2015 Fiscal Year Research-status Report
敗血症の病態形成における好中球NETsと危険信号分子alarminの役割
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26460538
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
長岡 功 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (60164399)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
桑原 京子 順天堂大学, 医学部, 准教授 (10167976)
射場 敏明 順天堂大学, 医学部, 教授 (40193635)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | NETs / 敗血症 / 細胞死 / リポ多糖 / 好中球 / alarmin / サイトカイン / 感染防御・制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
敗血症では過度の炎症反応や宿主細胞の細胞死が病態に関わっている。そして近年、好中球が自らのDNAを網目状構造物NETs (neutrophil extracellular traps)として細胞外に放出し、病原細菌を捕獲・殺菌することが見出され、敗血症での役割が注目されている。そこで、本研究では、好中球のNETsの宿主細胞に対する作用に焦点を当てて敗血症の病態を解明した。 そして昨年度は、NETsがリポ多糖(LPS)とともにマクロファージ系細胞J774を刺激してIL-1βを放出し、その作用に、NETsの構成成分であるDNA、セリンプロテアーゼ、細胞内のカスパーゼ-1、カスパーゼ-8が関与する可能性を示した。 そこで、今年度は、さらにNETsとLPSによるIL-1β放出機構について詳細に検討した。まず、NETs成分に、好中球の顆粒タンパク質であるミエロペルオキシダーゼ、好中球エラスターゼと、核成分であるDNA、ヒストンが含まれていることを確認した。さらにNETsとLPSの共刺激によって細胞内でカスパーゼ-1、カスパーゼ-8が活性化されることを確認した。さらに、再構成系によって、DNA、好中球エラスターゼはLPSとともにIL-1β放出を誘導するが、ヒストンは誘導しないことを見出した。また、活性酸素除去試薬であるN-アセチルシステインによってIL-1β放出が顕著に抑制されることがわかった。 以上の結果から、NETsとLPSによるIL-1βの放出誘導に、NETsの構成成分であるDNA、好中球エラスターゼなどのセリンプロテアーゼが関与しているがヒストンは関与していないこと、さらに細胞内のカスパーゼ-1、カスパーゼ-8、活性酸素がIL-1β放出に重要な働きをしていることが明らかになった(PLoS ONE投稿中)。 現在、マウスの盲腸結紮穿孔モデルを用いて、in vivoにおけるNETs形成と敗血症の病態について解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
「研究実績の概要」において述べたように、in vitroでの好中球NETsの宿主細胞に対する活性化の解析については一定の成果を得ている。しかし、当初、予定されていた、「敗血症モデルを用いた評価」については現在、実験が進んでいるものの、「敗血症例を用いた評価」については研究が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
1.敗血症モデルを用いた評価:現在、解析中 ICR系マウスの盲腸を結紮し、注射針で穿孔すると腸管から菌が腹腔に漏出して、敗血症を誘発する(盲腸結紮穿孔モデル)。この動物モデルを用いて、末梢血ならびに腹腔などにおける好中球のNETs形成を、DNA/ヒストン複合体であるヌクレオソームをELISAで定量することによって評価する。さらに、NETs形成と敗血症の病態の関係を、サイトカインを定量することによって解析する。 2.敗血症例を用いた評価 敗血症例を用いて、末梢血おけるNETs形成とサイトカインレベルを上記の1の方法で評価する。
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Causes of Carryover |
「研究実績の概要」において述べたように、in vitroでの好中球NETsの宿主細胞に対する活性化の解析については一定の成果を得ている(PLoS ONE投稿中)。しかし、当初、予定されていた、「敗血症モデルを用いた評価」については現在、実験が進んでいるものの、「敗血症例を用いた評価」については研究が遅れているために、当該年度の支出額が予定よりも少なく、その結果、次年度使用額が「0」以上になった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、以下の計画について研究を行い、研究経費を使用する予定である。 (1)敗血症モデルを用いた評価:現在、解析中:ICR系マウスの盲腸を結紮し、注射針で穿孔すると腸管から菌が腹腔に漏出して、敗血症を誘発する(盲腸結紮穿孔モデル)。この動物モデルを用いて、末梢血ならびに腹腔などにおける好中球のNETs形成を、DNA/ヒストン複合体であるヌクレオソームをELISAで定量することによって評価する。さらに、NETs形成と敗血症の病態の関係を、サイトカインを定量することによって解析する。(2)敗血症例を用いた評価:敗血症例を用いて、末梢血おけるNETs形成とサイトカインレベルを上記の1の方法で評価する。
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