2015 Fiscal Year Research-status Report
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26462402
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
久米 春喜 東京大学, 医学部附属病院, 登録診療員 (10272577)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
永田 政義 国立研究開発法人国立国際医療研究センター, 第二泌尿器科, 医長 (00323668) [Withdrawn]
山田 大介 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (00623696)
中川 徹 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (40591730)
東 剛司 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (50719854)
川合 剛人 東京大学, 医学部附属病院, 登録診療員 (60343133)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 腎細胞癌 / クロマチン制御関連遺伝子 / 癌進展 |
Outline of Annual Research Achievements |
腎細胞癌の最も多い組織型である淡明細胞型腎細胞癌(約80%)は近位尿細管により発生し、癌抑制遺伝子であるVHL 遺伝子が原因であることが知られている。VHL 遺伝子は転写調節因子である低酸素環境適応因子(HIF;hypoxia inducible factor)の分解に関与する。VHL遺伝子の変異によりHIF の蓄積が起こり、腎細胞癌の発生つながると考えられている。最近行った240 例の詳細な遺伝子解析ではVHL遺伝子の他、PBRM1遺伝子、BAP1遺伝子、SETD2遺伝子といったクロマチン制御に関する遺伝子の異常も多いことが判明した。 まずPBRM1遺伝子、BAP1遺伝子、SETD2遺伝子の変異を有する症例での予後を調べたところ、統計学的に有意に予後の悪いことが判明した。実際に、ほかのグループからは、同一症例内の原発巣、転移巣の遺伝子変異を詳細に調べ、SETD2 遺伝子の変異により淡明細胞型腎細胞癌の悪性度が増すことが最近報告されている(Gerlinger ら、N Eng J Med, 2012)。 これらの知見をもとにクロマチン制御に関する遺伝子と淡明細胞型腎細胞癌の進展について研究することが、本研究の目的である。 初年度はゲノム解析のデータをサブ解析した。すなわち臨床病理学的所見(年齢、性別、病理組織所見(腫瘍径、pT stage、Grade、脈管侵襲)、および網羅的ゲノム解析の結果を統合し、再度解析したところ、単変量解析では脈管侵襲、Grade、Hyperploid、14qLOHが有意な因子として挙げられたが、そのうち多変量解析ではHyperploidであることのみが唯一の危険因子として挙げられた。Hyperploid腫瘍はクロマチンが大きく変化した腫瘍であることから、クロマチンの変化が腎癌進展に重要であることを再確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1. 他の尿路悪性腫瘍での検討:クロマチン制御関連遺伝子の変化が淡明細胞型腎細胞癌に特有なものかを明らかにするのが目的である。これまで、非淡明型腎細胞癌20例、腎盂・尿管癌30例、膀胱癌25例、精巣癌5例を収集し、DNAを抽出した。非淡明型腎細胞癌ではエキソーム解析が間もなく終了する予定で、腎盂・尿管癌症例についてはエクソーム解析を始めたところである。 2. 免疫染色による診断(予後予測)への応用:tissue array を用いて予後との相関を明らかにするのが目的である。本年度は市販の抗体を用いて、免疫染色を行った。免疫染色については、十分なqualityを有する結果が得られず、適切な条件決定が現在の課題である。 3. 剖検例での検討:同一症例内で悪性度の増加に伴いクロマチン制御関連遺伝子がどのように変化し、これに伴いヒストン修飾がどのように変化するかを明らかにするのが目的である。剖検例について、転移部位のパラフィン切片よりDNAを抽出し、検討したが、DNAの劣化が著しく、クロマチン制御関連遺伝子をはじめとするいくつかの遺伝子の解析は困難であった。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、いくつかの培養細胞におけるクロマチン制御関連遺伝子の変異を調べ、クロマチン制御関連遺伝子の変異や同遺伝子導入による増殖能の変化について明らかにする。 ①培養細胞での遺伝子変異とクロマチン修飾:先行研究では遺伝子変異の解析にとどまっていたが、本研究では遺伝子変異でヒストンがどのような修飾を受けているのかを解析する。培養細胞は別研究で用いたヒト腎細胞癌由来の以下の10 種類の培養細胞を用いる:ACHN、786-O、769-P、VMRC-RCW、Caki-1、OS-RC-2、RCC10RGB、UHR4TKB、TUHR10TKB、TUHR14TKB(Nagata M, Kume H, Int J Cancer, 2012)。これらの培養細胞よりDNA を抽出しクロマチン制御関連遺伝子のシークエンスを行う。次いでタンパクを抽出し、Western blot 法で定量的にヒストンのアミノ酸残基の修飾を測定する。抗体は市販されているヒストンの各々のアミノ酸残基においてメチル化やアセチル化、ユビキチン化した残基に対するものを用いる(メチル化についてはmonomethyl、dimethyl、trimethyl の抗体で検索する)。 ②培養細胞での遺伝子導入による増殖能の変化:培養細胞でクロマチン制御関連遺伝子を強制発現もしくはノックアウトし、増殖能の変化やヒストンの修飾の変化を調べる。同時にmicroarray を用いて遺伝子発現パターンの変化を調べ、クロマチン制御関連遺伝子の変異によりどのような変化が細胞内に起こっているのかを調べる。
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[Journal Article] TCEB1-mutated renal cell carcinoma: a distinct genomic and morphological subtype.2015
Author(s)
79.Hakimi AA, Tickoo SK, Jacobsen A, Sarungbam J, Sfakianos JP, Sato Y, Morikawa T, Kume H, Fukayama M, Homma Y, Chen YB, Sankin AI, Mano R, Coleman JA, Russo P, Ogawa S, Sander C, Hsieh JJ, Reuter VE
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Journal Title
Mod Pathol
Volume: 28
Pages: 845-853
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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