2014 Fiscal Year Research-status Report
哺乳期の呼吸と嚥下機能調節におけるエピジェネティック制御因子の関与
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26463120
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
白川 哲夫 日本大学, 歯学部, 教授 (00187527)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
浅野 正岳 日本大学, 歯学部, 准教授 (10231896)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | レット症候群 / McCP2 / 呼吸ニューロン / ヒストンアセチル化 / バルプロ酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
メチル化CpG結合タンパク質2 (MeCP2)が欠損している雄ノックアウトマウス(Mecp2-/y)について,生後2週において,延髄腹側呼吸ニューロン群でのグルタミン酸脱炭酸酵素1(Gad1)近位プロモーター領域のCpGメチル化レベルを調べたところ,Mecp2-/yでは野生型母より生まれた仔マウス(wild)に比べ高メチル化状態にあることが明らかになった。 これまでのわれわれの研究で,2週齢のマウスの延髄腹側呼吸群でのGad1 mRNA発現がバルプロ酸の腹腔内投与により増加していたことから,バルプロ酸が延髄腹側呼吸ニューロン群でのコアヒストンのアセチル化を促進し,その結果としてGad1 mRNA発現を上昇させた可能性が考えられた。そこでバルプロ酸がH3K9,H3K14,H4K5,H4K8のアセチル化に及ぼす影響について,2週齢マウスの脳組織切片を試料として免疫蛍光染色によって検討した。 Mecp2-/yではコントロール(生理食塩水投与群)に比べ,バルプロ酸投与群で延髄腹側呼吸ニューロン群でのH3K9,H4K5のアセチル化レベルの有意な上昇が認められた(p<0.01)。それに対し,H3K14とH4K8ではアセチル化レベルに変化が認められず,wildではいずれのアセチル化部位においても有意な変化がみられなかった。以上より,Mecp2-/yの呼吸異常に,延髄腹側呼吸ニューロン群でのGad1プロモーターのCpGメチル化ならびに同領域のヒストンアセチル化が関与していること,またヒストンアセチル化を促進する薬物の投与によって,Mecp2-/yの呼吸異常を改善できる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
延髄腹側呼吸ニューロン群でのグルタミン酸脱炭酸酵素1(Gad1)近位プロモーター領域のCpGメチル化レベルの測定には,脳組織から抽出したDNAについてバイサルファイトシークエンス法によるメチル化部位の同定が必要であるが,前年度までに実施していた研究課題において同様の研究手法を確立していたことから,技術的な問題が解決できていたことが結果に結びついたと考えられる。 一方,26年度に計画していたパイロシークエンス法によるCpGメチル化レベルの測定については,解析装置が高価であることから購入は困難で,他施設において使用許可が得られる見通しが現在のところないため,実施時期が先送りになっている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は,Mecp2-/yならびにwildマウスの延髄腹側呼吸ニューロン群についてGad1近位プロモーター領域のCpGメチル化レベルを測定したが,呼吸調節にかかわる延髄の神経核として孤束核も重要であることから,平成27年度は当初の計画に準じて孤束核についてもGABA作動性ニューロンでのGad1近位プロモーター領域のCpGメチル化レベルを検討する計画である。また慢性電極埋込み型筋電図測定装置(ピナクルテクノロジー社:現有設備)を用いて,生後5週以降のwildおよびMecp2-/yについて,顎舌骨筋と横隔膜からの筋電図の同時測定を行う予定である。
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Causes of Carryover |
本研究は平成23-25年度に基盤研究Cとして実施した研究を発展させる内容になっている。平成23-25年度に実施した研究において研究手法を確立するために使用した試薬類の購入費用を参考に平成26年度の試薬類購入の予算を決めたが,平成26年度に実施した研究については手法の大半が確立されていたことから試行錯誤する箇所が少なく購入する試薬が予定より少なく済んだため,結果として予算を27年度に残すことになった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度は,26年度に実施したマウス脳組織から抽出したDNAのメチル化解析に加え,新たに電気生理学的実験として電極類を新規購入する予定である。研究結果の信頼度を高めるため,使用するマウスの数を多くすればするほど,マウスならびに電極の購入費用が必要となることから,平成27年度に計画している実験については「次年度使用額」を当初の予算に加えた金額を消耗品購入に充てて研究を実施する予定である。
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