2015 Fiscal Year Research-status Report
下垂体の病態は自殺に関与するか?:自殺例における下垂体の法医病理学的解析
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26460892
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Research Institution | Kyorin University |
Principal Investigator |
王 路 杏林大学, 医学部, 准教授 (60555051)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北村 修 杏林大学, 医学部, 教授 (70266609)
武市 敏明 金沢大学, 医学系, 助教 (90460360)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 自殺 / 下垂体病変 / HPA axis / 免疫組織学的染色 |
Outline of Annual Research Achievements |
この研究では、自殺者の剖検例について、以下の点について検討している。①下垂体病変(腫瘍、先天性異常など)の病理組織学的同定、②自殺例のHPA axis及び神経伝達物質関連遺伝子の発現に関する評価、さらに③以上のデータに基づいた自殺と下垂体病変との関連性について解析することを目的としている。 本年度は、昨年度の73例の自殺例の下垂体について(男性39例、女性34例、22-85歳;平均58歳)、HE染色による腺腫、嚢胞、炎症性病変の病理組織学的診断を行い、さらにPAS染色を加え、下垂体ホルモンの免疫組織学的染色を行った。なお、コントロールとしては、非自殺者155例(男性91例、女性62例、18-90歳;平均67歳)を選択した。腺腫については,下垂体前葉ホルモン(ACTH、GH、PRL、Gn、TSH)による機能性腫瘍の同定を行ったが、一方では非機能性腫瘍も認められた。機能性腫瘍では、それぞれのホルモンの分泌過剰により、関連する内分泌機能の亢進、さらにHPA axisへの影響により自殺行動を誘発したた可能性が考えられる。また、非機能性腫瘍では、腫瘍細胞のホルモン分泌過剰はないものの、腫瘍自体による周囲への圧迫によると考えらる下垂体ホルモンの免疫組織学的染色像の低下が認められた。また、炎症性疾患でも下垂体細胞が減少しており、下垂体ホルモンの免疫組織学的染色像は低下していた。このように、下垂体ホルモンの減少、すなわち下垂体機能低下に起因する自殺例の存在も示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
100例を超える自殺者の下垂体組織についてHE染色による病理組織学的診断を行い、下垂体ホルモンの免疫組織学的染色によりさらなる下垂体機能における評価を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策としては、下垂体病変として最も頻度が高い腺腫について、免疫染色により分泌ホルモンが同定された症例ごとに分類して、転写因子、ホルモンレセプターについて検討する。また、先天性異常として頻度が高いが自殺との関連については検討されていないラトケ嚢胞についても検討する。そして、前年度までのデータをもとに下垂体病変と自殺との関連性について解析を行う。
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Causes of Carryover |
当初予定していたよりも安価で消耗品を購入できたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度の残額を用い高価な抗体を追加購入する。
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