2014 Fiscal Year Research-status Report
トロンボモジュリン変異体による新規血管内皮保護薬の開発
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26461406
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
池添 隆之 高知大学, 教育研究部・医療学系, 講師 (80294833)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | トロンボモジュリン |
Outline of Annual Research Achievements |
トロンボモジュリン(TM)は血管内皮細胞上に発現して、プロテインCを活性化プロテインCに変換して、血液凝固因子VaとVIIIaを阻害することで、生体が過凝固に陥ることを防ぐ糖たんぱく質である。以前我々は、TMには血管内皮細胞を保護する新規な作用があることを報告した。そしてその作用は、細胞増殖刺激シグナルERKを介して抗アポトーシス蛋白Mcl-1を発現上昇することで発揮されることを報告した。当該年度の研究で、その活性部位が40アミノ酸からなる、上皮細胞増殖因子様領域の5番目(TME5)に局在することを突き止めた。臍帯静脈内皮細胞を用いた試験管内の実験で、TME5はERKを活性化してMcl-1の発現を増加させることを確認した。TME5をさらに断片化すると、これらの作用は減弱することから、TME5が内皮保護作用を発揮する最小単位と考えられた。また、カルシニューリン阻害剤による血管内皮細胞障害マウスモデルにおいて、合成TME5はマウスの腎と肝の血管内皮細胞を保護し、血管内皮細胞同士の接着の破たんに基づく毛細管漏出も防御可能であることを証明した。さらに、TME5は正常な血管内皮細胞の増殖を刺激し、血管新生を促進する作用を有することも明らかにした。遺伝子組換えTM(rTM)は2008年から播種性血管内凝固症候群(DIC)に対する治療薬として臨床の場で使用されているが、患者に投与すると、出血の副作用が約5%の頻度で発症することが問題となっている。重要なことに、TME5には全く抗凝固作用が存在しないため、今後血管内皮細胞保護薬として臨床開発する際に出血の副作用を懸念する必要がない安全な薬剤となりうる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度の目標であった、TMが血管内皮細胞保護作用を発揮する最小単位を同定することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
造血細胞移植後に、血管内皮細胞障害に起因して発症する類洞閉塞症候群や移植片対宿主病など様々な障害に対するTME5の予防、あるいは治療効果を動物モデルを用いて検証する。また、TME5がERKシグナルを活性化する作用機序を詳細に明らかにする。
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