2014 Fiscal Year Research-status Report
次世代シーケンサーを用いた大腸癌末梢血の抗EGFR抗体非侵襲的感受性診断の検討
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26462013
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
竹政 伊知朗 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50379252)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
水島 恒和 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (00527707)
山本 浩文 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (30322184)
佐藤 太郎 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (40368303)
畑 泰司 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (70644912)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 大腸癌 / 非侵襲性KRAS変異検査 / 次世代シーケンサー / 感受性性診断 |
Outline of Annual Research Achievements |
進行大腸癌に対する抗EGFR療法のbenefitは野生型KRASの患者に限られているため、生検サンプルなどあらかじめ癌組織の遺伝子検査を行い、適用のある患者を選別する必要がある。KRAS変異は抗EGFR治療中にも獲得されることが認識され、獲得耐性の重要なメカニズムの一つとして提唱されるようになった。血液中から低頻度の変異クローンを検出できれば、原発巣が野生型の患者が治療経過中変異を来した場合、無益な治療の継続を回避することが可能となり、診断精度の改善および費用対効果の改善につながることが期待される。本研究では、従来の検査の感度を向上させることで血液検体を用いた非侵襲性KRAS変異検査を確立し、病勢モニタリングや耐性変異を標的とする新しい分子標的薬の適用決定など新しい用途の研究開発を行うことを目的とする。 本年度は大阪大学と基幹関連施設での高度進行大腸癌の標本(原発巣、生検サンプル、全血)を集積・保管するシステムを構築した。 次世代シーケンサーを用いた血漿中大腸癌由来変異DNA検出法の確立するため、実験系のバックグラウンドノイズを測定し、コマーシャルのゲノムDNAサンプルを用いて解析により条件設定を完了した。実際の臨床サンプル(原発巣、生検サンプル、血液)を対象としてKRAS変異の相同性について検証した。サンプルにより、組織、術前血漿でのmutationの割合が高く、術後の血漿においては、mutationが少なくなっていることが確認された。これらの結果は、薬剤感受性、病態などを予測するのに重要な情報を与えると考えられる。 以上のように、血液中のcfDNA(セルフリーDNA)の解析により、大腸癌組織の変異を検出できる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度の実施計画項目として、まず大阪大学およびその基幹関連施設からなる臨床試験推進組織である大阪大学大腸疾患分科会をベースに、対象となる高度進行大腸癌症例の標本(原発巣、生検サンプル、全血)臨床病理所見データの回収・保管システムを構築した。 もう一つの実施計画項目と次世代シーケンサーを用いた血漿中大腸癌由来変異DNA検出法を確立した。測定感度は10,000正常分子中1個の変異分子の検出を目標とした。PCR増幅したKRAS断片を10万回以上配列決定することにより、変異を探索する。次世代シーケンサーの読み取りエラー率によっては、目的遺伝子変異の検出感度を達成できない可能性があるため、まずはPCRを行う際の酵素反応の検討を行い、エラー率の低い条件を確立することができた。さらに同一鋳型を逆方向から配列決定するオプション技術や、個々の塩基のエラー率を正確に調べることで配列読み取り精度を向上させた。 予備検討で決定したPCRプライマーで増幅されるKRAS遺伝子シークエンスは、KRAS_exon2: 120bp chr12: 25398212 – 25398331である。まず、実際のサンプル解析を行う前に、実験系のバックグラウンドノイズを測定するために、コマーシャルのゲノムDNAサンプルを用いて解析を行った。次世代シークエンスによる配列解析は、大量のシークエンスデータを扱うため、1%程度の塩基配列エラーでも10万シークエンス当たりに変換すると1000シークエンスが間違った配列となる。コントロールサンプルの解析の結果、コドン12, 13の変異のうち、G12Aのエラー率が比較的高いことがわかり、順調に実際の臨床症例解析まで実験が進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
1)生検サンプでのKRAS変異と血液サンプルでのKRAS変異の相同性についての検証 100症例以上のサンプルについて、血液中と生検でのKRAS変異結果と合致した結果が得られるかどうか検討する。また、薬剤応答との比較により、その感度と特異度をしらべ、それぞれの技術の特徴を明らかにする。(問題点と解決策)採取する場所の違いにより、異なる結果が出る場合がある。まずは、血液中サンプルを用いた場合の感度の安定性を検証すると共に、生体サンプルを複数調べることにより、双方の結果の安定性の違いを確かめる。また、感度のスレッシュフォールドを決定するために、薬剤応答など他の臨床情報との関連解析を行う。生検サンプルと血液サンプルの違いの検討、検出感度のスレッシュフォールド変化による一致率検討、単純相関検討、他技術による感度比較、薬剤応答情報を基にした正診率、感度、特異度の検討、薬剤応答に対する生検サンプルの感度、特異度の検討、薬剤応答に対する血液サンプルの感度、特異度の検討、生検サンプルの結果を正解としたときの血液サンプルの正診率の検討 2)50症例以上のサンプルについて、前向き試験を行う。 (問題点と解決策)これまでの後向きサンプルの結果と同じ感度、特異度が再現しない可能性がある。その場合、スレッシュフォールドの見直し、臨床情報による層別解析をおこない、感度、特異度を高める検討を行う。KRAS野生型患者を対象に、抗EGFR抗体導入前後、増悪後の各ポイントで血液を測定し、化学療法中の簡便なKRAS測定による極めの細かい個別化化学療法の実践の可能性を検討する。
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Causes of Carryover |
対象となる高度進行大腸癌症例の標本(原発巣、生検サンプル、全血)臨床病理所見データの回収・保管システムを構築するために必要な物品を購入し、また次世代シーケンサーを用いた血漿中大腸癌由来変異DNA検出法を確立するために必要となった物品を購入したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
100症例以上のサンプルについて、血液中と生検でのKRAS変異結果と合致した結果が得られるかどうか検討する感度のスレッシュフォールドを決定するために、薬剤応答など他の臨床情報との関連解析を行なうのに必要となる物品を購入するため。
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