2014 Fiscal Year Research-status Report
健康リスクに向き合う人々の多様な生と〈ケアのコミュニティ〉の記述の試み
Project/Area Number |
26502004
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
大北 全俊 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (70437325)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
横田 恵子 神戸女学院大学, 文学部, 教授 (50316022)
新ヶ江 章友 名古屋市立大学, 看護学部, 助教 (70516682)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ケア / コミュニティ / 哲学 / 社会福祉 / 文化人類学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、多様であると考えられる人々の〈健康〉な生とリスクの個人化による画一化との相克を、調査および理論の両者により明示すること、そしてケアのあり方によってその多様性をサポートしうることを示すことによって、人々の多様な〈健康〉を支援する〈ケアのコミュニティ〉の可能性を提示することを目的としている。 対象としているのは、HIV感染症のリスクの高いMSMと外国籍住民、および両者を支援している人々である。本年度は、両対象領域への調査の手法を確定し、倫理審査等を経て調査を開始すること、および理論的研究を遂行することを計画していた。 外国籍住民については、主たる研究分担者の横田によって、フィリピン国籍の住民に対する調査に着手した。大阪にある特定非営利活動法人CHARMの協力のもと、対象とするフィリピン国籍住民の健康および医療アクセスに関する調査を準備しつつ、同時に外国籍住民をケアするCHARMの活動の様子も調査した。調査対象の選定および質問紙等の作成、そしてフィリピン語への翻訳作業、調査員の募集およびオリエンテーション、そしてプレ調査などを経てから質問紙および調査手法を確定した。その後、東北大学大学院医学系研究科の倫理審査の承認を得て、実際に調査を開始する準備が整った。MSMの調査については、主たる研究分担者である新ヶ江によって、これまでの自身の調査記録等を精査し、同時に現在までに実施されているMSMに関する他の調査のレビュー等を行い、改めて課題の設定と調査手法の検討を行った。理論については、主に大北により、本研究の課題である「リスクの個人化」への対抗言説をさぐるべく、政治哲学等の文献研究を実施した。対象としては、リスクの個人化を批判しつつそのオルタナティブを探るJ. バトラーの思索や、M. C. ヌスバウムのケイパビリティの議論、E. F. キテイのケアに関する思索等である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
いずれも論文化や学会発表等までには至っていないが、当初予定していた対象領域の調査の準備が整い、次年度以降の調査および発表・論文化等の準備は整っている。ただし、研究代表者の大北が本年度8月に東北大学に異動し、その関係でスケジュールに遅れが生じ、また倫理審査などへの手続きも予定より遅れた。MSM調査を担当する新ヶ江も年度がわりに大阪市立大学に異動となり、その関係で調査対象の選定および計画を変更、および実際の調査を倫理審査含め次年度以降にすることとした。しかし、初年度としては概ね予定通り進めたものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
27年度の予定として、理論的研究は引き続き大北を中心に政治哲学等の文献研究をすすめ、調査結果等の下支えとなる理論の記述をすすめる。外国籍住民調査については、調査の実施およびその集計と分析を経て、論文化の予定である。また、外国籍住民調査と並行して、研究分担者である横田は、自身のこれまでのHIV/AIDSに関するカウンセラーとしての経験をもとに、HIV/AIDSという健康リスクに向き合う人々およびそのケアをする人々のこれまでの歩みを文献調査を主として実施する予定である。MSMの調査については、改めて調査計画の確定の後、倫理審査を経て、調査を実施する予定である。 また、HIV/AIDSに関する人文社会科学のアプローチについて、国際学会等に参加し、情報収集をする予定である。
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Causes of Carryover |
代表者大北の東北大学への年度途中の異動、研究分担者の新ヶ江の異動が年度末に予想されたことなどにより、倫理審査および調査開始が遅れ、そのため外国籍住民およびMSMを対象とする調査が遅れた。次年度使用額が発生したのは主に調査にかかる経費の未使用による。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
予定通り、外国籍住民調査およびMSMを対象とする調査に次年度使用額を充当する予定である。ただし、外国籍住民調査については、今後規模を縮小することを検討しており、同時に研究分担者の横田の主な研究内容を外国籍住民調査からHIV/AIDSカウンセリングの歴史的研究に変更することを予定している。よって、HIV/AIDSカウセリング研究およびHIV/AIDSの人文社会科学的アプローチに関する学会等に参加するための経費にも使用することを予定している。
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