2015 Fiscal Year Research-status Report
一般住民における心理特性・自律神経機能・失体感傾向と 慢性疾患の関連:久山町研究
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26460911
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
細井 昌子 九州大学, 大学病院, 講師 (80380400)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
清原 裕 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80161602) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 慢性疼痛 / 被養育体験 / PBI / 有症率 / 一般住民 / 久山町 / 疫学 / 心身医学 |
Outline of Annual Research Achievements |
慢性疼痛と人生早期の事故や病気、虐待などの嫌悪的体験との関連が報告されている。しかし、両親の養育態度に関する被養育体験と成人後の慢性疼痛発症のリスクについては十分に検討されていない。今回我々は、一般住民における人生早期の被養育体験と慢性疼痛の関連を検討した。 福岡県久山町の40歳以上を対象とした健康診断でストレス健診を希望した760人で解析した。6か月以上持続する疼痛を有する者を慢性疼痛ありとし、被養育体験については、16歳までの親の養育態度を主観的に評価する質問紙であるParental Bonding Instrument(PBI)を用いて調査した。PBIの2つの因子である「ケア」と「過干渉」を説明変数、慢性疼痛の有無を目的変数とし、男女別にロジスティック回帰分析を行った。適切な養育とされている「ケアあり/過干渉なし」を基準として、年齢、教育歴、婚姻・経済的状況で調整した各カテゴリーのオッズ比を検討した。 結果として、「ケアあり/過干渉なし」の適切な養育を受けたと感じている参加者と比較して、「ケアなし/過干渉あり」の被養育体験をもつ参加者において、父親でオッズ比2.21(95%信頼区間:1.50-3.27)、母親でオッズ比1.60(95%信頼区間:1.09-2.36)と慢性疼痛の有症率が有意に上昇していた。うつ症状で調整すると、父親の養育スタイルのみ有意として残った。 これらの結果から、幼少期の両親の被養育体験は40歳以上の大人の一般住民における慢性疼痛の有症率に相関していることが明らかとなった。ケアが比較的高い母親と比較して、父親からの被養育体験が、大人の慢性疼痛の有症率とより関連していることが示唆され、慢性疼痛が起こりにくい養育スタイルを社会が認知する必要性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
久山町研究で得られた疫学情報について、睡眠障害、慢性疼痛、認知症といった慢性の症状を有する病態について、心身医学的観点で疫学的解析を行い、興味深い結果を得ている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までに得られた研究成果を英文論文としてまとめていき、社会に発信していく予定である。
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Causes of Carryover |
久山町に蓄積された疫学情報の解析を主とした研究を行っていたため、当初よりも費用を必要としなかったため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度夏予定の久山町定期健診におけるデータ収集時に、心身医学的疫学情報を取得する際のパソコン、パソコン関連機器、人件費、解析、学会参加費、および英文論文作成費用に使用する予定である。
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