2015 Fiscal Year Research-status Report
ヒトiPS細胞膵臓分化系を用いた生活習慣病胎児期起源説の検証
Project/Area Number |
26461638
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
白木 伸明 東京工業大学, 生命理工学研究科, 准教授 (70448520)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | DOHaD / barker仮説 / iPS / 膵臓分化 / アミノ酸 / 生活習慣病胎児期起源説 |
Outline of Annual Research Achievements |
生活習慣病は、遺伝素因と環境因子の二つが発症に関わっていると考えられるが、母親の胎内環境が生活習慣病の発症に深く関与することが疫学研究や近年のエピジェネティック研究から明らかになってきた。この生活習慣病胎児期起源説(Barker仮説)に関しては、健康と疾病の素因は受精時から乳幼児期に決定されるというDOHaD(Developmental origins of health and disease)説という概念に発展している。DOHaDに関しては、疫学、動物実験、分子レベル等多方面にわたって積極的に行われているが、倫理面からヒトにおける検証実験は非常に困難である。そこで、ヒトの発生現象を模倣することができるヒトiPS細胞(induced pluripotent stem cell)の分化誘導系を用いて、生活習慣病胎児期発症説の検証を行った。研究初年度であるH26年度には、本研究で利用するヒトiPS細胞の膵臓分化誘導系の構築(Shahjalal et al., J. Mol.Cell.Biol., 2014)を行うとともに、必須アミノ酸であるメチオニンがヒトES/iPS細胞の未分化性および分化制御に重要や役割を担っていることを明らかにした(Shiraki et al., Cell Metab., 2014)。2年目であるH27年度には、栄養組成が分化に与える影響を検証しやすくする目的で分化誘導法の改善を行った(Nakashima et al., Genes Cells, 2015)。構築した方法を用いた未分化細胞、膵臓前駆細胞、及び膵臓β細胞分化における各種アミノ酸の役割を検証し、各分化段階で必要なアミノ酸が異なることを見出した(白木ら、第9回日本アミノ酸学会学術大会、2015)。さらに、細胞の性状評価として細胞内のミネラルを測定する新規測定方法を構築し、未分化iPS細胞および分化細胞における鉄・亜鉛・銅の含有量を測定した(Arakawa et al., Journal of Analytical & Bioanalytical Techniques, 2016)。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、ヒトiPS細胞の膵臓分化誘導系を用いて、各分化段階の細胞に対して単一アミノ酸培地による低栄養負荷を与え、その後の細胞分化を多方面から解析する。これまでに、①膵臓分化誘導方法の構築および改良(Shahjalal et al., J. Mol.Cell.Biol., 2014, Nakashima et al., Genes Cells, 2015) ②ヒトiPS細胞に対するアミノ酸除去の効果(Shiraki et al., Cell Metab., 2014, 白木ら、第9回日本アミノ酸学会学術大会、2015)③細胞内の微量金属成分の新規測定方法の開発(Arakawa et al、Journal of Analytical & Bioanalytical Techniques, 2016)について研究成果が出ている。各分化段階におけるアミノ酸除去の効果についても検証を始めており、着実に成果が出ていると考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
H26,27年度の検討により、膵臓分化誘導方法および評価方法を構築でき、単一アミノ酸除去については結果も得られてきている。さらに、各分化段階の細胞凍結保存技術についても開発を進め、研究材料も十分に準備できた。最終年度であるH28年度は、作成済みである未分化細胞、内胚葉細胞、膵臓前駆細胞、内分泌前駆細胞および膵臓β細胞を用いて各分化段階における低栄養負荷が直後の細胞分化に与える影響を多面的に評価するとともに最終分化時の膵臓β細胞のインスリン分泌に与える影響を評価する。また、研究成果については国際的な学術雑誌への投稿にむけて準備を進める。
|
Causes of Carryover |
前年度末に熊本大学から東京工業大学に研究室が移動したために実施する実験計画が変更になり、次年度使用額が生じた。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
物品費に充てて、細胞培養に利用する培養液およびプラスチック消耗品の購入代金とする。
|