2015 Fiscal Year Research-status Report
遺伝性腫瘍発症予防に貢献するための情報提供による効果的な医療者間連携の構築
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26463341
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
笠城 典子 鳥取大学, 医学部, 准教授 (60185741)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
難波 栄二 鳥取大学, 生命機能研究支援センター, 教授 (40237631)
鈴木 康江 鳥取大学, 医学部, 教授 (10346348)
金子 周平 鳥取大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (10529431) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 遺伝カウンセリング / 遺伝性疾患 / 気分プロフィール検査 / 認識調査 / 医療者間連携 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、鳥取大学医学部附属病院遺伝子診療科を初めて来談したクライエント、同伴者の遺伝性腫瘍の認識、理解、心の動き等に着目して遺伝カウンセリングが与える影響を明らかにし、遺伝性疾患に関する医療者の認識等を調査し、患者・家族の要望を反映させた、情報提供による効果的な医療者間連携を構築することを目的としている。 本年度は、研究協力が得られたクライエント・同伴者7人に対し、受診のきっかけ、「遺伝カウンセリング」の認知、遺伝カウンセリングで提供された情報の理解、満足度さらに情報、気持ちの整理等についてのアンケート調査を行い、気分・感情の変化の測定(日本版POMS;Profile of Mood States)を実施した。クライエントの多くは「遺伝カウンセリング」について知らずに、主治医に紹介されて来談し、患者や自分自身についての相談だけでなく、こどもへの影響について心配、不安を抱いていた。臨床遺伝専門医らによる遺伝、疾患、遺伝学的検査等の情報提供、説明の理解、期待したものだったかについては個人差があったが、情報や気持ちの整理は大体できており、満足感があり、役に立つと思っていた。一方、遺伝カウンセリングについては、家族に尋ねられれば伝えると回答した人が最も多かった。気分・感情の変化では、遺伝カウンセリングの前より後の方が、不安、抑うつ、怒り、活気、疲労、混乱で低下傾向にあった。したがって、遺伝カウンセリングにより説明の理解には差があるが、情報や気持ちの整理ができ、不安等の軽減につながり、有意義な時間になっていることが考えられる。研究協力が得られた対象者の背景、相談内容も様々であり、遺伝性腫瘍に関連した相談は1人であった。種々の目的で来談したクライエントについて調査を実施し、症例を重ねていくことが、遺伝性腫瘍を含む患者・家族の要望を反映した医療者間連携の構築には重要であると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1.遺伝性腫瘍に関する遺伝カウンセリングを初めて受診するクライエントの来談が少なく、また、種々の目的で初めて来談したクライエントの協力が得られない場合があったため、調査等が進まなかった。 2.遺伝学的検査を実施し対象者がいたが、クライエントの事情で検査後の面接が実施できなかったため、血縁者への対応、検査に対する思い、医療者への期待について調査できなかった。 3.山陰地域における医師・看護職を対象とした遺伝医療の必要性や対応等のアンケート調査について現在準備中であり、今後実施予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
当科の遺伝カウンセリング枠が増える予定であるので、今後も以下のことを実施していく。当科を初めて受診するクライエント・同伴者で、遺伝性腫瘍を含む遺伝性疾患に関する相談等を目的に初めて遺伝カウンセリングを受ける人を対象に研究協力を依頼する。 ①研究協力が得られたクライエント等を対象に遺伝カウンセリング前後で、日本版POMS短縮版を用いて気分・感情の変化を見る。②初診時クライエントの遺伝カウンセリングの認識、準備状況等を質問紙調査する。③クライエントに対して情報収集(来談までの経過、目的、家系図作成、思い、医療者からの説明等)後、通常の遺伝カウンセリングを実施する。④初診時遺伝カウンセリング後、疾患および遺伝カウンセリングの理解、思い、満足感などを質問紙調査する。⑤遺伝学的検査・診断を実施したクライエントに対し、血縁者への対応、検査実施に関する思いおよび医療者への期待について調査する。⑥遺伝カウンセリング来談者に対する気分・感情の変化および情報収集、質問紙調査等の結果を分析する。⑦山陰地域で協力が得られた総合病院に常勤する医師および看護師を対象に、遺伝医療に関する認識・理解、日常診療および活動における遺伝医療の必要性や対応の実際、遺伝性腫瘍を含む遺伝性疾患、遺伝カウンセリングに対する認識および他科紹介の対応について質問紙調査を行う。調査は鳥取大学医学部倫理審査委員会承認後、実施する。⑧山陰地域の医師および看護師を対象とした質問紙調査結果の分析を行う。⑨得られた結果を基に、遺伝性腫瘍における医療者間連携に重点を置いた遺伝医療モデルを作成する。⑩遺伝医療モデルの作成を含む研究成果をとりまとめ、成果の発表を行う。
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Causes of Carryover |
平成27年度に鳥取大学医学部附属病院遺伝子診療科を初めて来談し、研究協力が得られたクライエント・同伴者に対しアンケート調査を行い、気分・感情の変化の測定(日本版POMS)を実施した。ただし、遺伝性腫瘍に関する相談の来談者が少なく、それ以外の目的で来談したクライエントについても研究協力が難しかった。さらに、遺伝学的検査・診断を実施した対象者へ血縁者への対応、遺伝学検査実施に関する思いおよび医療者への期待について調査する計画であったが、半構造化面接がクライエントの都合で実施できなかった。また、山陰地域で協力が得られた総合病院に常勤する医師および看護師を対象に、遺伝医療に関する認識・理解、日常診療および活動における遺伝医療の必要性や対応の実際、遺伝性腫瘍を含む遺伝性疾患、遺伝カウンセリングに対する認識および他科紹介の対応について質問紙調査を行う予定であったが、準備中で実施できなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
1.平成28年度も当科を初めて来談し、研究協力が得られたクライエント・同伴者に対し、受診のきっかけ、「遺伝カウンセリング」の認知、遺伝カウンセリングで提供された情報の理解、満足度さらに情報、気持ちの整理等についてのアンケート調査を行い、気分・感情の変化の測定(日本版POMS)を実施する。さらに、遺伝学的検査・診断を実施した対象者へ血縁者への対応、遺伝学検査実施に関する思い、医療者への期待について半構造化面接を実施する。 2.山陰地域で協力が得られた総合病院に常勤する医師および看護師を対象に、遺伝医療に関する認識・理解、日常診療および活動における遺伝医療の必要性や対応の実際、遺伝性腫瘍を含む遺伝性疾患、遺伝カウンセリングに対する認識および他科紹介の対応について質問紙調査を準備でき次第、鳥取大学医学部倫理審査委員会へ審査申請し、承認後ただちに実施する。
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