2014 Fiscal Year Research-status Report
健康格差を縮小しソーシャルキャピタルの醸成を促進する市町村保健師の地区管理
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26463569
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Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
春山 早苗 自治医科大学, 看護学部, 教授 (00269325)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 久美子 自治医科大学, 看護学部, 准教授 (80341783)
塚本 友栄 自治医科大学, 看護学部, 准教授 (00275778)
島田 裕子 自治医科大学, 看護学部, 講師 (40556180)
関山 友子 自治医科大学, 看護学部, 助教 (20614192)
青木 さぎ里 自治医科大学, 看護学部, 助教 (90438614)
江角 伸吾 自治医科大学, 看護学部, 助教 (10713810)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 看護学 / ソーシャルキャピタル / 市町村保健師 / 地区管理 / 健康格差 |
Outline of Annual Research Achievements |
保健師活動体制の様相及び活動の工夫を要する地区の特徴を明らかにするために郵送自記式質問紙調査を実施。対象は人口規模により層化無作為抽出した841市町村の母子保健、健康づくり、介護予防の担当保健師各1名、計2523名。調査項目は①保健師個人の地区活動の課題②保健師全体の地区活動の課題③組織内外や住民とのコミュニケーション、保健福祉活動への住民の協力状況等④市町村及び保健活動体制に関する客観的情報。また、地区や集団の特性に合わせた活動の実態と課題。回収数(率)809(32.1%)。 結果は「地区分担制と業務分担制」83.5%、集中配置62.7%。保健師個人の課題は「地区の状況や特徴に即した活動ができていない」62.6%。保健師全体の課題は「地区診断ができていない」63.6%、「一人で地区を担当する活動には限界がある」62.5%。「保健福祉活動に協力を得られる住民が多い」の『思わない』27.8%。「地区や集団の特性に合わせて活動方法を変えている割合」は母子保健が最少。活動方法を変えている地区や集団の特性について、自由記述の質的分析の結果、3分野共通は【人口流出入が激しい】【へき地である】等。母子保健では【出生率が低い】【発達障害児のサポート資源が少ない】等、健康づくりでは【第一次産業従事者が多い】等、介護予防では【農業従事者が多い】【独居世帯および高齢者世帯が多い】等。地区の特徴に関連する課題は「保健福祉活動の住民側協力者の育成に限界がある地区がある」65.8%。 結果から、保健師活動体制の類型化に活動分野の視点は有用であり、地理的特徴だけではなく、人口等からの地域特性の類型化の必要性が示唆された。活動方法を変えている地区や集団の特性は、健康格差が生じる可能性がある環境的要因を示唆しており、地区管理において必要となるアセスメントの視点になると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度の目標は、「保健師活動体制の様相、並びに、健康格差の縮小とソーシャルキャピタルの醸成に関する地区管理の観点からの成果と課題に関する調査」を実施し、保健師の配置部署と部署毎の地区/業務の分担との組み合わせを分析し、保健師活動体制を類型化することであった。人口規模により層化無作為抽出した841市町村の母子保健、健康づくり、介護予防の担当保健師各1名を対象に郵送による無記名自記式質問紙調査を実施することができ、調査の結果から保健師活動体制の類型化に活動分野の視点は有用であることが示唆された。しかし、保健師の活動体制は「地区分担制と業務分担制」が8割を超え、保健師の配置部署と部署毎の地区/業務の分担との組み合わせによる活動体制の類型化は困難であることが明らかとなり、保健師の配置形態等の新たな視点の追加を検討していく必要が生じた。また、当初、地域特性は地理的特徴によって分類し、平成27年度に地区管理の観点からの成果と課題を分析することとしていたが、調査結果から、地理的特徴だけではなく、人口や年少人口割合、老年人口割合、人口の変動、平成の大合併の経験等から地域特性についても類型化していく必要性が示唆された。また、地区管理の観点からの成果は質問紙調査で明らかにすることは困難との結論に至り、代わりに地区管理の観点から活動の工夫が必要である地区の特徴を明らかにした。 一方で、平成27年度から実施予定であった半構成的インタビューによる「成果と課題を踏まえた健康格差を縮小し、ソーシャルキャピタルの醸成を促進する又は持続発展させる保健師の活動方法に関する調査」について、平成26年度の調査結果を踏まえたインタビューガイドの検討等の準備を行い、2市町村の保健師に対する調査を前倒しで実施することができた。 以上から、現在までの達成度を「おおむね順調に進展している」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は第一に市町村の地域特性別及び活動体制の類型別の、健康格差とソーシャルキャピタルの醸成に関する地区管理の観点からの成果と課題並びに課題と保健師活動体制の様相との関連の分析を計画にあげている。平成26年度の調査結果から、保健師活動体制の類型化については「地区分担制と業務分担制」を前提として、活動分野の他、保健師の配置形態等の新たな視点を追加し検討する。地域特性についても、地理的特徴だけではなく、人口や人口の変動、平成の大合併の経験等から類型化を検討する。 以上の結果に基づき、平成26年度調査のデータについて①地域特性別、②活動体制の類型別、③①と②の組み合わせ別に、健康格差とソーシャルキャピタルの醸成に関する地区管理の観点からの活動の工夫が必要である地区の特徴と課題を分析する。また、課題に対する保健師活動体制の様相の傾向を数量化理論解析等により分析するとしていたが、統計学の専門家の意見を得て、かつ質的分析手法も含めて、分析方法を検討する。 第二に半構成的インタビューによる成果と課題を踏まえた健康格差を縮小し、ソーシャルキャピタルの醸成を促進する又は持続発展させる保健師の活動方法に関する調査を計画にあげている。対象数は、20市町村の統括保健師又は管理的立場等にある保健師又はこれらの保健師により推薦された保健師を目標としているが、平成26年度の調査においてインタビュー調査の協力者を募り、18名から協力の意向が示され、内2名の調査が平成26年度に実施済みである。多様な地域特性類型及び活動体制類型の市町村の調査対象となるよう、18名の協力者に研究者のネットワークサンプリング゙による調査対象者を加える。インタビューガイドについては5~6名の調査を終えたところで調査結果を踏まえて、再度、検討する。インタビュー調査の分析を終了できなかった場合には、平成28年6月末まで延長する。
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Causes of Carryover |
次年度512,213円の使用額が生じた理由は、第一に、平成26年3月4日に開催した対面での研究会議費及び旅費(合計約11万円)の事務処理が遅れ、平成26年度予算から支出できなかったこと、第二に、郵送による質問紙調査の経費を中心とする通信費が、後納料金とした調査票の回収率が約3割であったこと等から予算の約半分しかかからなかったこと、第三に、WEB会議5拠点初期費用及び利用料が予算計画時よりも費用が安い業者を選定したことから大幅に経費が少なくなったためである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成26年3月4日に開催した研究会議の会議費及び旅費(合計約11万円)に使用する。残額は、平成26年度の質問紙調査で募った平成27年度のインタビュー調査への協力者18名が、北海道や東北、四国、中国地方等に渡り、また、当初計画では一人でインタビュー調査を実施することとしていたが、平成26年度にインタビュー調査の方法を検討した結果、調査の精度をあげることや質的分析等のために可能な限り二人体制で実施することとしたため、平成27年度当初予算計画の国内旅費18万円では不足すると考えられるため、国内旅費として使用する。
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