初期浸潤肺腺がん凍結組織培養を利用した肺腺がんの悪性化分子機構の解明

2014 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 26462121
• Research Institution: University of Tsukuba
• Principal Investigator: 竹内 朋代 筑波大学, 医学医療系, 助教 (50450333)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 野口 雅之 筑波大学, 医学医療系, 教授 (00198582)
• Project Period (FY): 2014-04-01 – 2017-03-31
• Keywords: バイオバンク / 患者由来組織 / 組織培養 / 腫瘍移植マウス / 初期浸潤肺腺がん

Outline of Annual Research Achievements

本研究は、凍結組織培養系を利用して小型肺腺がん（野口type C）症例で認められる悪性度の指標になる因子を探索することを目的としている。バイオバンクで保存している凍結組織を培養して株化を行い、株化の過程で観察される変化、元の組織を株化細胞の比較を行うことで悪性化を引き起こす原因を明らかにする。
【凍結組織の培養・株化】凍結保存されている小型肺腺がん（野口type C）症例の凍結組織を培養して株化を試みる予定であったが、保存組織の大きさが十分でないものが多く、また症例数も多くはなかったため、先ずは進行がんを使用して検証した。ステージⅢの肺腺がん凍結組織の組織片を培養皿に静置する方法、組織を酵素で単細胞に分散して播種する方法の2種類で行った。何れの方法も増殖速度が非常に遅く、継代できる密度になるまでかなりの時間を要することが推測されたので、培養保存液に浸漬して凍結保存している組織を用いて培養を試みた。これらの組織では細胞増殖が確認でき、継代も可能であった。しかし、繊維芽細胞の混入率が高いため、がん細胞のみを分離するように培養液の組成や培養皿を工夫して培養を継続している。
【腫瘍組織移植マウスの作製】肺がん組織の一部を免疫不全マウスに皮下移植して腫瘍組織移植マウスの作製を行った。10症例中2症例で腫瘍の形成が確認できた。腫瘍の大きさや体重変化に注意しながら十分な大きさになった時点で解剖し、腫瘍組織の一部をあらたなマウスに移植をする。腫瘍の形成が確認できていないマウスについても引き続き飼育、観察を続ける。
【今後の研究の展開に関する計画等】凍結組織培養系において株化が可能であった症例及びマウスに腫瘍形成が認められた症例について、培養や移植を行う前のもとの組織との間で遺伝子発現プロファイル解析する。培養でがん細胞株を樹立できるような症例の分子生物学的特徴を明らかにする。

Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

平成26年度は、小型肺腺がん（野口type C）症例の凍結組織培養と腫瘍移植マウスの作製を行い、株化が可能な症例やマウスに腫瘍形成が認められた症例と臨床情報から得られる腫瘍の悪性度について関連性を調べるためのサンプリングを中心に行う計画であった。小型肺腺がん（野口type C）症例の凍結組織培養はバイオバンクに凍結保存されている20症例の小型肺腺がん（野口type C）組織を培養する予定であったが、症例数が十分でないこともあり進行がん症例も加えて実施をした。凍結組織の培養は予定よりも時間がかかってしまったが、培養方法を工夫して効率を上げることができた。増殖した細胞については、継代を繰り返しているが、がん細胞を分離して株化するまでには至っていない。引き続き継代を続け、その過程で観察される細胞接着、増殖等の細胞挙動を解析する。腫瘍移植マウスの作製は、既に10症例について一時移植が終了している。肉眼的に腫瘍の形成が確認できたものもあり、順調に計画を進めることができている。今後は形成された腫瘍組織から病理組織標本を作製して形態学的特徴を調べ、免疫不全マウスへの二次移植、三次移植を行い、生着や腫瘍形成についての解析を進める。

Strategy for Future Research Activity

平成27年度以降は株化細胞・移植マウスの腫瘍・凍結組織でそれぞれ認められる遺伝子発現を詳細に解析して小型肺線がん（野口type C）症例の悪性化を促す分子生物学的特徴を明らかにする。凍結組織を培養して株化する実験で、株化が成功した細胞は継代により選別されたがん細胞の集団であると考えられる。小型肺腺がん（野口type C）症例の中で、このようにがん細胞として増殖を続ける能力を持つ株化細胞で認められる遺伝子発現の特徴を調べることで、悪性化の原因となる分子を探索する。
【小型肺腺がん（野口type C）症例の凍結組織培養】小型肺腺がん（野口type C）組織について組織培養、継代培養は継続して行う。継代過程の細胞、株化した細胞の増殖、形態の解析並びに遺伝子発現解析に使用するサンプルの調整を行う。
【腫瘍移植マウスの作製】初代腫瘍移植マウスに形成した腫瘍を二次移植、三次移植を行い、得られた腫瘍組織について、病理標本の作製及び形態学的特徴の解析を行う。
【株化細胞・移植マウスの腫瘍・凍結組織の遺伝子発現プロファイル解析】株化した細胞、マウスに形成された腫瘍、もとの組織よりRNAを調整する。株化が不可能であった症例の組織からも同様にRNAを調整してサンプル調整を行う。ヒト由来の遺伝子プローブが搭載されているマイクロアレイスライドを用いたマイクロアレイ解析を行い、遺伝子発現解析プロファイルを作成する。株化細胞、移植マウス腫瘍、もとの組織の遺伝子発現プロファイルを比較するとともに株化可能であった症例、不可能であった症例との間の発現遺伝子プロファイルを比較し肺腺がんの初期悪性化に関わる因子を解析する。