2015 Fiscal Year Research-status Report
ヘルスサービスリサーチ基盤型地域医療リーダー養成プログラムの開発研究
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26460605
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
貝沼 茂三郎 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (30361968)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉田 素文 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (00291518)
馬場園 明 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90228685)
菊川 誠 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (60378205)
永田 雅治 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (70645639)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 地域医療 / ロールモデル / コンピテンシー |
Outline of Annual Research Achievements |
得られたデータの解析と課題の抽出 ロールモデルの発掘:「地域医療を担うリーダーに求められるコンピテンシーに関する探索的研究」という研究計画を立て、現在地域医療のリーダーとして活躍している医師を日本プライマリ・ケア連合学会理事から推薦してもらい、同意を得られた医師にインタビューを実施した。インタビュー記録を逐語録に変換し、複数人で独立して逐語録を読み、地域医療のリーダーに求められるコンピテンシーを抽出した。データ収集と解析を同時並行で行い、デョスカッションにて合意形成を行った。新しい概念が抽出されず飽和した時点でインタビューを終了した。結果的には19名の医師にインタビューを行い、6つのコンピテンシー①長期的視点(長期的、大局的に物事を考えてビジョンを作り出し、それを達成するために継続して実践できる能力。後人の育成も含む)②チームビルディング(住民や行政も含めた地域ぐるみでの多職種連携を推進できる能力:ビジョン提示力、コミュニケーション能力、他者受容能力、を含む。③交渉力(他者と話し合い、取り決める能力)④診療能力(医学的問題に加え、心理社会問題や困難事例にも対応できる臨床能力。多くの医師は他職種から信頼される条件であると考えている)⑤経営能力⑥自分が楽しむこと(自分自身が地域医療に魅力を感じ、やりがいをもって楽しんで仕事ができていること)が抽出された。 2.試行プログラム案の作成と多面的議論を通じての試行プログラムの完成 九州大学医学部では低学年からのより参加型地域医療実習が必要であるとして、従来の早期学外見学・体験実習に加えて、「地域の人とのふれあい・春の陣」としていきいきサロンでの体験型実習を行った(参加者 医学部医学科1年1名)。また高年次における臨床実習での地域医療実習をより参加型にするための指導医講習会を開催した(参加19施設、参加者29名)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1.ロールモデルの発掘 インタビューを終えた分から、インタビュー記録を逐語録に変換し、複数人で独立して逐語録を読み、コード化、カテゴリー分類に関する解析を行った。最終的には新しい概念が抽出されず飽和に達したと判断したため、19名でインタビューを終了し、地域医療のリーダーに求められるコンピテンシーを抽出した。そしてそのリーダー像に関する解析結果が研究協力者の認識と矛盾しないことを確認した。 2.試行プログラム案の作成と多面的議論を通じての試行プログラムの完成 試行プログラムの完成には至っていないが、試行プログラムとして、まずは低学年における早期体験実習プログラムの作成が必要と考えられた。これまでは九州大学医学部では2年生次に2日間学外見学・体験実習として重症心身障害児(者)施設、精神病院、リハビリ病棟などでの実習を行っていたが、各施設での実数人数が多いため、参加型実習よりも見学型の実習になることが多かった。そこで少数の体験型の実習として、福岡市社会福祉協議会の協力により、「地域の人とのふれあい・夏の陣、春の陣」としていきいきサロンでの体験型の実習を夏休み、春休みに行った。夏休みには希望者がいなかったが、春休みに開催した実習は医学部医学科1名が参加した。レポートからは高齢者との交流する時間を通して、今後の医師としての自らの方向性について考えることができるよい機会となったとのことだった。また5、6年生次における地域医療実習を見学型からより参加型実習とするために、実習施設の指導医等によるFaculty Developmentを開催した。内容としては実習施設の中で、より参加型の取り組みをしているクリニックや病院からプログラムの実際を紹介してもらうことと、「経験から学び人材を育成する」についての講演を行い、参加型実習の具体例や重要性について考える機会を設けた。
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Strategy for Future Research Activity |
①低学年次での早期体験実習:2年生次での従来の2日間の学外見学・体験実習の中に少人数の実習班を作り、訪問診療や訪問看護、リハビリ実習、ケアマネージャー同行などの地域医療の現場での多職種業務に同行するプログラムを作成し、実習を行い、これまでの早期体験実習と比較検討を行う。また昨年試行した「いきいきサロン」での高齢者とふれあう実習機会を増やす。さらに低学年から地域での医療現場を体験するプログラムを作成し、実施する。 ②高年次での地域医療実習:5年生全員が行う地域医療実習前のオリエンテーション時に、これまで抽出した地域医療のリーダーに求められるコンピテンシーについての議論を行い、実習終了時にレポートを作成してもらう。6年次での4週間の地域医療実習時では、実習前のオリエンテーション時に各地区での医療の現状と問題点についてのデータを説明する。そのデータを参考にして、実習中でかかわる地域での多職種の人々からインタビューを行い、学生自身が地域診断を行い、レポートにまとめる。 ③Faculty Development(FD):全員が必修となっている5年生の地域医療実習担当施設での実習前後での学生の地域医療実習に対する意識の変化につい各施設での比較検討を行い、その問題点を抽出する。その検討結果に基づいて指導者の意識改革や教育スキル向上のためのFDを行う。 ④研究会ならびに研究成果の発信:「地域医療に貢献する医師をより多く養成するために~特に卒前教育で出来ること~」をテーマとして九州沖縄地区での各大学から医学生、教官の立場からそれぞれ発表・議論する研究会を実施し、試行プログラムをさらに洗練する。また得られた知見・成果をまとめ、医学教育関連の国内外の学会にて発表し、関係者らと意見交換を行い、さらなる改善点を検討する。またその結果を踏まえて国際医学教育雑誌に投稿し世界に広く発信する。
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Causes of Carryover |
医学教育関連の国内外の学会にて発表し、関係者らと意見交換を行い、さらなる改善点を検討する。またその結果を踏まえて国際医学教育雑誌に投稿するため
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
医学教育関連の国内外の学会にて発表するための旅費に使用する。また早期体験実習などの試行プログラムの実施するためや、Faculty Development、研究会などによる試行プログラムの具体的内容とその改善の方向性を多面的に議論するための人件費や物品費、講師の旅費などに使用する予定である。
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