2015 Fiscal Year Research-status Report
移植脂肪幹細胞の傷害腹膜における再生誘導機序の解明
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26461260
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
濱田 千江子 順天堂大学, 医学部, 准教授 (50291662)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 腹膜透析 / 組織再生 / 細胞移植 / 細胞形質転換 / 組織線維化 / 抗酸化物質 |
Outline of Annual Research Achievements |
長期高糖濃度透析液にさらされる腹膜組織は線維化をきたし、機能的・形態的障害を呈する。透析液刺激による線維化は、組織を構成する中皮細胞を始め腹膜組織に存在する間葉系細胞の線維芽細胞への形質転換が中心的病態と考えられている。我々は、正常な中皮細胞を移植しても腹腔内が炎症状態では、むしろ線維化が惹起され、脂肪幹細胞を移植することで線維化が抑制されることを確認した。しかしながら、移植した中皮細胞は、移植後1週間を経てもかなりの数の細胞が組織内に存在しているが、移植脂肪幹細胞は短期間(2日間)しか存在せず、また移植による炎症性サイトカイン分泌や炎症細胞遊走抑制効果を含めた線維化改善効果が、一次的であることも明らかとなった。これら結果を踏まえ、中皮細胞の形質転換を抑制する機序を検討するとともにならびに、脂肪幹細胞の炎症下でのアポトーシス誘導の病態解明し、これらを抑制する機序を検討することで、より長期で効果的な線維化抑制・再生治療の確立が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
皮下脂肪から抽出した間葉系幹細胞と大網から抽出した間葉系幹細胞の形質並びに外的刺激(腹膜透析液刺激)に対する炎症性サイトカインならびに成長因子の分泌の反応が同一であることを確認した。炎症下は移植中皮細胞が線維芽細胞様に形質転換し、組織の線維化進展を惹起する中皮細胞の形質転換の機序に関して検討を行った。この結果透析液と同等ブドウ糖液刺激によって中皮細胞は直ちにミトコンドリア障害からラジカルを生成し、このラジカルがTGF-βならびにTNF-α経路さらにNFκ-βが活性化され、段階的に形質転換が誘導されることを確認し、この形質転換はラジカルを抗酸化物資で補足することで有意に抑制されることを確認し、国内ならびに海外の学会で発表し現在論文化し、投稿準中である。さらに脂肪幹細胞と中皮細胞を共培養することで糖刺激による中皮細胞の形質転換ならびに炎症性サイトカインの分泌が抑制されることを確認している。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度の中皮細胞と脂肪幹細胞のブドウ糖刺激に対する炎症性サイトカイン分泌や形質の比較検討を継続して行い、中皮細胞移植が脂肪幹細胞と同様の効果が得られる治療法の確立に努める。また、我々の動物実験において、移植脂肪幹細胞が早い段階でアポトーシスを起こして修復組織から消褪することを確認しており、移植後早い時期に消失するにも関わらず修復が促進される機序としてアポトーシスを貪食したマクロファージのサイトカイン分泌機能の調整による間接的な修復促進効果を検討する。実施準備ができ次第、これまでの細胞実験をもとに、動物モデルでの実験を開始する。
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Causes of Carryover |
動物モデルとして使用予定のラットの購入が販売元の理由で購入できず、動物実験の実施予定が立たず、移植細胞の候補2種のこれまでの動物モデルへの移植結果を踏まえ、細胞特性を確認し、特に移植細胞の形質転換抑制機序に関しての検討を行い、適正かつ長期的効果の得られる細胞移植法の準備を行った。実験が主に我々が確立した細胞株を用いての研究となったため、研究資金を押さえた研究となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今期進行している2種の細胞特性を更に明確にする研究を行うとともに、得ら動物モデルを使用できない場合は、組織に浸潤した単球との相互作用を細胞の共培養法を用いて検討する予定である。 動物モデルを使用可能な場合は、平成27年度の研究結果を踏まえて抗酸化前処理した中皮細胞の移植を行う予定である。
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