2014 Fiscal Year Research-status Report
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26461700
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Research Institution | Takasaki University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
村上 孝 高崎健康福祉大学, 薬学部, 教授 (00326852)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
斎藤 克代 高崎健康福祉大学, 薬学部, 助手 (90455288)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | がん / メラノーマ / シグナル伝達 / 遺伝子増幅 / 浸潤 / 転移 |
Outline of Annual Research Achievements |
BRAF(V600)とNRAS(Q61K/Q61R)変異は、RAS/RAF/MEK/ERKシグナル伝達カスケードを恒常的に活性化し、悪性黒色腫(メラノーマ)の主要な腫瘍原性変異と考えられている。これまでの詳細なゲノム解析の結果、メラノーマの進展とともに特定の遺伝子増幅が存在することが指摘されている。この遺伝子増幅領域に位置する遺伝子機能がメラノーマの浸潤転移能亢進と治療抵抗性に関わる可能性がある。本研究では、メラノーマに特徴的な遺伝子増幅領域と浸潤能と転移能の関係に焦点を絞り、代表的な増幅領域に存在する遺伝子群の系統的な細胞運動能と浸潤解析からメラノーマ悪性化の協調因子を抽出する狙いがある。本年度では、メラノーマにおける代表的な遺伝子増幅領域(3p13、11q13、5p13-p15、12q14)に存在する遺伝子群(リスト)をGenBank等のデータベースから抽出作業を進めた。また、腫瘍原性遺伝子の変異(や増幅)とともに協調的に働く遺伝子(群)に注視ながらNIH3T3細胞および不死化メラノサイトの細胞運動能(浸潤能)を促進する遺伝子を分離するための細胞スクリーニング系の構築を試みた。不死化メラノサイトを用いた安定的な細胞培養系の確立は難しい状況にあるものの、NIH3T3細胞による細胞運動評価系は容易に確立することができた。この実験系を用いた試験結果から、細胞膜の脂質代謝が上皮間葉転換にかかわることを見出すことができた。実際、その標的阻害は強力な上皮間葉転換促進因子TGFβ1に拮抗し、細胞運動を抑制することができた。メラノーマの腫瘍原性遺伝子の変異の1つであるRAS変異に対しても細胞運動抑制を示した。これらの結果から、当該脂質代謝経路におけるシグナル伝達経路を指標にしつつ、メラノーマの遺伝子増幅領域から細胞浸潤にかかわる因子を追求していきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の研究成果においてがん代謝に関係した研究から脂質代謝が細胞運動能の亢進のみならず上皮間葉転換と密接に関連していることが明らかになった。このことは当初の予定とは異なる進展であるが、悪性腫瘍の転移浸潤の一般的な機序にかかわる可能性として注目に価する。メラノーマにおける代表的な遺伝子増幅領域(3p13、11q13、5p13-p15、12q14)に存在する遺伝子群のリスト化から当該事象と関連するものを割り出すことで研究の方向性がより明確になったといえる。その一方で、不死化メラノサイトの安定的な細胞培養系の確立ができていないため、次年度以降の課題として残されている。また上皮間葉転換との関係を明確にするため、腫瘍生物学的な特性を勘案し、乳癌細胞との対比に注目しながら研究を進める必要性がでてきた。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の研究成果においてがん代謝に関係した研究から脂質代謝が細胞運動能の亢進のみならず上皮間葉転換と密接に関連していることを突き止めた。とりわけ上皮間葉転換に関する成果はメラノーマのみならず悪性腫瘍の転移浸潤の一般的な機序にかかわる可能性は注目に価する。当初の計画では、メラノーマにおける代表的な遺伝子増幅領域(3p13、11q13、5p13-p15、12q14)に存在する遺伝子群(リスト)から細胞運動能の亢進や上皮間葉転換を促進する因子を抽出する予定であったが、これらの遺伝子群から脂質代謝に関連するものに注視し、メラノーマに特徴的な挙動を説明できる因子を絞り込みたい。興味深いことに、がんにおける脂質代謝が、1)ヒストン修飾を介したエピジェネティック異常の要因となっていること、2)がん幹細胞維持にかかわる可能性があることを示唆する結果が得られてた。すなわち、上記のことはメラノーマのみに限られず、がんの転移浸潤の根幹にかかわる現象であることも考えられる。次年度では、エピジェネティック修飾の蓄積が少ないと考えられる不死化メラノサイトの安定的な細胞培養系の確立に挑戦しつつ、さらに上皮系がんの代表として乳癌細胞をメラノーマの対照として設定し、双方の比較を行いながら広い視野での研究を展開したい。
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Causes of Carryover |
当該年度ではデータベース構築に向けた情報検索が予想以上に時間がかかってしまった。また不死化メラノサイトの培養系の構築が進まなかったこともあり、結果的に消耗品経費の抑制に至ったことが挙げられる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度では、エピジェネティック修飾の蓄積が少ないと考えられる不死化メラノサイトの安定的な細胞培養系の確立に挑戦しつつ、さらに上皮系がんの代表として乳癌細胞をメラノーマの対照として設定し、双方の比較を行いながら研究展開を予定している。そのため消耗品費の支出も多くなると見積もっている。また平成26年度未使用額との研究経費のバランス調整については、最終年度で実施したいと考えている。
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Research Products
(9 results)