2014 Fiscal Year Research-status Report
矯正的歯の移動速度に対するHSPA1Aの影響の解明
Project/Area Number |
26463102
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Research Institution | Tsurumi University |
Principal Investigator |
新井 千博 鶴見大学, 歯学部, 助教 (10460221)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 芳樹 鶴見大学, 歯学部, 教授 (10097321)
花田 信弘 鶴見大学, 歯学部, 教授 (70180916)
野村 義明 鶴見大学, 歯学部, 准教授 (90350587)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 歯科矯正学 / HSPA1A |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度の研究は、①HSPA1Aの歯根膜線維芽細胞に対する影響(in vitro)を検討すること、②HSPA1Aの機能抑制を行った際の矯正的歯の移動の条件検討(in vivo)を行うことであった。 ①ヒト歯根膜線維芽細胞を10%FBS含有の培養液(DMEM)で培養し、HSPA1Aのリコンビナントタンパク(hrHSPA1A)を添加したところ、3時間後に濃度依存的にIL6,IL8 mRNAの発現が誘導された。一方、RANKL,CSF1, TNFα,IL1βの発現に変化は認められなかった。さらにELISAより、IL6とIL8は24時間後にタンパクレベルでも増加することが明らかになった。次に、この発現機序を分子レベルで明らかにするため、歯根膜線維芽細胞の細胞膜に存在するToll様受容体4の下流のシグナル分子であるNFκB p65のリン酸化をウエスタンブロットにより解析したところ、hrHSPA1A添加後15分で著しく亢進する所見が得られた。そこで、Toll様受容体4の選択的阻害剤であるTAK-242を添加し、同様の解析を行ったところ、NFκB p65のリン酸化は抑制され、IL6およびIL8の発現がmRNAおよびタンパクレベルで抑制された。以上の結果から、HSPA1Aは歯根膜線維芽細胞の膜上に存在するToll様受容体4に作用し、NFκB p65のリン酸化を介してIL6およびIL8の発現を誘導する可能性が示唆された。 ②In vivoの検討は平成27年7月より開始予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
In vitroの研究について、本年度の研究ではHSPA1Aの機能抑制因子であるPifthrin-μの添加を行い、歯根膜線維芽細胞が発現する破骨細胞分化調整因子へのHSPA1Aの影響について、mRNAおよびタンパクレベルで検討する予定であった。その後の検討において、Pifthrin-μではなく、Toll様受容体4の選択的阻害剤であるTAK-242を用い、その影響を検討し、HSPA1Aが歯根膜線維芽細胞の膜上に存在するToll様受容体4に作用し、NFκB p65のリン酸化を介してIL6およびIL8の発現を誘導することを明らかにした。以上のことから、実験内容に一部変更はあったものの、in vitroの研究ではほぼ当初の予定を達成することができた。In vivoの研究は、当初の予定より開始が遅れているが、方法や手技についてはすでに確立されているため、倫理審査委員会の決定をもって開始する段階である。
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Strategy for Future Research Activity |
1.In vitroの研究:培養ヒト歯根膜線維芽細胞にHSPA1Aのリコンビナントタンパク(hrHSPA1A)を添加し、24時間後に培養上清を回収する。培養を行ったヒト骨芽細胞に培養上清を添加し、RANKLやM-CSFなどの破骨細胞の発現や分化に関与する因子への影響をmRNAおよびタンパクレベルで検討する。 2.In vivoの研究:①強い矯正力の圧迫側歯根膜に対するHSPA1Aの影響の解明:実験動物はWistar系雄性ラットを使用。対照群と実験群(Pifthrin-μ投与)に分け、上顎第一臼歯を過度な矯正力(50g)で移動し、3,7,14および21日後の圧迫側歯根膜の状態および歯根吸収の状態について組織学的観察を行う。また、TRAP染色により同部位に発現する破骨細胞の観察を行う。②適切な矯正力の歯の移動速度に対するHSPA1Aの影響の解明:実験動物はWistar系雄性ラットを使用。対照群と実験群(HSPA1A機能抑制薬添加)に分け、上顎第一臼歯を弱い矯正力(50g)で移動し、1,2,3週の歯の移動距離を計測。またその際の組織学的な形態観察を行う。
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