2015 Fiscal Year Research-status Report
痒み神経機構の生後発達におけるドーパミン神経系の役割解明
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26460705
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
緒形 雅則 北里大学, 医療衛生学部, 講師 (20194425)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石橋 仁 北里大学, 医療衛生学部, 教授 (50311874)
歌 大介 富山大学, 大学院医学薬学研究部(薬学), 助教 (70598416)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 痒み感覚 / ドーパミン神経系 / 幼若期ドーパミン神経系傷害 |
Outline of Annual Research Achievements |
生後4日目の雄ラットの両側側脳室に6-hydroxydopamineを注入し、幼若期ドーパミン(DA)神経傷害動物を作製した。生後8週目以降に右後肢足底へのセロトニン(5-HT)皮下注入により痒み感覚を誘発し、痒み関連行動と組織学解析による脊髄内の神経細胞興奮状態を検討した。 今年度は昨年度に引き続き、5-HT濃度を変えてDA神経系の痒み関連神経機構発達における役割を詳細に検討した。0.1% 5-HTを用いた結果では、昨年度の1%、0.05% 5-HT実験と同様に幼若期DA神経傷害群では対照群と比較し痒み関連行動の有意な減少が観察された。また対照群では痒み関連行動が5-HT濃度依存的に増加することを確認したが、DA神経傷害群では0.05%から1.0%の5-HT濃度範囲では、痒み関連行動数と5-HT濃度との間に相関は見られなかった。さらに0.01% 5-HTを用いた実験では、両群ともに、痒み関連行動は誘発されなかった。これらの結果は、幼若期DA神経系傷害は成熟後の痒み関連行動発現の閾値には影響を与えないが、閾上刺激による痒み関連行動の発現機構に影響を及ぼしていることを示唆している。脊髄後角でのc-Fosの発現を利用した脊髄後角細胞の興奮状態に対する検討では、0.1% 5-HT注入による同側脊髄後角(Ⅰ-Ⅵ)におけるc-Fos陽性細胞数は幼若期DA神経系傷害群において対照群に比べ有意に増加していた。また、5-HT注入反対側でも幼若期DA神経系傷害群で明らかなc-Fosの発現が観察された。これらの結果は痒み関連行動の発現にはDA神経系を含む脊髄上位の神経機構が関与していること、またDA神経系の傷害による痒み感覚の対側への拡大の可能性があることを示している。インビボパッチクランプ法による電気生理学的研究では、正常動物における脊髄後角ニューロンからの安定した電位記録が可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
行動実験はほぼ予定通り進めるこが出来た。組織学的手法による検討において、使用していたc-Fos抗体(Millipore; Calbiochem PC-38)が発売中止となり新たなc-Fos抗体の選定、購入、条件設定にかなりの時間を費やしてしまった。現在、新規抗体(synaptic systems)は購入済みで条件設定も進んでいるが、c-Fos免疫染色は0.1% 5-HT投与の脊髄と一部のサンプルの背側縫線核の染色までとなっている。よって脳組織のc-Fos染色及びc-Fos染色の結果をもとに行う逆行性トレーサーの実験は次年度に行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は組織学的解析並びに電気生理学的解析を中心に研究を遂行するとともに、3年間で得られた結果を総括し本研究の意義を社会に示せるよう努める。 組織学的解析では、脳内におけるc-Fosの発現とミクログリアの活性化に関して研究を進めていく。c-Fosの発現は平成27年度に新たに選定した抗体を用いて大脳皮質、大脳辺縁系、脳幹等、脳内を広範囲に解析していく予定である。そして幼若期DA神経系傷害により、5-HT注入に伴うc-Fos発現が変化する領域が認められた場合は、その領域への逆行性トレーサーの注入実験をおこない、DA神経系が関与している痒み関連神経機構を解明する。さらにDA神経系傷害処置後2週目、4週目、6週目の標本を用いてミクログリアの活性化が認められる中枢神経系領域とその時期を明確にする。 また電気生理学的解析ではインビボ パッチクランプ法を用いて後肢への1% 5-HT投与による脊髄後角ニューロンの応答を記録する。そして、5-HT反応性脊髄ニューロンの末梢受容野の大きさ、痛覚や触覚刺激によるモダリティー、5-HT誘発応答に対する末梢受容野刺激の影響等を確認することにより、ニューロンの特性を明確にしていく。そして対照動物で得られた結果と幼若期DA神経系傷害動物で得られた結果を比較・検討し、脊髄後角ニューロンの痒み刺激応答機構におけるDA神経系の関与を明確にする。 平成28年度は最終年度となることより3年間で得られた結果をもとに研究代表と分担研究者が十分に検討し合い、幼若期DA神経系傷害が痒み神経機構発達におよぼす影響を明確にするとともに本研究成果の社会的、臨床的に有用性を示す。
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Causes of Carryover |
組織学的解析によるc-Fos発現検討実験が遅れたため、その後に行う予定であったトレーサー実験や免疫二重染色解析が本年度出来なかった。そのため購入予定であったトレーサーやその関連試薬、抗体代の使用執行がなかったことにより使用残額が生じてしまった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度生じた次年度使用助成金は、上記のごとく遅れてしまった組織学的解析用の試薬、抗体の購入に使用する予定である。具体的には神経トレーサーであるフルオルゴールドやビオチン標識デキストラアミン、抗体としてはセロトニン、ノルアドレナリン、GABA神経系の合成酵素や神経マーカーに関するものを購入する予定である。
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Research Products
(1 results)