2015 Fiscal Year Research-status Report
口腔扁平上皮癌における腫瘍関連マクロファージの誘導機構ならびに機能解析
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26462855
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Research Institution | Meikai University |
Principal Investigator |
廣井 美紀 明海大学, 歯学部, 講師 (30419717)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大森 喜弘 明海大学, 歯学部, 教授 (50194311)
小貫 裕之 明海大学, 歯学部, 助教 (50598258) [Withdrawn]
森 一将 明海大学, 歯学部, 講師 (80372902)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | マクロファージ / 腫瘍 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヘルパー1型T細胞(Th1)由来IFNγにより活性化されたM1マクロファージ(MΦ)は,一酸化窒素合成酵素、ケモカインCXCL9、CXCL10や炎症性サイトカイン TNFαなどの遺伝子発現を増強し、腫瘍細胞に対する細胞傷害性を示す。一方、Th2由来IL-4、IL-13により活性化されたM2 MΦは増殖因子や血管新生因子を発現し、またIL-10やTGF-βなどのサイトカインを産生することにより炎症反応、免疫応答を抑制し、創傷治癒に関与している。特にM2 MΦは腫瘍組織に浸潤しているMΦと類似した性質を持ち、免疫抑制的に働き、腫瘍の進展・増殖に関与すると考えられている。しかしながら、これまでに口腔癌に局在するMΦのphenotypeやその役割については明らかにされていない。我々は、前癌病変である白板症および口腔癌におけるMΦの局在について検討した結果、CD163陽性細胞の浸潤を認めた。また同時にこの部位にはTh1の浸潤をも認め、IFNγ誘導性遺伝子産物であるSTAT1がCD163陽性細胞と共局在している知見を得た。従来CD163はM2 MΦのマーカーとして考えられてきたが口腔前癌病変、口腔癌ではCD163陽性MΦはM1 MΦの性質を持つ可能性が考えられた。そこで本研究課題ではまず白板症、口腔癌局所におけるSTAT1陽性CD163陽性MΦの発生機序を探るため口腔粘膜上皮細胞の役割を検討し、次いで腫瘍細胞の増殖、進展における浸潤MΦやTh1などの免疫細胞の役割について解明することを目的とした。本年度は、正常口腔粘膜細胞株の作製を行なった。ヒト口腔粘膜由来ケラチノサイトにHPV E7およびテロメアの全長を有するレンチウィルウベクターを遺伝子導入後、Blasticidinにてセレクションし、いくつかのクローンを得た。現在、この正常口腔粘膜上皮細胞株のクローンの特徴の解析を行なっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本年度は正常口腔粘膜由来上皮細胞株(口腔粘膜由来ケラチノサイト)を作製するためのBlasticidinによるセレクションに時間がかかった。また、単一クローンを得るために限界希釈法を何度か行なったが、細胞の増殖がみられなかったため、単一クローンを得るための方策を模索するために時間がかかってしまった。得られた口腔粘膜細胞株の各クローンの特徴の解析とMΦとの共培養のシステムの構築が実施できなかったため達成度を遅れているとした。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に作製した正常口腔粘膜上皮細胞株の特徴を解析し、株化する前の正常口腔粘膜上皮細胞と違いがないか検討を行う。具体的には、口腔粘膜細胞株の各クローンに遺伝子導入したテロメアおよびHPV E7が発現しているか否かをウェスタンブロット法にて確認する。昨年度PMA刺激THP-1細胞がM1およびM2 MΦへと分化することが確認できたことから、株化正常粘膜上皮細胞または口腔扁平上皮癌細胞株(HSC-2, HSC-3, HSC-4, Ca9-22)とTHP-1細胞を共培養し、共培養を行なったTHP-1細胞にどのような表面抗原が発現しているかを抗CD68抗体, 抗CD163抗体, 抗CD80抗体および抗STAT1抗体を用いて染色し、共焦点レーザー顕微鏡にて解析を行なう。同時にTHP-1細胞の遺伝子発現についてはReal time PCR法にて解析する。また、口腔粘膜由来初代培養細胞を用いて同様の解析を行ない、不死化した細胞との違いについて検討する。この解析にてSTAT1陽性CD163陽性細胞が認められなかった場合は、腫瘍組織にはTh1細胞が浸潤してきていることから、Jurkat細胞をIFNγ刺激によりTh1細胞に分化させ、THP-1細胞と共培養を行ない、同様の解析を行なう。さらに、共培養したTHP-1細胞の遺伝子プロファイルを検討するためにReal time PCR法にて解析する。また作製した正常口腔粘膜上皮細胞株をIFNγにより前処理した後、THP-1細胞と共培養し同様にCD抗原の発現ならびに遺伝子発現について検討を行う。
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Causes of Carryover |
2015年度においては、正常口腔粘膜上皮細胞株の作製が主体であったが、単一クローンを得るために時間がかかってしまった。そのため、得られた単一クローンの特徴の解析、正常口腔粘膜上皮細胞株または口腔扁平上皮癌細胞株とMΦとの共培養システムの構築および共培養を行なったMΦの表面抗原の発現解析および遺伝子発現解析が実施できなかったため次年度使用額が生じてしまった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2015年度に行なう予定であった不死化した正常口腔粘膜上皮細胞株の各クローンの特徴をタンパク質および遺伝子発現解析により検討する。また、得られた正常口腔粘膜上皮細胞株、口腔扁平上皮癌細胞株または口腔粘膜由来初代培養細胞とTHP-1細胞との共培養システムの構築を行ない、THP-1細胞の表面抗原の発現を共焦点レーザー顕微鏡にて検討する。また、共培養後のTHP-1細胞の遺伝子プロファイルを検討するためにReal time PCR法にて解析する。
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Research Products
(1 results)