2017 Fiscal Year Research-status Report
A 群連鎖球菌の劇症型感染症の責任遺伝子の同定と発症機構の解析
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26461512
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
井坂 雅徳 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 助教 (40336673)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長谷川 忠男 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 教授 (10314014)
前山 順一 国立感染症研究所, 血液・安全性研究部, 主任研究官 (40199641)
立野 一郎 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 講師 (50311642)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | A群連鎖球菌 / 二成分制御因子 / センサータンパク質 / バイオフィルム |
Outline of Annual Research Achievements |
A群溶血性連鎖球菌は、咽頭炎や猩紅熱を引き起こす原因菌として知られているが、近年になり人食いバクテリアと称される劇症型を発症することで世間に知られるようになった細菌である。劇症型を発症するA群連鎖球菌臨床分離株と同じ株が、劇症型を発症していない患者からも分離される報告がある。この報告から、A群連鎖球菌は何らかの外界からの刺激を受けたのちに劇症型を発症するものと推測される。 そこで、外界刺激を感受し遺伝子発現の制御を担う二成分制御因子と、劇症型で発症している未知な遺伝子群を同定し、どのような機構で劇症型にまで至る経路を使用し発現するかを調査した。 この調査を行う上で、う蝕の原因菌であるストレプトコッカス ミュータンスに着目した。この細菌は、酸を二成分制御因子で感受後バイオフィルムを産生し、歯からの物理的化学的除去に抵抗を示す。A群連鎖球菌はこの細菌を近縁であるため、酸が劇症型発症機構に影響を及ぼしていると考え、細菌が外界からの酸を感受する部位である二成分制御因子の変異や欠損が原因の一助と推測し、A 群連鎖球菌の劇症型感染症の責任遺伝子の同定とその発症機構の解析を目的とした。 二成分制御因子欠損株への酸刺激と野生株とのバイオフィルム産生の比較から、SPY1588が酸感受後にバイオフィルム産生の起点であるセンサータンパク質であることが明らかとなった。また、その下流では、A群連鎖球菌の毒素タンパク質産生を制御するMga タンパク質の発現が、SPY1588が酸感受後に正に制御したことも明らかとなった。このことから、A群連鎖球菌の毒素産生は、環境因子で左右され、特に酸を感受して発現調節させるものと推測された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今回実験計画した、劇症型株由来spy1588欠損株の酸刺激後のmga遺伝子の転写調節を確認した。その結果、酸刺激時にこの遺伝子が誘導されていた。二成分制御因子センサータンパク質SPY1588が酸感受後に毒素タンパク質調節因子Mgaの発現に関与していたことが明らかとなった。 さらに、SPY1588が直接酸を感受しているかを調査するため、HisTagを付加した融合タンパク質を大腸菌で発現させ精製を実施した。このタンパク質は膜タンパク質であるために可溶化と精製に時間が要してしまったが、単一タンパク質として精製することが出来た。精製SPY1588-HisTagをリポソームに組み込み、プロテオリポソーム化した。このプロテオリポソームを使用してSPY1588 HisTagの自己リン酸化を測定した。その結果、pH6.4付近でガンマ32P-ATPを使用して、このタンパク質が放射線ラベルされたことを確認した。このことから、このタンパク質が酸性状況下で自己リン酸化を促進することが示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
今回新規で酸感受性の二成分制御センサータンパク質SPY1588が新たに見出された。このタンパク質の詳細な機能は不明である。このタンパク質の機能を明らかにするためには立体構造を解析する必要がある。A群連鎖球菌の外膜タンパク質でセンサータンパク質の立体構造を明らかにし、機能解析を行っている研究報告はほぼ無い。 そこで、このタンパク質の立体構造をX線解析により突き止める。定法では、コンピュータ計算でタンパク質の二次構造を明らかにして機能解析の一助とするのであるが、このSPY1588は通常の解析方法では結果が得られない配列となっている。そのため、このタンパク質を結晶化しX線構造を明らかにする方法が、機能解析が明らかになると推測される。
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Causes of Carryover |
SPY1588センサータンパク質の機能解析終了後に論文を作成し、投稿費用や論文添削代金を計上していたが、このタンパク質精製が難しく予想以上に時間を費やし残金が発生した。 次年度に、論文作成、添削代金として使用する。
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