2015 Fiscal Year Research-status Report
肝癌治療標的としてのストレス関連遺伝子HSF1シグナルの解析
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26460982
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
中馬 誠 横浜市立大学, 付属市民総合医療センター, 准教授 (30360910)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坂本 直哉 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (10334418)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 肝癌 / 分子標的治療 / ストレス関連遺伝子 / HSF1 / 酸化ストレス / 脂肪性肝炎 |
Outline of Annual Research Achievements |
肝発癌に関して、酸化ストレスの関与が考えられているが、詳細な分子機構は不明である。Heat shock factor 1 (HSF1) は、ストレス関連遺伝子、多岐にわたる癌関連遺伝子の制御に関与していると考えられている。本研究では主に酸化ストレス肝発癌における HSF1シグナルの解析を行い、肝癌治療標的としてのHSF1の役割を明らかにし、臨床応用への足がかりを作ることを目的とする。当該年度においてはHSF1の基礎的検討を進めた。 1)HSF1の発現を抑制した肝癌細胞株(HSF1-KD)、欠損させた初代肝細胞培養株(HSF1-KO)において、上皮成長因子Epidermal Growth Factor (EGF) 刺激後の分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ(MAPK) 経路の活性化の有意な低下を認めた。また腫瘍壊死因子Tumor Necrosis Factor (TNF)-α 投与後controlに比較してHSF1-KD, HSF1-KO共にNF-κBの活性化の低下を認め、NF-κBに制御されている抗アポトーシス分子の発現の低下より、HSF1発現抑制ではアポトーシスの亢進に寄与していることが示された。 2)肝癌の切除検体における免疫組織染色では、癌部が非癌部に比較して半数以上の症例で高発現しており、HSF1の高発現と分化度、腫瘍径、腫瘍個数、予後が相関している結果を得た。 3)HSF1の肝臓特異的ノックアウトマウスを作成中である(HSF1Δhep)。 4)酸化ストレス肝発癌モデルの一つとして、癌遺伝子の変異型krasを肝臓特異的に発現させたalb-cre/LSL-KrasG12Dを作成した。このalb-cre/LSL-KrasG12Dモデルにおいて、通常食に比較して高脂肪食負荷では、有意な肝発癌の増悪を認め、脂肪肝部、腫瘍部においてHSF1の高発現を認めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1)HSF1の肝癌における役割として、上皮成長因子EGF投与後のMAPK経路を介した細胞増殖への影響と、腫瘍壊死因子TNF-α 投与後のNF-κBを介したアポトーシスの亢進に寄与していることが示された。 2)肝癌の切除検体における免疫組織染色では、癌部が非癌部に比較して高発現しており、HSF1の肝癌における臨床病理学的検討より、肝癌における重要な予後因子であることが示された。 3)酸化ストレス肝発癌モデルalb-cre/LSL-KrasG12Dにおいて、通常食に比較して高脂肪食負荷では、有意な肝発癌の増悪、HSF1の高発現を認めた。これらよりHSF1における酸化ストレス肝発癌、脂肪性肝炎由来の肝発癌における関与が示唆され、その分子的機序に関して現在検討中である。 1), 2), 3)により、HSF1は肝癌治療における重要な標的分子になる可能性があることが実証され、この点に関しては研究の進行は順調である。 遅延している点として、HSF1を肝臓特異的ノックアウトマウスを作成中であるが(HSF1Δhep)が、HSF1Δhepと考えられるマウスが十分に生育されない等の問題がある。
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Strategy for Future Research Activity |
HSF1Δhep マウスと酸化ストレスを発生し、発癌を引き起こすと考えられる発癌モデルと交配することによりその発癌に対する影響の検討を行う。 HSF1Δhep マウス作成が遅延していることから、HSF1Δhep マウス作成研究者から、一部譲渡の依頼も検討する。in vivo において HSF1 の改変により変化する酸化ストレスを中心とした因子を癌部、非癌部で比較し網羅的に解析する。 HSF1が関与する標的分子の中和抗体の作成、siRNA、アンチセンスなどの腫瘍組織への直接的注入や 癌細胞または標的分子の発現細特異的プロモータ下にsiRNA配列をもつウイルスにて作成した治療法を構築、また、動物モデルを治療標的しての妥当性の検討、分子標的治療の検討 を行う。これらは標的遺伝子単独ではなく、HSF1 と併用する(HSF1 の機能抑制)ことにより抗腫瘍効果の増強について検討する。
患者検体におけるストレス応答シグナルの解析肝癌患者におけるストレス関連シグナルおよび因子の発現を検討するため、当科にて治療を施行する肝癌患者および肝癌に罹患していないコントロール患者より血清、癌組織、背景肝組織をインフォー ムドコンセントを取得したのちに採取する。これらにおいて既知のストレス応答関連因子を分子生物学的手法により、その発現量、部位を検討する。さらに患者の検体(おもに血清)を治療前後、または再発患者においてはその前後における 因子の発現の検討を行い、同様に解析する 。
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Causes of Carryover |
研究マウスは従来当科で保管していたものを使用したため、予定より少ない使用額となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
HSF1が関与する標的分子の機能解析に関して使用する予定である。
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[Journal Article] Intratumoral artery on contrast-enhanced computed tomography imaging: differentiating intrahepatic cholangiocarcinoma from poorly differentiated hepatocellular carcinoma.2015
Author(s)
Tsunematsu S, Chuma M, Kamiyama T, Miyamoto N, Yabusaki S, Hatanaka K, Mitsuhashi T, Kamachi H, Yokoo H, Kakisaka T, Tsuruga Y, Orimo T, Wakayama K, Ito J, Sato F, Terashita K, Nakai M, Tsukuda Y, Sho T, Suda G, Morikawa K, Natsuizaka M, Nakanishi M, Ogawa K, Taketomi A, Matsuno Y, Sakamoto N.
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Journal Title
Abdom Imaging
Volume: 40
Pages: 1492-9
DOI
Peer Reviewed
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