートファジーの関連性については、培養細胞でオートファジー関連のATG5遺伝子をノックダウンさせて、腸炎ビブリオの野生株とVopQ欠損株を感染させて比較したところ、その差は見られなかった。そこで昨年度から導入したマクロファージなど部位特異的に発現するATG5欠損コンディショナルノックアウトマウスを用いることで、VopQとオートファジーの関連性を明らかにすることを目標にした。しかし、Lyz2-Creマウスのバッククロスが十分でなかったために、実験に供することができるATG5 floxedマウスの作製に思いのほか時間がかかってしまい、本年中での結果が出せなかった。 一方、VopQの宿主細胞内標的分子の一つとして、細胞膜構成成分で細胞接着に関与するAfadinがあるが、マウス骨髄細胞由来のマクロファージでAfadin抗体を用いて免疫染色をしたが、その局在は確認できなかった。マウス大腸細胞CMT93やヒト大腸がん細胞Caco2では細胞接着におけるAfadinの存在を免疫染色で確認することができた。腸炎ビブリオ野生株およびVopQ欠損株を感染させ、感染時のVopQの存在の有無でAfadinがどのように影響されているかの解析はこれからである。 マウスでは腸炎ビブリオの経口感染モデルの感染成立が難しいが、生体内でのエフェクタータンパクの機能を評価するために動物感染モデルは重要である。強制的にマウスの腸管炎症を起こすモデルで感染後に小腸、盲腸、大腸に分けて、菌数を確認した。また、小腸、盲腸、大腸を採取しホルマリン固定後、組織の凍結切片を作製し、各種染色により評価した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
オートファジーの解析のためのATG5欠損コンディショナルノックアウトマウスの作製に思いのほか時間がかかった。ようやく、Lyz2-CreマウスのC57BL/6野生型マウスへのバッククロスがN7世代以上になり、Lyz2-Creマウス同士の交配を始め、Lyz2-Creのホモマウスを得ることができた。さらにLyz2-CreとATG5 floxedマウスとの交配を始めたところであるが、ATG5flox/flox Lyz2-CreKI/KIおよび、リターメイトでATG5flox/+ Lyz2-CreKI/KIが得られたら、実験に供することができる。 それ以外の研究は概ね予定通りに進行している。VopQがカスパーゼ-1の活性化を抑制することはこれまでの結果から明らかであるがそのメカニズムについてはわかっていない。VopQと相互作用する宿主細胞内標的分子Afadinについても、各種細胞における局在と菌との関係を解析中であるが、カスパーゼ-1活性化抑制の関係についてはこれからである。 マウス炎症モデルとして、ストレプトマイシン投与により常在菌を抑え、強制的に腸炎ビブリオを感染させたマウスの腸管内炎症を解析するための小腸、大腸、盲腸の組織切片についても組織学的、病理学的に解析するため、炎症誘導細胞や免疫細胞の各種抗体を用いた免疫染色を行ったが、詳細な解析はこれからである。
|
Strategy for Future Research Activity |
ATG5欠損コンディショナルノックアウトマウスがようやく実験に使える。得られたATG5flox/flox Lyz2-CreKI/KIのコンディショナルノックアウトマウスの骨髄より分化させたマクロファージを用いて、腸炎ビブリオ野生株およびVopQ欠損株感染におけるカスパーゼ-1の活性化を検証する。また、マウスモデルとしてATG5コンディショナルノックアウトマウスを用いた感染実験で、これまでの野生型マウスでの感染実験のサンプルと比較検討することで炎症誘導における様々な事象の関連性を明らかにする。VopQと相互作用する宿主内細胞分子として同定したAfadinについては、カスパーゼ-1の活性化をどのように抑制しているのか詳細に検討する必要がある。VopQ欠損株でAfadinとの相互作用がなくなればカスパーゼ-1の活性化が亢進しているのか評価法に関しても検討が必要である。また、マウス大腸上皮細胞における膜構成成分としてのAfadinは市販の抗体で染色可能であったが、マクロファージに関しては局在が認められなかったので、マクロファージにおいてVopQとAfadinが相互作用してカスパーゼ-1の活性化を抑制しているとの推測は証明できていない。他のアプローチおよび、オートファジー関連因子など総合的に検証していく予定である。
|
Causes of Carryover |
腸炎ビブリオエフェクタータンパク VopQのオートファジーへの関連を解析する為に、ATG5floxマウスを購入し、部位特異的に発現させるために、Lyz2-Creマウスとの交配を行った。しかし、Lyz2-CreマウスのC57BL/6マウスとのバッククロスが不十分であったために、当初の予定より時間がかかり、目的の実験を行うことができなかった。その為、マウスの繁殖維持に必要な費用および、当該実験に関わる費用の一部予算を次年度に繰り越すことにした。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
目的マウス作製までの繁殖維持にかかる費用が当初の予定より増加したので、繁殖維持に関わる費用にあてる。また、マウスタイピングをPCRで行うために必要であるサーマルサイクラーが、経年劣化のため1台故障したので、購入費用に充てる予定である。
|