2015 Fiscal Year Research-status Report
プレセニリンγセクレターゼによるアミロイドβ切断が細胞内のどこで起こるか?
Project/Area Number |
26461746
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
田上 真次 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40362735)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大河内 正康 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (90335357)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | アルツハイマー病 / プレセニリン / γセクレターゼ / アミロイドβ / APL1β / γ切断 |
Outline of Annual Research Achievements |
アルツハイマー病(AD)脳に特異的に認められる老人斑の主たる構成成分は42アミノ酸からなるAβ42であり、Aβ42が凝集し始めることがAD病理の引き金になるのではないかと考えられている。Aβは前駆体であるβAPPがBACEとプレセニリンγセクレターゼによる段階的蛋白分解を受けて産生される。近年我々はγセクレターゼによる最終分泌産物であると考えられていたAβ42が、実は中間代謝産物であり、γセクレターゼ自身によってさらなる切断を受けて、病原性のないAβ38となることを発見した。本研究ではプレセニリンγセクレターゼによるγ切断やこのAβ42切断が細胞内で起こる仕組みやその局在、およびプレセニリン1に病原性突然変異体を有する家族性AD患者脳でA42切断が変化しているかどうかを検討している。 本年度はβAPPを過剰発現したHEK細胞やヒトiPS細胞から誘導した大脳皮質神経細胞を用いて、Aβ42切断やγ切断などが起こる仕組みを詳細に検討した。細胞免疫染色については、数種類のAβ42のC末端側に特異的に反応する断端抗体を用いて実験を繰り返したが、定量的解析ができるほどのシグナル強度を得ることが出来なかった。そこで、細胞内でAβ42切断やγ切断が起こる時に、同時に細胞内に産生される数アミノ酸のペプチドに着目し、これを解析することにした。 またγセクレターゼの主たる構成分子であるプレセニリン1に各々異なる病的突然変異がある家族性AD (FAD)4例および非認知症患者の脳脊髄液中サンプル数十例中のAβ42、APL1β28などの測定を行った。その結果、家族性AD脳では大量のAβ42が蓄積しているにも関わらず、Aβ42産生量自体は増加していないこと、主たる分子種であるAβ40の産生量がむしろ低下し、Aβ42の割合が増えることがFAD病理の引き金になっている可能性が示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Aβ42切断やγ切断の仕組み・細胞内局在を検討する実験に関しては、複数のAβ42断端特異的抗体を用いて検討を重ねた。Aβの前駆体であるAPPや、βAPPがBACEにより細胞外ドメインを切断されたCTFβに対する市販抗体では、共焦点蛍光顕微鏡を用いて特異的な染色像を得られたが、Aβ42断端を特異的に捉えることは出来ていない。そこで、細胞内でAβ42切断やγ切断が起こる時に、同時に細胞内に産生される数アミノ酸のペプチドに着目し、これを解析することにした。これに関しては現在のところ当該実験の進捗は順調である。またFAD患者脳でAβ42切断が変化しているかどうかについては、実験を完了しFAD患者脳内ではAPL1β28からさらに短いAPL1β25などへの切断の遅延、つまりAβ42からAβ38への切断が遅延していることを示唆するという結論が得られたため、達成度は十分である。
|
Strategy for Future Research Activity |
Aβ42切断やγ切断の仕組みを検討する実験に関しては、引き続きβAPPを過剰発現したHEK細胞やヒトiPS細胞から誘導した大脳皮質神経細胞を用いてAβ42切断やγ切断などが起こる時に、同時に細胞内に産生される数アミノ酸のペプチドの解析を進める。さらに培養細胞にγセクレターゼ阻害剤やγセクレターゼ修飾薬などAD根本治療薬の候補となっている薬剤をかけ、Aβ42切断やγ切断などがどのように変化しているかどうかを詳細に調べる。 Aβ42切断が家族性AD脳内でどのように変化しているのかを調べる実験に関しては、 家族性AD、孤発性AD患者および非認知症患者の脳脊髄液中サンプル中の測定可能なすべての分子種(Aβ42,43,40,38,37など)をELISA法で測定する。さらなる新たな知見を得るため、それらの解析を進める。
|
Causes of Carryover |
本年度は細胞内アミロイドβ42切断を調べるために、各種抗アミロイドβ42断端抗体を使って蛍光顕微鏡による解析を進める予定であった。しかしながら解析に耐えうる程度の染色像を得られなかったため、細胞免疫染色実験を途中で中止した。これに代わって新たな実験系の確立を開始したばかりである。よって抗体、細胞免疫染色に必要な試薬が不要となり残金が生じた。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
最終年度は蛍光顕微鏡による、細胞免疫染色実験の代わりに、細胞内でアミロイドβ42が産生されたときに同時に産生される数アミノ酸ペプチドを同定、定量することで解析を進める。この実験にはLC/MS/MS装置を使用するため、新たにペプチド解析用の試薬、装置を稼働させるための試薬などが必要になる。平成27年度に繰り越した費用を新たな実験系に使用する。
|