2016 Fiscal Year Research-status Report
痒み神経機構の生後発達におけるドーパミン神経系の役割解明
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26460705
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
緒形 雅則 北里大学, 医療衛生学部, 講師 (20194425)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石橋 仁 北里大学, 医療衛生学部, 教授 (50311874)
歌 大介 富山大学, 大学院医学薬学研究部(薬学), 助教 (70598416)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 痒み感覚 / ドーパミン神経系 / ドーパミン神経傷害 |
Outline of Annual Research Achievements |
生後4日目の雄ラットの両側側脳室に6-hydroxydopamineを注入し、幼若期ドーパミン神経系傷害動物を作製した。また生後7週齢の雄ラットの右側内側前脳束に6-hydroxydopamineを注入し、成熟後ドーパミン神経系傷害動物も作製した。両モデル動物を用いドーパミン神経系の傷害時期の相違が痒覚神経機構に及ぼす影響を検討した。1% セロトニンを右後肢足底に皮下注入し、痒み関連行動を観察した結果、両モデル動物とも痒み関連行動が正常動物に比較し有意に減少していた。一方、両モデル間における検討では、幼若期ドーパミン神経系傷害動物において、痒み関連行動が有意に減少していた。 さらにドーパミン神経系の破壊レベルを合わせて比較するために、幼若期片側ドーパミン神経系傷害動物を作製し、痒み関連行動を観察した。その結果、幼若期片側破壊動物は、幼若期両側破壊動物と比較し、痒み関連行動の減少は軽度なものであった。成熟後片側破壊動物との比較では、痒み関連行動の減少が顕著であったが、現例数では有意な差は得られなかった。 電気生理学的解析では、幼若期ドーパミン神経系傷害動物および対照動物の脊髄後角表層部から単一ニューロン活動を細胞外導出し、その反応特性について比較、検討をした。両群において、末梢受容野は同側の後肢にあり、対側体表からの体性感覚入力には応答を示さなかった。また末梢受容野への触・圧刺激を1.4gから60gへと増加していくと、両群とも脊髄後角ニューロンの活動が増加することが確認され、その反応性に2群間で有意な差は認められなかった。末梢受容野へのセロトニン注入による応答は両群の脊髄後角ニューロンで確認されたが、その応答の大きさや持続の違いについては、今後例数を増やして詳細に検討していく必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ミクログリアの抗体選定と今年度からモデル動物として利用を始めた幼若期片側ドーパミン神経系傷害動物の作製法の確立に予想以上の時間を費やしてしまった。そのためミクログリアの活性化やトレーサー実験等の組織学的解析が、十分な研究遂行に至らなかった。 また行動学的解析において、比較対象として用いた成熟後ドーパミン神経系傷害動物の実験でも痒み関連行動の減少が認められ興味深いものとなり、多くの例数を費やしてしまったことも遅れの要因と言える。 電気生理学的解析おいては、脊髄後角から安定したニューロン活動をモデル動物、対照動物から記録することが出来た。一方で痒み誘発物質に対する反応性の詳細な解析に対しては、分担研究者との時間的予定が十分に確保できず、次年度も分担研究者と時間を合わせつつ継続して実験を進めていく必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
遅れているミクログリアの活性化やトレーサー実験、そして脊髄上位でのc-Fos発現の検討等、組織学的解析を進める予定である。また電気生理学的解析では例数を増やすとともに結果の解釈を研究分担者と詳細に検討していく予定である。 組織学的解析においては、ミクログリアの活性は6-hydroxydopamine処置後2週目、4週目、8週目の動物にて解析を進める。抗体はミクログリアの細胞質マーカーであるIba1と炎症性マーカーであるCD68の2つを用いて検討を進める。c-Fos発現に対してはドーパミン神経系傷害に伴う発現の変化のみならず各種ニューロンマーカーとの多重染色を行い、c-Fos陽性細胞の細胞特性の同定を試みる。主要な解析対象部位は、前頭前野、線条体、扁桃体、縫線核などの運動発現や情動機能に関連した部位とする。 行動学的解析では興味深い結果が得られている成熟後ドーパミン神経系傷害動物を用い、ドーパミン神経系薬剤を使用した解析を進め、痒みの神経機構におけるドーパミン神経系の役割解明を進める。 また電気生理学的解析では、ウレタン麻酔下にて脊髄後角表層から末梢受容野を後肢に持つニューロンの活動を細胞外記録し、モダリティーと触・圧覚刺激に対する応答性を確認する。さらに0.1%セロトニン又は生理食塩水を後肢足底に注入し、その応答を90分間記録する。それらの得られた反応をPCおよびデータ解析ソフトにより解析し、ドーパミン神経系傷害がおよぼす影響について詳細に検討する。 平成29年度は最終年度となることより、行動学的実験、電気生理学的実験、組織学的実験から得られた結果を、分担研究者を含めて十分に検討を加え、幼若期ドーパミン神経系傷害が痒覚神経機構発達におよぼす影響を明確にする。また得られた成果を平成29年度末に行われる日本生理学会または次年度の北米神経科学会にて発表報告をする。
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Causes of Carryover |
ミクログリアの抗体選定と新規のモデル動物である幼若期片側ドーパミン神経系傷害動物の作製法確立に時間を要したため、その後に予定していた組織学的解析に用いる神経マーカー試薬やトレーサーを購入しなかったことが使用残額の生じた主な理由である。また電気生理学的実験に使用するモデル動物数が少なくなってしまったことも1つの要因と言える。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記のごとく、組織学的解析と電気生理学的解析を中心に行うため、神経マーカーに関連する抗体、トレーサー、免疫染色関連試薬の購入と、電気生理学的実験用動物の分担研究者の研究施設への運搬費に使用する予定である。
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