2014 Fiscal Year Research-status Report
原発震災と市民社会研究―グローバルな連帯による子どもの保護を考える―
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26510007
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Research Institution | Okinawa University |
Principal Investigator |
吉井 美知子 沖縄大学, 人文学部, 教授 (30535159)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 原発 / 放射能 / 市民社会 / 連帯 / 子どもの保護 / 福島 / ニントゥアン / シノップ |
Outline of Annual Research Achievements |
「原発震災と市民社会研究―グローバルな連帯による子どもの保護を考える―」の初年度として、文献の収集に取り掛かるとともに、2014年4月から新たに赴任した沖縄での人脈構築に注力し、6回におよぶ沖縄県内での出張を通して研究テーマに関わるセミナーや講演会で報告者や出席者との議論を行うとともに新たな聴き取り調査を開始している。 5-6月には関西方面へ出張し、共編著書の編集を行った。同書はその後の編集作業を経て2015年2月に明石書店より出版された。これは本科研費の最初の出版物成果品といえる。 8月にはトルコへの海外出張を敢行し、IPRA国際学会での研究発表を行うとともに、トルコでのフィールド調査を実施した。発表内容は英文論文としてすでに査読を完了、国際ジャーナルへの掲載に向けて現在編集作業が進んでいる。国際学会口頭発表としては、本科研費の最初の成果である。9月にはベトナムでの現地フィールド調査を実施するとともに、台湾で国際会議に参加、グローバルな連帯が築かれている現状を視察することができた。また台湾北部でのフィールド調査も行った。 11月には九州にてフィールド調査と学会出席、さらに東京での国際会議に出席して国際的人脈の構築を行った。12月-1月には再度のベトナムフィールド調査を実施し、枯葉剤被害者の子どもたちの保護についての調査に取り掛かった。また3月には個人研究でのフランス出張中に、本科研費でのフィールド調査を効率よく実施した。 以上の主たる成果のほかに、年間の和英文による新聞・雑誌記事10本、国内外での講演8本を通して研究成果の社会還元を図った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
別途取得ずみの科研費基盤研究(C) 「市民社会は児童問題の解決にいかに貢献できるか」は当初2013年度が最終年度の予定であったが、事情により2014年度にまで延長した。 さらに本科研費申請時点ではまったく予期していなかったことに、2014年3月末に所属変更となり、本土から沖縄への転勤・転居という一大事があった。このため本年度は新たな職場での授業や生活基盤の立ち上げと同時に、前年度から持ち越した科研費の最終年度と本科研費の初年度という、大変に密度の濃い1年となった。 幸いなことに健康に恵まれ、周囲の協力も得て研究に向ける時間や労力を確保することができた。何より研究への執念を維持できたという精神面が非常に大きいと考える。 多くの学会やシンポジウムが開催される東京、京都、大阪近辺からは遠く離れたが、科研費のおかげで積極的に本土や海外にも出て行き、研究資料を得るばかりでなく他の研究者や市民社会との連携を維持することができた。本年度の主な業績は国内・国際学会発表各1本および共編著書1冊であったが、研究初年度としては上々の出来であったと自己評価している。また遠隔地に異動になったにもかかわらず、記事10本、講演8本と、市民社会への研究成果の還元も、これまでと見劣りしない頻度で続いている。特に講演では三重、東京、沖縄、ベトナム、パリと各地を転々した。インターネット配信の記事と併せて、グローバルな発信ができたと自負している。
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Strategy for Future Research Activity |
第2年度である2015年度は、第1年度に収集した聴き取り調査資料の分析と発表に力を入れる。同時に、枯葉剤被害の子どもたちに関する調査もさらに詳しく続けていく。4月には東京、福島でフィールド調査をすでに実施した。9月にはベトナムでの調査を予定している。 成果発信としては、6月に学会例会での研究発表、7月に広島での学会でパネル発表、さらにドイツでの国際学会での研究発表を予定している。11月には地元沖縄での国際学会、2016年3月にはカナダでの学会発表とフランスでの講演を検討中である。 国際ジャーナル投稿の英語論文は、順調に進めば今年中に刊行になる。7月の学会パネル発表は他のパネリストとともに共著本としてまとめて出版する相談を進めている。その他の調査や発表が終わった研究成果も順次、論文や報告書の形で世に出していきたい。また市民社会への直接の還元として、雑誌・新聞への投稿を続けるとともに、機会があれば講演依頼にも積極的に応じていきたい。 予算計画としては、今年度特に大きな機材の購入は予定していないが、使用中のパソコンやプリンタが不調となれば、買い替えを検討する。研究成果の買取り、印刷費用を予定する。また英語での成果発表に際しての校正費用が必要である。研究に要する書籍や雑誌、さらにトナー、用紙、電池、文房具等の消耗品を購入する。出張旅費は、沖縄に移ったことから航空券代がかかり、前年度と同様に多額が必要となる。東京、福島、京都、広島等の国内旅費のほか、7月のドイツ、9月のベトナム、3月のカナダ・フランス出張旅費に予算を充てたい。また本科研費の研究遂行に非常に役立つ学会・研究会等の年会費や参加費用も、本科研費予算で賄う。年会費は間接経費から、参加費は直接経費より支出する予定である。
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