2014 Fiscal Year Research-status Report
手術時摘出卵巣から得られる各年代のヒト卵子と核移植術を用いた減数紡錘体機能解析
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26462473
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
熊谷 仁 秋田大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (60333936)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
寺田 幸弘 秋田大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (10260431)
宇都宮 裕貴 東北大学, 大学病院, 准教授 (10359507)
佐藤 直樹 秋田大学, 医学部, 講師 (40447199)
白澤 弘光 秋田大学, 医学部, 医員 (60598019)
椛嶋 克哉 秋田大学, 医学部, 技術系補佐員 (30615422)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 加齢 / 卵巣 / 卵子 / 紡錘体 / 核移植 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は、主な研究材料であるヒト卵子の確保技術の確立と電界撹拌技術を応用した卵子紡錘体の蛍光免疫染色法の経済的および時間的効率化に関する検討を行った。 ヒト卵子の確保は、月経周期を有する子宮体癌手術時摘出卵巣から未成熟卵子を採取し、体外成熟培養を行う必要がある。適応となる症例数は限られているため、当大学症例の他に共同研究を行っている東北大学産婦人科の子宮体癌症例を対象としている。しかし、秋田・仙台間250kmと遠方からの未成熟卵子輸送は体外成熟培養に悪影響を及ぼす懸念があり、未成熟卵子輸送方法を検討した。輸送症例では有意に体外成熟培養の成績が低下したが、輸送容器にセルポーターを用いて気相を安定させることで改善する可能性が示唆された。この結果は平成26年11月開催の第52回東北生殖医学会で報告し、現在、英文誌に投稿中である。 卵子紡錘体の免疫染色法をより経済的かつ迅速に行えるように、新技術である電解撹拌法の応用を検討した。マウス卵と上記子宮体癌摘出卵巣から体外成熟培養により得た卵子を用いて研究を行った。電解撹拌法を用いることにより、第一抗体である抗γ-tubulin抗体を従来法の200倍希釈より80倍希釈の16000倍希釈で染色可能であり、かつ、反応時間を1/12の5分間まで短縮できること、を明らかにした。加えて蛍光発色の減衰も抑制できた。この結果は平成27年4月開催のIFFS/JSRMで報告し、現在、英文誌に投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヒト卵子の確保は臨床症例数に左右されるが、平成26年度は順調に確保でき、懸念事項であった遠距離未成熟卵子輸送の問題も改善された。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究で、子宮体癌摘出卵巣から採取した未熟卵子を輸送を経ても、体外成熟培養により成熟卵子を得ることは確立した。 【1. 個体年齢によるヒト卵子紡錘体の形体の検討】得られた卵子をポロスコープにて観察し、紡錘体の大きさ(極間距離)、第一極体との位置関係、紡錘体の卵子内での位置(細胞膜と紡錘体極との距離と角度)などを計測した上で、年代別に比較検討する。 【2. 卵子紡錘体機能タンパクの発現の検討】 1.で生体観察したMⅠ、MII期卵子を固定し、免疫蛍光染色に供する。免疫蛍光染色で検討するタンパク群は①-tubulinなどの中心体機能タンパクとそれを制御する因子群、②キネトコアタンパク群、である。さらに、一部の卵子は染色体分離タンパクを標的とした固定法(Hodges. 2002)により処理し、染色体標本を作成する。それらにおける姉妹染色分体接着タンパクであるコヒーシンタンパク(Rec8など)とそれらを制御するタンパク(セパラーゼ、シュゴシンなど)の発現を検討する。それぞれのタンパクの発現度は、蛍光抗体法によるその強度の画像解析にて算出される。それらの発現度と採取個体年齢を比較検討し、染色体結合、分離に係る分子群の発現と個体年齢との関連を考察する。さらに、年齢別で明らかに発現度が異なるタンパクに関して、AmpliSpeed slide cyclerを用いて卵子1個あたりのmRNAを定量し、発現度が相違する裏付けをとる。 【3. ヒト卵子紡錘体機能における核-細胞質間相互作用の解析】本実験では、子宮体癌症例から採取される卵子を若齢群(30代以下)と高齢群(40代以上)に分ける。そして、高齢群の核を若齢群の細胞質に、この逆に、若齢群の核を高齢群の細胞質に相互に移植した再構築卵子を作成し、上記実験で明らかにする紡錘体の生体観察や、機能タンパク群の発現解析を行う。
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Causes of Carryover |
抗体等の購入予定だった試薬は、当研究室の在庫を使用できたため、予定より少額となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今後は、抗体購入と学会等に参加し、情報収集に利用する。
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