2014 Fiscal Year Research-status Report
緩和ケア病棟に入院するがん末期認知症患者の実態と、症状マネジメントの特徴
Project/Area Number |
26463354
|
Research Institution | Kyoritsu Women's University |
Principal Investigator |
北川 公子 共立女子大学, 看護学部, 教授 (30224950)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 認知症患者 / 緩和ケア病棟 / 苦痛症状 / エンドオブライフケア |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、緩和ケア病棟における認知症患者の概要を把握する目的で、文献検討及び緩和ケア病棟・緩和ケア病床2箇所でのインタビューを行った。その結果、以下の点が明らかになった。 1.2011年10月の医療施設調査で把握されている緩和ケア病棟を有する病院の数は279施設、病床数は5,122であった。各種の実態調査報告を検索し、入院患者の動向の把握を試みたが、病棟の設置形態や年数、スタッフ配置、在院日数等以外のデータは乏しく、認知症患者に関する全国的な動向は把握できなかった。その他、認知症患者の緩和ケアに関する先行研究は、事例報告やアドバンスケアプランニングに関するものが主であった。 2.認知症患者の死亡に関する疫学調査(3文献)では、悪性新生物が直接死因であった割合は、11.4%(療養病床や老人ホーム等)、1.8%(精神病院)、アルツハイマー病19.0%に対して血管性認知症7.9%(病院)など、対象施設や認知症の種類によって違いがみられた。しかし、認知症とがん疾患の合併が1割以上程度あることも予測された。 3.以上から、認知症+がん疾患によって亡くなる患者はいるが、その量的な実態は明らかにされていない。そこで山陰地方の緩和ケア病棟1施設、診療報酬の適用を受けず緩和ケア機能をもつ病床として運用している甲信越地方の1施設で看護師へのインタビューを行った。その結果、前者では、静穏環境の保持が困難な行動・心理症状(BPSD)を有する場合以外、極力、受け入れていること、表情などから苦痛症状の観察は可能であることが話された。後者では、認知症も含め、がん以外の疾患でも終末期の緩和ケアを提供する意図、及び地方小規模病院では緩和ケア病棟の承認を得る医療スタッフをそろえることが難しい現状からこのような運用方式なったことが話された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究者自身による緩和ケア病棟での研修は行えなかったが、その代替措置といして、緩和ケア病棟等で働く看護師を対象とした研修会に2回、参加することで、緩和ケアを必要とする認知症患者への対応に関して、緩和ケア・緩和医療従事者の側からも関心をもたれていることがわかった。 また、スタッフへのインタンビューを行った緩和ケア病棟では、家族と言葉を交わす機会も得られた。近年は緩和ケア病棟での入院期間が短縮傾向にあり、いったん症状の緩和を得て退院する場合もあるという。しかし、家族の側からすると、入院したまま最期まで居させてほしいというニーズが強く、緩和ケア病棟においても高齢患者の入院に対する家族ニーズと類似した課題があることが推察された。 このように家族側からの情報も入手できており、おおむね順調に進行していると判断できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
全国の緩和ケア病棟を対象に質問紙調査を実施する。質問紙調査は、①ユニット票、②看護師票、③患者家族票の3種類とする。 ①ユニット票:緩和ケア病棟に1部とし、実態調査として行う。主な内容は、病床数、スタッフの種類と人数、回答時点における入院患者数とそのうちの認知症患者の数、認知症患者の性別・年齢・認知症の診断・認知症の程度、認知症患者の受け入れに対する病棟の考え等で構成する ②看護師票:回答者は緩和ケア病棟に働く常勤の看護師とする。主な内容は、認知症患者に対する看護上の困難と工夫、苦痛症状を把握するための困難と工夫、及び苦痛症状への対応、入退院における困難と工夫等で構成する。 ③患者家族票:調査期間に入院中の認知症患者の家族のうち、協力の得られた者とする。主な内容は、認知症およびがんの発症から現在までの大まかな経過、緩和ケア病棟に入院する際の不安や困難、今後への不安等で構成する。 本調査は、研究者の所属機関の倫理審査を受けた後、実施する。
|
Causes of Carryover |
当初、予定していた研究者による研修を実行できなかったため、旅費に残額が生じている。しかし、代替の処置として、現場実践家を対象とした研修会への参加等を通して、当初、予定していた情報収集はおおむねできている。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成26年度に生じた旅費の残額は、調査票のプレテストに出向く際の旅費として執行する予定である。
|