2014 Fiscal Year Research-status Report
脊髄レベルでのκオピオイドの鎮痒と鎮痛の役割を解明する
Project/Area Number |
26460697
|
Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
今町 憲貴 島根大学, 医学部, 准教授 (40325048)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
齊藤 洋司 島根大学, 医学部, 教授 (50162243)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 脊髄くも膜下腔 / モルヒネ / 鎮痛 / 副作用 / κオピオイド受容体作動薬 |
Outline of Annual Research Achievements |
モルヒネの脊髄くも膜下腔投与は、少量でも鎮痛効果が得られるが、一方、過鎮静や呼吸抑制などが生じることがある。また、選択的κオピオイド受容体作動薬のナルフラフィンは血液透析患者の経口鎮痒薬として臨床応用されているが、鎮痒効果の反面、不眠・眠気などの副作用があり、それ以上の用量を必要とする鎮痛目的には適しないことが明らかとなっている。今年度は、マウスにおいて少量モルヒネとナルフラフィンの混合液を脊髄くも膜下腔投与し、ナルフラフィンがモルヒネによる鎮痛・鎮静効果に及ぼす影響を検討した。C57BL/6系雄マウス各群6匹を用いた。(実験1)モルヒネ 0.1, 0.3, 1.0 nmol、ナルフラフィン 10, 30, 100 pmol、モルヒネ 0.1 nmol + ナルフラフィン10 pmol、または生理食塩液 5 μlを脊髄くも膜下腔投与前、投与後150分間マウスの尾を48℃の温水につけて反応までの潜時を測定した。(実験2)モルヒネ 0.1, 0.3, 1.0 nmol、ナルフラフィン 100 pmol、モルヒネ 0.3 nmol + ナルフラフィン 10, 30, 100 pmolまたは生理食塩液 5 μlを脊髄くも膜下腔投与後60分間ビデオ撮影し、鎮静レベルを3段階に分け経時的な鎮静スコアを解析した。(実験1) 生理食塩液群に比べモルヒネ、ナルフラフィン群ともに用量依存性に鎮痛効果が得られた。生理食塩液群に比べモルヒネ/ナルフラフィン混合群はモルヒネ単独群より2倍以上、鎮痛効果時間が延長した。(実験2) モルヒネ群は生理食塩液群に比べ用量依存性に強く鎮静された。ナルフラフィン群は鎮静状態が生じなかった。モルヒネ/ナルフラフィン混合群はモルヒネ単独群と比較し鎮静レベルに変化はなかった。マウスの脊髄レベルにおいてナルフラフィンは鎮静レベルを増悪させることなくモルヒネによる鎮痛効果時間を延長させた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
脊髄くも膜下腔に投与したモルヒネが、用量依存性に鎮痛効果が得られる一方、副作用である鎮静作用も用量依存性に強くなることが確認された。選択的κオピオイド受容体作動薬であるナルフラフィンをモルヒネと脊髄くも膜下腔に混合投与すると、モルヒネ単独投与と比べ鎮痛効果時間が延長し、かつ、鎮静作用は、モルヒネ単独群と比較し鎮静レベルに変化がなったことが明らかとなり、ナルフラフィンの脊髄くも膜下腔の有用性が示唆されたため。
|
Strategy for Future Research Activity |
脊髄くも膜下腔に投与したモルヒネにより生じる痒みに対して、脊髄くも膜下腔に投与した選択的κオピオイド受容体作動薬であるナルフラフィンが全身投与と同様に痒みを抑制できるかどうかの検討を行う。また、ナルフラフィンが痒みを抑制できた場合、その作用がκオピオイド受容体を介したものかどうかを明らかにするため、κオピオイド受容体拮抗薬を前投与した状態で、脊髄くも膜下腔に投与したモルヒネによる痒みを脊髄くも膜下腔に投与したナルフラフィンが抑制できるかどうかを調べる。
|
Causes of Carryover |
当初計画よりも使用した動物が少なかったこと、試薬の一部を市販されたものではなく、 製薬会社より提供いただいたことなどのため(市販されておらず、入手困難なため)。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
使用動物、試薬、データ解析用パソコン、発表、情報収集用の旅費などに使用する予定である。
|