2015 Fiscal Year Research-status Report
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26460707
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
上窪 裕二 順天堂大学, 医学部, 助教 (80509670)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長谷川 麻衣子 鹿児島大学, 医学部, 准教授 (20516637)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | Gタンパク質共役型受容体 / 痛み / 感覚伝達 / 脊髄 / アデノシン受容体 / 代謝型グルタミン酸受容体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本計画ではグアニンヌクレオチド結合タンパク質共役型受容体(GPCR)同士の複合体形成と機能的相互作用による感覚伝達の統合と制御のメカニズムの解明を目指している。我々はGPCR型のグルタミン酸受容体である1型代謝型グルタミン酸受容体(mGluR1)とアデノシンの受容体であるアデノシンA1受容体(A1R)を中心に解析を進めてきた。これまでに、免疫共沈、全反射蛍光(TIRF)顕微鏡観察、およびフェルスター共鳴エネルギー移動(FRET))アッセイ法による検討を行いmGluR1とA1Rが細胞膜の近傍で複合体を形成していることを示した。培養神経細胞と株化細胞を用いた検討から、A1Rの活性化は共役するGタンパク質非依存的にmGluR1のシグナル伝達を抑制し、mGluR1の活性化はA1Rのシグナル伝達を抑制することが分かった。mGluR1は痛みの伝達、A1Rは痛みの抑制に関与していることから、これらのGPCRの機能的な相互作用が痛み伝達制御機構の解明につながる可能性がある。 さらに我々は痛みの伝達に関与する代表的なGPCRであるニューロキニン受容体が他のGPCRと複合体を形成しシグナル伝達を調節している可能性を明らかにした。感覚伝達の中継点である脊髄後角における相互作用については未解明な部分が多いため、生化学的・生理学的な解析が必要である。そのため、解析対象であるGPCRに対する特異的な抗体の作成と、特異的なラベリング方法の確立について進めている。本計画では、脊髄におけるシナプス伝達の制御に注目しており、その評価系の確立が必要である。昨年度確立した脊髄神経細胞および脊髄スライス初代培養系を用いることでmGluR1やニューロキニン受容体のシグナル伝達の解析が可能であることが分かった。今後は、これらの標本を用いてGPCRの相互作用と神経伝達の制御について解析を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本課題において、mGluR1とA1Rの誘導発現細胞株を作成し、これらのGPCRが細胞膜近傍で複合体を形成することを明らかした。また、mGluR1の活性化がA1Rのシグナル伝達を抑制することを明らかにし、オープンアクセスの学術誌に発表した(上窪ら、2015年)。さらに、共同研究者らとともにmGluR1の活性化によるPKCの活性化がA1Rによって抑制されることを明らかにし、オープンアクセスの国際学術誌上で発表した(野々部ら、2016年)。また、株化細胞を用いた解析から新規のGPCR相互作用の可能性が明らかになった。以上のように、細胞・分子レベルでの解析については当初の計画以上に進展していると言える。一方、慢性疼痛モデル、脊髄組織、初代培養神経細胞を標本として用いた解析も並行して進めており、おおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの結果、分子・細胞レベルでのGPCR複合体形成と機能的相互作用の解析は予定よりかなり進んでおり、本計画で注目するGPCRであるmGluR1とA1Rの相互作用以外についても明らかになった。研究計画をより推進するために、脊髄におけるmGluR1とA1Rの相互作用について検討するのと並行して新規GPCR相互作用についての解析を行う。そのために特異的な抗体の作成や機能の解析系の確立などについて積極的にすすめる予定である。
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Causes of Carryover |
当初予定していたよりも、細胞・分子レベルの研究が進んだため、計画の変更が生じた。そのため、当初計画は次年度に持越しとなり、試薬・機器類の購入予定に変更が生じた。また、学会旅費について、財団からの助成が得られたため変更が生じた。以上の理由により次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
細胞・分子レベルの研究がさらに推進する可能性が考えられるので、抗体作成や試薬の購入を行う。また、当初予定より研究が進んだため、計画よりも多くの成果発表を行う予定である。そのため、学会参加費、旅費および論文投稿・掲載料として使用する予定である。
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Research Products
(7 results)