2015 Fiscal Year Research-status Report
腎除神経による心不全の自律神経概日リズム異常への介入に関する研究
Project/Area Number |
26461057
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
平井 忠和 富山大学, 大学病院, 講師 (10303215)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井上 博 富山大学, 事務局, 名誉教授 (60151619)
城宝 秀司 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 講師 (90334721)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 腎交感神経 / 心不全 / 化学反射感受性 |
Outline of Annual Research Achievements |
心不全の発症・増悪には、交感神経系の賦活が関与しており、心不全の重症例ほど交感神経活動が亢進している。心不全の自律神経機能の異常には、日内リズムがあり、その機序の一つとして中枢の二酸化炭酸化学反射感受性の亢進が関与している。心不全では腎血流によるナトリウム排泄能の低下、レニン・アンジオテンシン系の活性化、臓器うっ血が認められるが、腎交感神経求心路は中枢における交感神経賦活にも関与しており、心不全において腎除神経を施行することで心不全の進展増悪を軽減させる可能性がある。 昨年度の研究では、心筋梗塞による心不全モデルラットにおいて無拘束・自由行動下で自律神経の概日リズムを検討し、腎除神経により心不全ラットの交感神経機能の概日リズムの改善を認めた。今年度は中枢性化学反射感受性におよぼす腎除神経の影響を検討した。腎除神経は側腹切開により腎動静脈を同定し外科的に腎神経を切除し、10%フェノ-ル液を塗布し完成させた。 中枢性化学反射感受性はラットのケ-ジ内に13%CO2・20%O2の混合気体を1時間毎に2分間注入し、1時間ごとの二酸化炭素負荷中の心拍・血圧反応をスペクトル解析し拡張期血圧の低周波成分(0.15-0.79Hz)を交感神経機能(LFdp)として評価した。心不全ラットの早朝覚醒時間(16-20時)の二酸化炭素化学反射感受性(ΔLFdp 890±23(SE))は、腎除神経を施行した心不全ラットにおいてΔLFdp 673±43(SE)と改善していた。また心不全ラットの左室拡張末期圧は腎除神経ラットで低下しており、心筋組織のBNPおよびTGFβのmRNA発現レベルをRT-PCR法で測定したところ、心不全ラットに比べ腎除神経を施行したラットで低下していた。以上より腎除神経は心不全ラットの化学反射感受性の亢進を是正し交感神経の賦活を改善させる可能性があることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
心臓と腎臓は密接に関連し、心機能の低下は腎機能を悪化させ、逆に腎機能の悪化は心不全の進展、増悪に関与している。今回、ラット心不全モデルで、腎臓の除神経処置をすることにより中枢性の化学反射感受性の亢進を是正できる可能性が示唆された。また心筋組織レベルにおいても腎除神経が心筋組織のBNPおよびTGFβのmRNA発現レベルを抑制していたことから、梗塞後の心臓リモデリング軽減にも有用であることがわかった。以上の結果から、心不全ラットにおいて心腎連関における腎交感神経の関与を評価することができ、今年度の研究目標はおおむね達成できたと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
腎除神経による心不全治療の介入時期と効果について検討する予定である。心筋梗塞後の心不全の進展増悪過程において、交感神経の過剰な賦活が深く関与していることがわかっている。現行の心不全治療法は心不全の重症度に応じて過剰な神経体液性因子の活性化を抑制する薬物が用いられているが、腎除神経がどの程度重症な心不全に有効か不明である。本研究の心筋梗塞による心不全モデルラットは、心筋梗塞サイズにより様々な心不全の程度を作成することができ、心不全の程度と腎除神経による治療介入時期について検討する予定である。
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Research Products
(6 results)