2014 Fiscal Year Research-status Report
がん医療におけるコミュニケーション教育プログラムの開発と評価
Project/Area Number |
26463357
|
Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
金子 眞理子 東京女子医科大学, 看護学部, 准教授 (50318151)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小川 朝生 独立行政法人国立がん研究センター, その他部局等, その他 (10466196)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | サイコオンコロジー / コミュニケーション / 精神心理 / 倫理 / 意思決定支援 / がん医療 / リエゾン精神看護 / 教育プログラム |
Outline of Annual Research Achievements |
Ⅰ.背景と目的:がん医療において、適切な情報提供や精神心理面のケアは患者のQOLを支えるうえで重要である。がん患者指導管理の導入に伴い、看護師のコミュニケーションスキルや精神心理面のアセスメントや対応が期待されている。しかし、これらの現任教育は十分とは言えない現状にある。本研究の目的は、精神心理面のアセスメント、意思決定支援を含むがん医療におけるコミュニケーション教育プログラムと手引きを開発する事である。 Ⅱ.方法:2014年11月、782名の看護師を対象に、精神状態のアセスメントと対応・多職種連携、意思決定支援に関する知識・対応・連携、コミュニケーションの知識・技術、看護師自身のストレスマネジメントに関するインターネット調査を行った。 Ⅲ.結果と考察:有効回答は540(回収率69.1%)、90.6%が女性であった。年齢は22歳~63歳,平均年齢37歳、平均看護経験年数は7.3年であった。がん患者の精神状態のアセスメントについて十分な知識をもっているかについての調査では、適応障害について59.6%、自殺念慮について58.9%、抑うつについて57.8%、せん妄について52.6%が4段階のリッカートスケールのうち、<あまりそう思わない>と回答した。精神面の介入において、専門家との連携が必要な判断ができるかについて、もっとも多かった回答は<あまりそう思わない>で52.8%であった。がん患者の意思決定支援における十分な知識と働きかけができるかどうかについても半数以上が<あまりそう思わない>と回答した。一方、コミュニケーション技術を十分にもっているかについては、51.1%が<ややそう思う>と回答した。これらの結果から、がん医療におけるコミュニケーションで必要な専門性は何か、精神症状のアセスメントや対応、連携に関する教育内容を整備し、精神心理面のケアの質の向上に向けた検討が必要である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
26年度の計画は、がん医療におけるコミュニケーションの現状と課題を検討するためインターネットによるアンケート調査、がん看護専門看護師らを対象に、がん医療におけるコミュニケーションおよびがん患者指導管理の現状と課題についてインタビューを行うことであった。 26年度は、看護師782名を対象としたインターネット調査を行い、がん看護における精神心理面のアセスメントの現状及び課題を抽出することができた。その結果、精神心理面のアセスメントについては十分でないことが明らかとなり、教育プログラムの内容が抽出された。 さらに、がん看護専門看護師2名・精神看護専門看護師1名を対象としたフォーカスグループインタビューでは、病棟で中堅となる看護師に対する精神心理面のアセスメントに関する現任教育や患者、医療者間のコミュニケーションが十分でないことが示唆され、教育プログラムの内容や方法について基盤となる重要なデータが抽出できた。
|
Strategy for Future Research Activity |
27年度は,がん医療に携わる看護師50名を対象に、精神心理面のアセスメントおよび意思決定支援を含むコミュニケーションのあり方に関する教育プログラムを実施する。 教育プログラムの内容は、①精神面のアセスメント(適応障害・抑うつ・せん妄)と多職種連携②心理面のアセスメント(危機的状況の理解と看護モデル・不安)と多職種連携③倫理的葛藤がある事例における意志決定支援と倫理調整④アサーショントレーニング⑤看護師自身のストレスマネジメントの知識と対処⑥精神状態と心理面のアセスメントを意図したロールプレイ⑦倫理調整におけるスタッフ間のコミュニケーションでアサーションを用いたロールプレイ⑧リラクセーション演習を予定している。 既に倫理審査委員会には承認されている。
|
Causes of Carryover |
今年度は、調査後のデータや分析等で人件費を予定していたが、インターネット調査において、データ入力なども業者委託ができ、安価におさまったため、経費がおさえられた。 分担者に依頼していた手引きの作成については、今年度は文献検討を実施していただいたため、経費は発生しなかった。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
27年度はアンケートによる調査について、データ入力や分析等で経費が必要なため、残額はそれらの経費に計上し、研究が円滑に進むようにする。 分担者の使用計画について、がん患者の中でも特に意思決定への関わりが難しい認知機能障害患者に関する問題を抽出する質的調査の実施に使用する。
|
-
-
-
-
-
[Remarks] 金子眞理子監修,実践のためのがん看護,精神症状のアセスメントと看護援助,医学映像社,2014.
-
[Remarks] 金子眞理子監修,実践のためのがん看護,チーム医療におけるがん看護と倫理的課題,医学映像社,2015.
-
[Remarks] 林和彦監修,金子眞理子原案,がん看護学概論,医学映像社,2014.
-
[Remarks] 金子眞理子監修,実践のためのがん看護,身体症状のアセスメントとケア,医学映像社,2014.