2015 Fiscal Year Research-status Report
質量分析によるヒト脂質プロファイル検査法の構築と臨床応用
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26460647
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
日高 宏哉 信州大学, 学術研究院保健学系, 准教授 (10362138)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
本郷 実 信州大学, 学術研究院保健学系, 教授 (40209317) [Withdrawn]
本田 孝行 信州大学, 学術研究院医学系, 教授 (80238815)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | リン脂質 / MALDI-TOF質量分析 / グリセロリン脂質 / スフィンゴ脂質 / ヒト血液 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒト血液(血清および血漿)および気管支肺胞洗浄液(BAL-F)中脂質のマトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析(MALDI-TOF MS)による網羅的分析法を検討した。分析法としては、前処理として特異的酵素を用いた方法とミニカラムクロマトグラフィーを用いた方法を検討した。 血液およびBALF中のホスファチジルコリン、リゾホスファチジルコリンおよびBALF中ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロールは、有機溶媒による抽出脂質試料で測定が可能であり、スフィンゴミエリンは、特異酵素処理をする事で、簡便にリン脂質分子を検出できた。ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジン酸、リゾホスファチジン酸、糖脂質、サルファチド、ガングリオシドなどの微量分子は、ミニカラムクロマトグラフィーで部分精製することでMALDI-TOF MSによる検出ができた。いずれの分子もMALDI-TOF MS/MSによるプロダクトイオン分析により脂肪酸側鎖の違う分子種として200種類以上を同定する事ができた。 これらの分析手法により、数百μLの生体検体から、グリセロリン脂質およびスフィンゴ脂質分子のプロファイルを作成できた。これまで、若年健常者ボランティアによる血清中のグリセロリン脂質およびスフィンゴ脂質分子のプロファイルを作成した。現在、各種疾患患者の血清中の脂質分子のプロファイルを作成中である。 また、上述の分析法をさらに簡便化すべくPVDF膜を利用した部分精製を検討しており、各骨格別脂質分子(コレステロールエステル、リン脂質、中性脂肪)中脂肪酸組成の分析を可能とした。現在、さらに高感度分析に利用できるように改良中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ミニカラムクロマトグラフィーで部分精製することで、少量(数百μL以下)検体を用いたMALDI-TOF 質量分析法により、グリセロリン脂質およびスフィンゴ脂質分子の網羅的分析が簡便にできる分析法を構築できた。当初の薄層クロマトグラフィー(TLC)のブロッティングによるPVDF膜上脂質分子の直接分析法は、現在十分な感度が得られていないが、PVDF膜からの脂質抽出法による分析法はできており、脂質プロファイル分析の簡便化が図られる見通しであり、研究実施計画に示した内容は、概ね計画通りに進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、MALDI-TOF 質量分析法による血液脂質の主要分子およびその代謝産物についての脂質プロファイル法は構築できており、さらにその微量代謝産物(多くは生理活性物質)の検出について検討する。 構築できたプロファイル法については、健常者群では、脂質プロファイルができているので、定量的な検討と疾患患者群での脂質プロファイル分析を実施し、そのプロファイルの差を質量分析の統計ソフトによる統計的手法により検討し、疾患特有な脂質分子種の検出を目指す。
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Causes of Carryover |
年度末に購入した物品が、当初の計画で見込んだ価格より、安価に購入できたため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
H28年度の研究に用いる質量分析およびクロマトグラフィーの試薬、内部標準品、消耗品を購入する予定である。また、臨床検査試薬、有機溶媒を含む一般試薬、マイクロピペット用チップなど、実験に用いる試薬、消耗品を購入予定である。次年度使用額は、H28年度請求額と合わせて使用する試薬購入費にあてる。
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