2015 Fiscal Year Research-status Report
脂質メディエーターによる間葉系幹細胞分化機構の解明と硬組織再生治療への臨床的展開
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26462886
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Research Institution | Fukuoka Dental College |
Principal Investigator |
松崎 英津子 福岡歯科大学, 歯学部, 講師 (20432924)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 富美 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (50274436)
西村 英紀 九州大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (80208222)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 脂質メディエーター / 間葉系幹細胞分化制御 / 骨芽細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、歯及び歯周組織に存在する多分化能を持つ幹細胞である歯根膜幹細胞・歯髄幹細胞の分化制御による新しい硬組織再生療法を見出すことである。幹細胞(MSC)の分化制御に関わるシグナル分子として、既存の増殖因子等ではなく、生体内に豊富に存在する脂質メディエーターであるスフィンゴシン-1-リン酸(S1P)に着目した。 平成27年度の研究実施計画は、前年度までに明らかとなったS1PによるMSCの骨芽細胞への分化促進作用(骨芽細胞分化マーカーALP, OCNの発現増加)に基づき、その分化機構の解明を明らかとすることであった。また、MSC細胞株のみならず、歯根膜幹細胞や歯髄幹細胞を用いて、S1Pが硬組織形成作用に及ぼす影響を検討することであった。 S1PはMSCの骨芽細胞誘導時に、骨組織の形成を制御するWntシグナル伝達経路のうち、beta-catenin非依存性経路のリガンドであるWnt5aタンパク質の分泌を増加させた。一方、beta-catenin依存性経路の協働受容体LRP5/6の遺伝子発現を増加させた。そこで、Wntシグナルの2つの経路のクロストークについて、Wnt5a中和抗体を用いて検討したところ、S1PによるLRP5/6発現増加作用は、中和抗体により抑制され、S!Pによる骨芽細胞分化促進作用にWnt5aが関与することが示唆された。この成果をもとに、歯根膜細胞や歯髄幹細胞においても、S1PがWnt5aを介した同様の作用を発揮するかどうかを検討する。 また、in vivoにおけるS1Pの骨組織・硬組織形成作用についても明らかにするため、S1P受容体特異的作動薬・阻害薬を用い、S1Pシグナルの機能解析として、マウス骨組織の挙動や生体内におけるS1Pシグナル伝達経路の関与について検討を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
S1Pによる未分化間葉系幹細胞の骨芽細胞への分化促進作用機序の解明について、作用点の解析が当初の予定よりもやや遅れた。 また、in vivoにおけるS1Pの作用については、どのS1P受容体を介した作用なのかを明らかにする必要性があり、現在、まず骨組織における機能解析を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
in vivoの実験においては、S1P受容体特異的作動薬・阻害薬を使用して作用点を明らかにする必要性があるため、引き続き精力的に解析を行う。上記解析後に、歯髄組織、根尖部歯周組織における硬組織形成作用についても検討を進める。
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Causes of Carryover |
当初の計画よりも研究進捗状況がやや遅れているため、試薬や動物等に関わる使用額が少なかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度まで引き続き研究を行うため、それに使用する。
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