2016 Fiscal Year Research-status Report
要介護高齢者を対象とした居宅系介護施設における終末期医療と看取りの実態調査
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26460839
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Research Institution | Miyagi University |
Principal Investigator |
長澤 治夫 宮城大学, 看護学部, 教授 (30295381)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 終末期医療 / 看取り / 要介護高齢者 / 介護保険施設 / 訪問診療 / 訪問看護 / 地域包括ケア |
Outline of Annual Research Achievements |
高齢者が住み慣れた地域で最後まで自分らしく生活できるように、保健・医療・福祉政策の1つとして、在宅医療の普及が挙げられている。介護保険制度が導入されても在宅で最後まで生活するには、夜間など同居家族の介護力に頼らなければ維持できないのが現状である。高齢者は様々な事情により必ずしも自分の自宅で最期まで生活できるとは限らず、病院や有床診療所などの医療機関、介護老人保健施設(老健)や介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)などの介護保険施設をはじめさまざまな施設で、終末期を過ごしているのが現状である。本研究では医療機関や介護保険施設以外で、必ずしも看護師等の医療職が常駐していないグループホーム、有料老人ホーム、サービス付き高齢者専用賃貸住宅などの施設において医療依存度の高い高齢者の終末期医療の質と看取りについて詳細な調査を計画し実施した。 これまでの研究成果を生かした主な活動実績としては以下のとおりである。 1)第5回東北在宅連携フォーラムの特別講演で、「在宅医療にもとめられる看護師の役割 ~NP教育と特定行為研修~」のテーマで、大分県立看護科学大学学長 村嶋幸代先生に講演をして頂き、座長として質疑応答に参加した。(7月9日) 2)「地域における在宅褥瘡ケア -継続可能なケアを目指して-」をテーマにして、第9回在宅褥瘡セミナー宮城を宮城県白石市で開催した。「褥瘡発生の要因と発生メカニズム」について講演した。医療職および介護職等約250名が参加した。(11月13日) 3)宮城県が2016年11月に在宅医療推進懇話会を立ち上げ委員として参加し、住み慣れた地域で最期まで過ごせるように在宅医療関連事業の取り組みついて議論をしてきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
超高齢社会のわが国において、独居や家族の介護力がないために住み慣れた自宅で最期まで過ごすことが出来ない要介護高齢者が急増している。療養型病床を有する医療機関や看護師等の常駐する介護保険施設は常に満杯で、多くの医療依存度の高い要介護高齢者がグループホームや有料老人ホーム等の高齢者施設に入所している状況である。このような高齢者施設では看護師等の医療職は常駐しておらず、訪問看護や訪問診療などの外付けのサービスに依存し、終末期医療や看取りまで行っているのが現状である。 本研究では、医療機関や介護保険施設以外で看取りも含めた終末期介護を行っているグループホーム、有料老人ホーム、サービス付き高齢者専用賃貸住宅など施設における医療依存度の高い高齢者に対する終末期医療の質と看取りについて詳細な調査を計画した。 訪問医療を専門的に実施している医療機関や訪問看護ステーションの協力をもとに、施設で実施した終末期ケアと看取り数は、2006年ごろから増加し2015年には55例、2016年は69例であった。2016年の施設での看取り69例の施設別の内訳は、グループホーム49例、有料老人ホーム6例、サービス付き高齢者専用賃貸住宅などの施設11例、その他の施設3例であった。十分な終末期医療や看取りが困難なために医療機関への転院や介護保険施設への退所・転入例も増加していることが明らかになった。 各施設での看取り例の基礎データとして、1)性、2)死亡年齢、3)主病名、4)死因、5)要介護度、6)終末期医療を受けた期間、等について調査した。終末期医療およびケアの内容として、1)呼吸管理(人工呼吸器による補助呼吸、酸素吸入、吸引など)、2)栄養・水分管理(胃瘻、中心静脈、末梢からの補液など)、3)排泄管理(尿導カテーテルなど)、4)疼痛管理(麻薬の使用など)、5)褥瘡の有無など、6)その他(輸血など)について調査した。
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Strategy for Future Research Activity |
わが国の年間死亡者数は、1960年には約70万人だったが、2010年には約117万人に達し、今後も死亡者数は増加していく。一方、医療機関の病床数は1990年ごろから徐々に減り2010年には約173万床になったが、そのうち90万床は本来の治療を行う一般病床で、医療機関だけでは看取りを含めた終末期医療を担うことができない状況にある。不足する看取りを行う場所を補う役割を期待されている介護保険施設は数が少なく、何年間も入所待ちの状況である。一方、2006年の調査によると高齢者のいる1,828万世帯のうち高齢者夫婦のみの世帯は539万世帯(29.5%)、高齢者単独世帯(独居高齢者)410万世帯(22.4%)で、高齢者夫婦のみと高齢者単独世帯を合わせて949万世帯(51.9%)を占め、介護を要する高齢者の家族の介護力が低下し在宅での看取りも難しくなっている。介護を要する高齢者数の著しい増加により、グループホームや有料老人ホームなどの施設で終末期を過ごす高齢者が増えている。行き場を失った終末期の高齢者が、有料老人ホームとして届け出していない「寝たきり専用賃貸住宅」で生活している実態も取り上げられ社会問題化している。このような施設は、医療職や介護職が常駐せず、外部から医療や介護サービスが提供されているのが実情で、充分な緩和医療を含めた終末期医療や全人的ケアが実践されているか否かは明らかでない。昨年度に引き続き仙台市内の訪問診療を実施している医療機関や訪問看護ステーションの協力を得て、有料老人ホーム、サービス付き高齢者専用賃貸住宅における医療ニーズの高い高齢者の終末期医療および看取りの実態について調査を進める予定である。更に研究計画の最終年度であるため2014年から3年間の調査結果について総括する。
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Causes of Carryover |
本年度は介護施設での終末期医療と看取りの実態調査を実施したが、これまでの調査研究の実績もあり、各施設での研究協力に要する謝金などの支出がなく、容易に実施できたことが主な理由である。また、調査を開始した段階でデータの分析中であることから、学会発表などの機会がなく旅費の支出が少なかったためで、次年度以降に研究成果を随時発表していく予定である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
①物品費 400,000円(内訳)パーソナルコンピューターおよび関連消耗品、一般事務用品・文具など ②旅費 400,000円(内訳)調査のための施設訪問旅費、学会・研究会参加旅費、第22回日本緩和医療学会学術大会 (2017年6月23~24日)横浜市、第19回日本在宅医学会学術大会 (2017年6月17~18日)名古屋市、第23回世界神経学会議(2017年9月16~21日)京都市 ③ その他 400,000円(内訳)図書・資料代 200,000円、資料印刷代 50,000円、通信費(切手、宅急便など) 50,000円、学会・研究会参加費150,000円
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Research Products
(2 results)