2014 Fiscal Year Research-status Report
バイオインフォマティクスアプローチによる頭頸部癌のシグナル伝達ネットワークの解明
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26462591
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
畠山 博充 北海道大学, 大学病院, 助教 (10455652)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
本間 明宏 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (30312359)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 頭頸部癌 / バイオインフォマティクス / シグナル伝達 |
Outline of Annual Research Achievements |
分子生物学の発展に伴い、新たな臨床的ブレイクスルーとして分子標的治療が注目され、各種癌においてその有効性が明らかとなってきた。頭頸部癌においては、すでに上皮成長因子受容体(Epidermal Growth Factor Receptor: EGFR)をターゲットとした治療が保険認可され、効果を上げている。しかしその治療効果には個人差があり、従来の抗腫瘍薬同様に治療当初は感受性を示すものの、徐々に耐性化する症例があることもわかってきた。肺癌においてはEGFRのmutationの有無が分子標的治療の感受性に関わることが報告されたが、頭頸部癌においてはこれらの遺伝子変化はまれであり、症例選択における重要な因子とはならないことが我々の研究から明らかになっている。 当研究者による網羅的トランスクリプトーム解析による多種類の頭頸部癌細胞株を用いた研究ではCetuximabに感受性を示す頭頸部癌細胞株はEGFRの発現が高く、de novoで耐性をもつ細胞株はEGFRパスウエイ以外のシグナル伝達機構にその増殖がよっていることが分かった(AACRなど学会発表)。 またCetuximabの効果についてはEGFRパスウエイのシグナル伝達スイッチとして働く、リガンドの発現によって感受性が異なることを突き止め、各種学会で発表している。 更には上皮間葉転換によって、同一腫瘍内でのheterogeneityが出現していることも同定している(Oncology Reports, 2014)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
臨床経過が明らかな100例程度の頭頸部癌臨床検体をサンプルとしてトランスクリプトームおよびプロテオーム解析により分子発現の数値化を行う。すでにリストアップされた各種増殖シグナル伝達に関連する当該分子群に層別化し、特定の遺伝子のピックアップ作業を行っている。癌遺伝子シグナル伝達は非常に複雑で、それぞれの分子のクロストークを判断するのは困難を極めている。 従来から頭頸部癌増殖に大きく関わるとされるEGFR signaling pathwayを中心としたネットワークを解析しているが、情報量が多いが近年の新しい解析ソフトの発展もあり、多数のネットワークの相互関係も含め複合的な解析を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
同定された分子はトランスフェクションもしくはノックダウンによりパスウエイの活性化・不活性化といったシグナル伝達への影響を検討し、さらにはシグナル伝達阻害剤に対する感受性の変化や、モノクローナル抗体を作成して新たな分子標的治療薬の開発を試みる。
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Causes of Carryover |
遺伝子解析のための物品費が他の研究で余ったものを流用することができるようになり、大幅に軽減された。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
得られている情報量が多く、これらの処理に必要なソフトウエアの購入に当てたい。 また今年度欧州耳鼻咽喉科頭頸部癌学会での発表の機会を得たので、その旅費、参加費にも充当する予定である。
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