2016 Fiscal Year Research-status Report
糖尿病患者のエンパワーメント実践を評価するシステムの構築
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26463333
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Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
原 頼子 久留米大学, 医学部, 教授 (60289501)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | エンパワーメント / 自己管理 / 療養指導 |
Outline of Annual Research Achievements |
糖尿病患者が316万人を超え(2016年厚労省)、長期的な血糖コントロールの不良から、合併症を併発し、糖尿病性腎症により、透析導入となる患者が増えている。そのような現状にあって、糖尿病患者のエンパワーメントは、Andersonらが提唱し、患者が自らの療養上の問題に気づき、解決に必要なことを計画的に実施し、継続的に血糖値の自己コントロール感を持ちながら療養行動がとれることにつながり、QOLを重要視した考え方である。また、そのアプローチには医療者と患者の信頼関係の構築が基盤となる。 本研究の目的は、我々が開発した糖尿病患者用簡易QOL調査票を使用し、早期に患者が抱えている問題に気づき、患者と共に解決に向けた具体策を立案し、患者が自己管理していくことを支援するエンパワーメント実践を行い評価することである。 平成27年度は糖尿病患者用簡易QOL調査票の信頼性を検証するため、九州内の施設において調査を実施した。平成28年度は糖尿病患者用簡易版QOL評価表の実用化を図り、血糖コントロールに問題を抱える患者のスクリーニングに使用し、療養指導士がエンパワーメントアプローチを実施し、糖尿病エンパワーメントスケールを使用し、前後の得点を比較することでプログラムの評価を行うことを目的とした。患者のエンパワーメントには、信頼関係が構築された医療者が実施する療養指導が効果的であると考え、エンパワーメントアプローチを実施するファシリテーターに必要な対人援助スキルアップセミナーの実施を計画した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度は、糖尿病専門医の外来受診中の患者を対象に、糖尿病患者用簡易版QOL調査票と、糖尿病エンパワーメントスケールの信頼性検証と平行して、患者の療養指導へのエンパワーメントアプローチが実施できるファシリテーター養成のための対人援助スキルアップセミナーを実施した。 実施結果より糖尿病患者用簡易版QOL調査票は高い信頼性(再テストによるスピアマン相関係数r=0.36(p=0.03)~r=0.92(p<0.0001)、信頼性α=0.84)を示し、実用化できると考える。また、糖尿病エンパワーメントスケールは翻訳・逆翻訳し、より日本人に理解しやすいように文言を調整し、対象者へのアンケートを実施する準備を進めている。 エンパワーメントアプローチが実施できるファシリテーターのための療養指導スキルアップセミナーは、コ・メディカルスタッフ5名(管理栄養士、看護師、療養指導歴7年以上、男性1名、女性4名) を対象に1ヶ月に1回、5回シリーズで実施した。内容は、メンバー間の信頼関係を築き、患者体験ロールプレイを通し、患者理解を深め「話を聴いて、返すこと」ができること、共感しながら解決策を探り、効果的なフィードバックの方法を身につけることができること等で、体験後には振り返りとディスカッションを行った。セミナーを受講した療養指導士は、エンパワーメントに影響するスキルとして、〔患者理解の重要性〕は、「まるごと受け入れる」「感情を明らかにする」「一緒に目標を設定する」「共に実践する」「スキルアップをめざす」が必要だと感じていた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、糖尿病患者のエンパワーメントが血糖コントロールを良好にし、合併症を防ぎ、QOLの向上につながることを検証することである。そこで、スキルアップセミナーを終了した療養指導士による糖尿病患者へのエンパワーメントアプローチ実施により、患者が血糖コントロールを困難にしている問題に気づき、解決策が立案でき、自己コントロール感を持てるように、患者と一緒に共感したことをアイディア化し、解決策を探る行動変容を盛り込んだセッション企画・実践・評価を実施する療養指導が大切である。そのためのシステム作りと評価について研究を進める必要がある。
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Causes of Carryover |
開発した調査票の精選化と、糖尿病患者用エンパワーメントスケールの実用化に向けた調査を多施設で行うための交通費や、協力者への謝品を購入する必要がある。患者へのエンパワーメントアプローチを実施するための費用(交通費等)と、開催のための費用が必要となる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
調査のための交通費、協力者への謝品代。 患者へのエンパワーメントアプローチセッションの会場費、通ってもらう患者への交通費、開催日程を知らせる通知の印刷費、療養指導を行うコ・メディカルスタッフの情報交換会のための準備資料費。
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