2015 Fiscal Year Research-status Report
造影剤リゾビストを用いた温熱療法とセツキシマブ併用による口腔癌治療の開発
Project/Area Number |
26463053
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
小泉 敏之 横浜市立大学, 附属病院, 講師 (80323575)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
來生 知 横浜市立大学, 医学部, 准教授 (30545059)
藤内 祝 横浜市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (50172127)
光藤 健司 横浜市立大学, 医学部, 准教授 (70303641)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 口腔癌 / 温熱療法 / 分子標的薬 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、磁性体ナノ粒子(臨床用造影剤:リゾビスト)を用いた顎、口腔への応用を可能とする新たな温熱療法の開発および温熱刺激でのEGFR発現誘導による、セツキシマブの抗腫瘍効果増強の可能性について検討することで、口腔癌の新たな治療法の確立を目指すものである。平成26年度は、ヒト由来扁平上皮癌細胞に対して加温刺激で抗腫瘍効果が発揮されることを確認した。また、リゾビストの交流磁場下での温熱条件の検討を行った。平成27年度は、温熱刺激によりヒト由来扁平上皮癌細胞でのEGFR発現誘導を確認した。このEGFR発現によって、温熱単独に比べてセツキシマブを併用することで抗腫瘍効果の増強を認めた。リゾビスト温熱加温においてその後の温熱活性が誘導されるかは明らかになっていない。今後の温熱加温によって起因される免疫活性を検討しEGFR発現誘導における作用機序の足掛かりとする。ヒト由来扁平上皮癌細胞株を調整し、培養用インキュベーターで42.5℃に加温刺激を行う。刺激後、温熱加温によって誘導される可能性のあるHSPファミリー、EGFR、EGFRのリン酸化、MAPK,MAPKのリン酸化の発現をWestern blotting評価した。来年度は、これまでに得られた結果を元にして、セツキシマブに抵抗性を示すヒト由来扁平上皮癌細胞を移植したマウスモデルを作成する。リゾビストを腫瘍部に局所投与し交流磁場下で発熱させる。セツキシマブの標的とするEGFRの発現を誘導させた後、セツキシマブ併用による抗腫瘍効果の増強を検討する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね計画通りの進捗である。われわれは、ヒト由来扁平上皮癌細胞に対して加温刺激で抗腫瘍効果が発揮されることを確認している。また、交流磁場下でリゾビストが温度上昇すること、加温刺激でヒト由来扁平上皮癌細胞においてEGFRが高発現することをこれまでに示してきた。平成27年度は、ヒト由来扁平上皮癌細胞に対して、交流磁場下でのリゾビストによる抗腫瘍効果と温熱加温によるEGFRの発現に関して検討を行った。温熱加温によるEGFRの発現に関しては、HSPファミリーの免疫活性が関与していることが示唆されている。そこで、温熱することで発現するタンパクを解明することでより効率的にEGFRを誘導することが可能と考える。インキュベーターにより温熱加温を行った細胞でEGFRの発現が上昇することはWestern blotting法で確認が出来ている。しかし、リゾビスト温熱加温においてその後の温熱活性が誘導されるかは明らかになっていない。今後の温熱加温によって起因される免疫活性を検討しEGFR発現誘導における作用機序の足掛かりとする。ヒト由来扁平上皮癌細胞株を調整し、培養用インキュベーターで42.5℃に加温刺激を行う。刺激後、温熱加温によって誘導される可能性のあるHSPファミリー、EGFR、EGFRのリン酸化、MAPK,MAPKのリン酸化の発現をWestern blotting評価を行った。温熱刺激によって、HSP70、MAPKのリン酸化、EGFRのリン酸化は高発現を認めていた。この結果は、EGFR発現のメカニズム解明の足掛かりとなる。これまでに得られた結果を元にして、平成28年度は、動物実験を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度までに得られた結果を元にして、ヒト由来扁平上皮癌細胞を移植したマウスモデルに対して、リゾビストによる温熱効果と分子標的薬セツキシマブによる抗腫瘍効果の増強を検討する。リゾビストを腫瘍部に局所投与し交流磁場下で発熱させる。セツキシマブの標的とするEGFRの発現を誘導させた後、セツキシマブ併用による抗腫瘍効果の増強を検討する。ヒト由来扁平上皮癌細胞をイソフルラン吸入下にてヌードマウスの両側大腿部に移植し腫瘍直径が10mmになった時点で投与を開始する。腫瘍局所に濃度を変えたリゾビストを投与する。ヌードマウスの腫瘍部が42.5℃に安定となるように交流磁場の電流、電圧を調整する。また、コイルの直径も決定する。治療群を以下のグループに分ける(各群10匹)。群わけは、①コントロール群(リゾビスト・セツキシマブ投与なし) ②リゾビストを左大腿に局所投与のみ群 ③セツキシマブを静脈投与のみ群 ④リゾビスト投与後、交流磁場にて磁場印加群 ⑤リゾビスト・セツキシマブの投与群 ⑥リゾビスト投与し交流磁場にて磁場印加した後、セツキシマブの静脈投与群とする。 腫瘍が直径10mmを超えた時点で実験を開始する。④群と⑥群は腫瘍部を含め装置(コイル30mm)内に入れ、磁場印加を30分間行い、加温する。同様の過程を週2回、3週間行う。抗腫瘍効果の評価は、治療開始後から連日腫瘍を写真撮影にて記録するとともに腫瘍サイズから腫瘍体積 [体積=0.5×(長径×幅径2)]を毎日計測する。また、投薬開始後3週間目に腫瘍組織を摘出し、病理学的解析を行う。具体的には、腫瘍摘出後、半割した腫瘍内部を記録し(写真撮影)、腫瘍組織のパラフィン切片を作製し、H-E染色を行い、腫瘍組織観察を行う。免疫賦活によって転移性癌を制御している評価として免疫染色しHSP70の腫瘍内局在を調べる予定である。
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Causes of Carryover |
ヒト由来扁平上皮癌細胞に対して加温刺激で抗腫瘍効果が発揮されることを確認している。また、交流磁場下でリゾビストが温度上昇すること、加温刺激でヒト由来扁平上皮癌細胞においてEGFRが高発現することをこれまでに示してきた。平成27年度は、ヒト由来扁平上皮癌細胞に対して、交流磁場下でのリゾビストによる抗腫瘍効果と温熱加温によるEGFRの発現に関して検討を行った。これらは事前に確認していたことを一部応用可能であり、また理論的に期待した結果を得ることができたものが多かったため支出を一部押さえることが可能であった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
至適条件の設定については次年度においても引き続き検討が必要であり、また一部においては設定を詰め切れていないものもある。そのため、次年度使用額が生じているものの、これは研究遂行にとって必要なものである。これまでに得られた結果を元にして、セツキシマブに抵抗性を示すヒト由来扁平上皮癌細胞を移植したマウスモデルを作成する。リゾビストを腫瘍部に局所投与し交流磁場下で発熱させる。セツキシマブの標的とするEGFRの発現を誘導させた後、セツキシマブ併用による抗腫瘍効果の増強を検討する予定である。
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Research Products
(4 results)