2014 Fiscal Year Research-status Report
染色体重複モデル動物を用いた科学的根拠に基づく自閉症治療法開発の基礎的研究
Project/Area Number |
26461554
|
Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
永野 昌俊 日本医科大学, 医学部, 講師 (60271350)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 秀典 日本医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (30221328)
坂井 敦 日本医科大学, 医学部, 講師 (30386156)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 自閉症 / 社会性 / セロトニン / セロトニン1A受容体 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は内匠らによって作製された染色体の重複による自閉症のモデルマウス(以下patDp/+マウス、Nakatani et. al. Cell, 2009)を用い、自閉症スペクトラム障害(ASD)に特徴的な症状である「社会性の欠如」や「物事へのこだわり」等、共通した表現型の分子基盤を解明し、その知見に基づいた症状の改善方法について、開発基盤を確立することを目指す。 まず、生後約3週間に及ぶ選択的セロトニン再取込み阻害薬(SSRI)のフルオキセチン(FLX)の処置により、成長後に社会性の欠如が改善されることを見いだした。しかし、FLX処理は「物事へのこだわり(水迷路で観察)」、「繰り返し行動(Rotarodで観察)」は改善しなかった。また、中脳におけるセロトニン含有量の減少もFLX処置で改善された。 社会性の改善に関与するセロトニン受容体の検索を行うと、生後FLX処理とほぼ同じ時期にセロトニン1A受容体のアゴニストである8OH-DPATを処置するとFLX同様に社会性の改善が再現されることが分かり、一方セロトニン4受容体を欠損している動物でもFLXの効果は再現された。よってこれまでのところ、社会性の改善にはセロトニンの生後一定期間の1A受容体の刺激が重要であり、4受容体は関係ないことが明らかになった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ASD最大の特徴であり、問題でもある「社会性の欠如」が生後の一時的な薬物処理によって成長後でも改善されることが複数の薬物処置で再現性良く確認できた。そのメカニズムにはセロトニンの1A受容体の関与が示唆された。このことは大きな成果である。また、ASDに共通して見られるいくつかの特徴的な症状の中で「社会性の欠如」と「物事へのこだわり」、「繰り返し行動」は異なるメカニズムで制御されているらしいことが分かった。
|
Strategy for Future Research Activity |
どのようなメカニズムでセロトニンの1A受容体が「社会性」に関係するのか、脳の解剖学的、電気生理学的、分子生物学的なレベルで精査を進めていく。 また、薬物処理によって改善されなかった「物事へのこだわり」、「繰り返し行動」についての分子メカニズムの解明に取り組む。
|
Research Products
(1 results)