2015 Fiscal Year Research-status Report
3次元仮想現実感による胆膵外科手術支援システムの構築と評価
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26462073
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
中郡 聡夫 東海大学, 医学部, 教授 (10261918)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
河合 隆史 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (90308221)
盛川 浩志 青山学院大学, 理工学部, 助教 (90386673)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 3D映像 / 仮想現実感 / 手術シミュレーション / 血管合併切除 / ヘッドマウントディスプレイ |
Outline of Annual Research Achievements |
膵癌および胆道癌ではしばしば門脈や肝動脈浸潤を認める。従って、これらの癌を根治的に完全切除するためには、血管への浸潤範囲を含めて腫瘍の進展範囲を立体的に正確に把握することが不可欠である。また血管を合併切除した場合には膵管や胆管の再建に加えて血管再建のシミュレーションも重要になる。我々は膵癌および胆道癌の手術計画および手術シミュレーションに没入型の仮想現実感3D画像の開発を進めており、今回はさらに臨床に有用な没入型3D映像の制作を行った。 本研究では、主に門脈・肝動脈などの血管と腫瘍とを3D映像化して、さらにその3Dモデルをヘッドマウントディスプレイ(HMD)に仮想現実感として描出することで、血管と腫瘍の立体関係をより明確で分かりやすくする次世代の没入型画像呈示システムの構築を目指している。CTデータの抽出(segmentation)と3DモデリングにはOsiriXを用いて行い、作成した臓器と血管の3Dモデルを没入型仮想現実感環境の3Dモデルに変換して、HMDに呈示した。今回は新しくスマートフォンを内蔵したHMDの画像提示システムを用いることで、システムとしての小型化と軽量化を目指した。 予想される成果と貢献は以下である。 膵癌および胆道癌に対する手術適応は拡大されつつあり、門脈あるいは肝動脈を合併切除する拡大手術が増加している。血管合併切除では、血管への癌浸潤の有無だけでなく、腫瘍と血管の立体的位置関係を正確に把握することが、根治切除を達成するためには非常に重要となる。今回開発する血管走行と腫瘍の3Dモデルをヘッドマウントディスプレイ(HMD)に仮想現実感として描出するシステムは、手術計画・手術シミュレーションとして有用であり、さらにレジデントなど若い外科医にとっても血管と臓器の立体関係が理解しやすいために手術チーム内で手術イメージを共有できる利点がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度の研究においては,CTデータから構成された3DCGから得られる情報と,実際の手術において観察された臓器・血管との整合性を確認し,術前のシミュレーションにおいて提示すべき情報の検討と,その情報提示手法として,VR技術を活用した簡易型HMDの応用可能性についての検討を行った.検討にあたってCTデータの収集と3Dモデリングを行った。 モデルを構成するにあたり,肝動脈再建を伴う膵頭十二指腸切除術を施行した症例3例を対象とした.モデル化については平成26年度の検討において,segmentationとモデリングにMacOS Xにて動作するソフトウェアのOsiriXを用いるワークフローを確立した。しかしながら,これまでの検討では胆管や肝門部周辺の血管のsegmentationを対象として想定していたのに対し,膵臓を対象とした場合CT画像における映像が明瞭ではなくなるため,腫瘍の浸潤が判別しづらいことや手作業でのsegmentationなどが必要となることが,新たな課題として挙げられた。 そこで,3Dモデル化を行った3例の症例については,極力数値設定による自動的なsegmentationのみによってモデル化を行い,術中に必要となる情報がどの程度モデルの情報として抽出されるかについて分析を行った。その結果,映像が不明瞭な箇所については粒子状のノイズデータがモデルとして描出されるものの,胃十二指腸動脈などの主要な血管については,腫瘍の浸潤に伴う先細り像が認められるなど,シミュレーションに有用な情報が得られることがわかった。一方で,径1.5mm以下の血管については描出が困難であり,動脈再建などの判断は術中の目視,触診による判断が必要であると考えられた。 以上の検討について,2015年度の日本コンピュータ外科学会にて発表を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の検討を通し,CTデータの3Dモデル化に対するワークフローの見直しを図る一方で,必要な情報をどのように外科医に提示し,共有するかというデータ利用におけるユーザビリティの検討が必要であると考えられた。術前のシミュレーションにおいては,3Dモデルの観察が術野や対象組織の空間把握に有用であることは期待されるが,より直感的な観察を可能とする閲覧環境を整備することで,3Dモデルを用いたシミュレーションの普及,高度化に寄与すると考えた。そこで没入型のHMDを用いることで,観察位置をより直感的に操作可能なシステムの構築について検討を行った。 使用するHMDとして,ディスプレイ部にスマートフォンを用いた形態のものを利用した。これは,従来の没入型HMDにくらべ,ケーブルが不要で姿勢の自由度が高いことと,装着の容易さから複数人での利用が簡便になること,小型軽量で可搬性に優れるということといった特徴を考慮して決定した。システムの試作として,バーチャルリアリティ空間の構築ソフトウェアであるUnityを用い,CTデータから構築した3Dモデルを自由な方向から観察可能なアプリケーションを作成した。閲覧操作については,HMDに内蔵された加速度・ジャイロセンサによる視点の回転と,パッド型コントローラによるモデル操作を可能とした。 試作したシステムによる検討を行った結果,3Dモデルを視差を伴った立体映像として閲覧できることを確認した。一方で,複数台のHMDを用いた仮想空間と3Dモデルの共有や,閲覧姿勢の計測により改良が必要であると思われた。システムの構築に当たっては,HMDに使用するスマートフォンの描画性能や使用可能なセンサの情報などにおいて検討すべき課題があり,設計手法の改良が必要であると考えられた。次年度の検討として,HMDを用いた術前シミュレーション画像の閲覧システムの高度化について開発を行っていく。
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Causes of Carryover |
平成27年度の研究においてはCTデータの収集と3Dモデリングを行い、CTデータから構成された3DCGから得られる情報と,実際の手術において観察された臓器・血管との整合性を確認した。3D画像情報提示手法として,VR技術を活用した簡易型HMDの応用可能性についての検討を行った。しかし、HMDの機種選定にまでは至らず、これを購入しなかったため当該年度予算の未使用額が生じてしまった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の研究予定としては、3D画像情報提示手法としてスマートフォンを内蔵するHMDの機種を選定し複数台購入する予定である。ディスプレイ部にスマートフォンを用いた形態のものは,従来の没入型HMDにくらべ,ケーブルが不要で姿勢の自由度が高いことと,装着の容易さから複数人での利用が簡便になること,小型軽量で可搬性に優れるということといった特徴を有するため画像呈示システムとして優れていると考えている。また、3D画像作成システムとしてワークステーション等の追加購入も計画している。
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Research Products
(2 results)