2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26460696
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
柴田 政彦 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 寄附講座教授 (50216016)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡邉 嘉之 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (20362733)
寒 重之 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 寄附講座助教 (20531867)
西上 智彦 甲南女子大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (60515691)
植松 弘進 大阪大学, 医学部附属病院, 助教 (70467554)
宮内 哲 国立研究開発法人情報通信研究機構, その他部局等, その他 (80190734)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 複合性局所疼痛症候群 / 運動機能障害 / 心的回転 / resting-state fMRI |
Outline of Annual Research Achievements |
複合性局所疼痛 (CRPS) 患者における運動機能障害と心的回転能力、安静時脳活動との関連を検討するため、CRPS患者並びに健康成人に対して安静時fMRI (rs-fMRI) による計測と身体部位の心的回転課題 (MRT) を用いた心理物理学的実験をおこなった。 (1) 脳機能画像実験ではCRPS患者と年齢・性別を対応させた健康成人に対してrs-fMRIの撮像をおこなった。その中から上肢CRPS患者16名と健康成人16名で比較をおこなったところ、健康成人では見られた左右一次運動野間、補足運動野・頭頂皮質間、補足運動野・島皮質間の有意な機能的結合がCRPS患者では見られなかった。また、左右小脳の間でも、一次運動野と同様に、健康成人で見られた有意な機能的結合が、CRPS患者では見られなかった。運動の企図や遂行に関連する領野において、このような機能的結合の異常がCRPS患者で見られたことは、これらの脳部位間の機能的結合の異常とCRPS患者における運動機能障害に間に関連連がある可能性がある。 (2) 身体部位MRTを用いた心理物理学的実験では、上肢CRPS患者6名と健康成人40名を対象にデータを取得した。健康成人のデータ群全体として身体部位と物体の心的回転との間で回転の大きさと反応時間の関係の間に違いがあるという先行研究と一致した結果が得られ、今後の比較の基準値を得ることができた。またCRPS患者でも、正答率・反応時間の回転角度による変化は健康成人と一致した傾向が示された。しかし、正答率・反応時間いずれの計測値とも患者ごとのばらつきが健常者に比べ大きく、また物体の心的回転に比べ身体部位の心的回転で大きかった。このことは、症例数は十分ではないが、CRPS患者の運動機能障害と身体部位の心的回転の能力との関連性を示唆する結果であると考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
脳機能画像研究、心理物理学的研究とも順調に進展していることから、本研究全体としてもおおむね順調に進展していると考えている。脳機能画像研究においては、今年度までに16名のCRPS患者および健康成人の比較をおこなうことによって、運動機能障害と関連する可能性がある安静時脳活動の異常、脳部位間の機能的結合の異常を見出すことができたことから、順調に進展しているものと考えている。さらに、この結果を踏まえ、現在上肢CRPS患者では、rs-fMRIの撮像に加えて、運動機能などの臨床的な評価やMRT課題の実施をおこなっている。まだ症例数が十分ではなく、脳部位間の機能的結合とそれらの指標や成績との関連を検討するまでには至っていないが、来年度にはこれらの関係の評価をおこなえるであろうところまで研究を進めることができてきており、おおむね順調に進展していると考えている。 一方、心理物理学的研究においても、若干遅れはあるものの、順調に進展していると考える。健康成人を対象とした身体部位MRTの心理物理実験については、40名からデータを得て解析を進めているところであり、これまでの先行研究との一致だけでなく、これまでの研究では見落とされてきた被験者ごとの回答方略のばらつきの検討を進めているところであり、順調に進展していると考える。一方、CRPS患者を対象とした実験については、CRPSが希少疾患であることもあり、データを収集できた症例が6名と少なく、一定の傾向性やCRPS患者と健康成人との違いなども少しずつ分かってきてはいるが、データ解析が十分におこなえていない状況であり、進展はやや遅れていると考える。しかし、全体としては、おおむね順調に進展しているものと考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
脳機能画像研究においては、特に上肢CRPS患者を中心に症例を増やし、日常生活における上肢機能評価、関節可動域、また二点識別覚などの知覚能力や質問紙による身体認知能力、さらにMRT課題といったさまざまなCRPS患者の病態指標と脳部位間の機能的結合の異常との間における直接的な関連性を検討する。加えて、現在は一次運動・感覚野、補足運動野、小脳運動といった我々の運動・感覚に関わる脳部位の一部が解析の対象であるが、前運動野や大脳基底核、また二次感覚野や島皮質などの、他の運動・感覚関連部位にも解析の対象を広げ、CRPS患者における運動・感覚ネットワークにおける安静時脳活動・機能的結合の異常を明らかにする。 健康成人を対象とした心理物理実験については、データ収集を終了しており、今後解析を進め、結果を学会、論文等で公表していく。回転角度の増加に対する反応時間の変化にばらつきがあることに着目して統計学的解析をおこない、「手の左右判別課題時には自身の手を動かす運動イメージを行っている」とする先行研究の結論とは異なる回答方略が存在する可能性を検討する。CRPS患者を対象とした心理物理実験については、症例数を増やした上で健康成人と同様の解析をおこない、健康成人から得られた結果と比較検討するとともに、MRTのデータ取得と併せておこなっている機能評価や臨床症状との関連について検討をおこない、一部疼痛患者リハビリテーションにも用いられるようになってきている身体部位MRTの認知能力の障害と運動機能との関連性について明らかにする。
|
Causes of Carryover |
研究が遅れており予定していた消耗品の購入が遅れているため
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
新たな研究計画を立て直し、次年度に使用する予定
|
Research Products
(1 results)