2016 Fiscal Year Annual Research Report
Has "Bildung" Disappered? German "Bildung" and Mapping of Cultural Knowledge in the present day
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26503009
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
杉山 雅夫 大阪府立大学, 高等教育推進機構, 教授 (00196776)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 教養 / ドイツ哲学 / 儒教 / 日本哲学 / デジタル社会 / サブカルチャー |
Outline of Annual Research Achievements |
今日のデジタル社会において、これまで蓄積されてきた人類の膨大な知的遺産の多くが常時参照可能になった。また情報技術は多くの情報や娯楽を提供すると共に、将来への期待を絶え間なく生み出し、逆に過去の文化的遺産への距離感を拡大しつつある。こうした中で、「教養」と言われる知、すなわち社会の構成員に共通な知的価値観やその理念的内容はどのように変化したのかというのがこの研究の中心課題である。 26年度は、明治におけるそれまで中心的な知であった儒教から西洋哲学へのシフトがどのように可能であったのかを西周や横井小楠を例に論じ、西洋の学問的な議論は、儒教的な概念装置に基づいて理解され、同時に儒教的理解枠の拡大と崩壊をもたらしたことを具体的に示した。 27年度においては、武士階級の規範的な教養知であり、哲学的な議論であった儒教が明治大正を経て西洋哲学にシフトしてしていく中で、教養知自身が知的エリートの高踏的な議論になり、どのように現実への適応力を失ったのかを、儒教の重要な概念である、「日用」という概念の喪失という点から論じた(独文)。また、同時にデジタル社会が具体的に我々の現代社会における知の共有をどのように変化させているのかを様々な研究者の論を元に考察し、知がコピーされ短時間で広範囲に伝播するために、一見量的に拡大しているように見えながら、実は文化的知の創造自身は、技術などの特定の領域を除いて、むしろ分散・縮小する傾向があることを指摘した。 最終年度である28年度においては、ハイカルチャーと呼ばれた従来の伝統的な教養システムに代わり、急速に広まったネット上に存在するビデオや画像を含むコンテンツなどを主にしたサブカルチャーが、人々の様々な生の価値観を方向付ける重要な指標として確立しつつあることをアンソニー・ギデンスなどの論を参照しながら、アメリカドラマ、韓国ドラマなどの視聴者研究を元に考察した。
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