2014 Fiscal Year Research-status Report
住宅再建にかかる公的支援を補完するシステムの制度化-復興基金・義援金に着目して-
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26510014
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
青田 良介 兵庫県立大学, 政策科学研究所, 研究員 (30598107)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山崎 栄一 関西大学, 社会安全学部, 准教授 (00352360)
馬場 美智子 兵庫県立大学, 防災教育センター, 准教授 (40360383)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 住宅再建 / 復興基金 / 義援金 / 公的支援 / コミュニティ / 中間支援組織 / 自助・共助・公助 / ガバナンス |
Outline of Annual Research Achievements |
1.東日本大震災被災地における復興基金等による住宅再建支援策について、岩手県と県内6市町村、宮城県と県内8市町の状況を分類した結果、支援には大きく18パターンあることが判明した。すなわち、「移転、現地再建」、「災害危険区域」「新規建設・取得、補修改修」「利子補給、直接補助」等に応じた多様な支援策が用意されたこと、さらに、宅地復旧やバリアフリー等の追加支援のあることがわかった。 次に、各メニューの支援額を明確にするため、両県の5つの基礎自治体(宮城県名取市、仙台市、気仙沼市、岩手県陸前高田市、釜石市)を事例に、データベース化した。これらから、以下の知見を導き出すことができた。①国の支援策が限定されるなかで、地方自治体では主に復興基金を使って地域の実情に応じた独自の支援策を展開したこと。②これまでの災害以上に復興基金を活用する傾向が高まってきたこと。③他方、市町村独自に支援策を展開したことから格差が見られること、④そのため、国や県である程度の調整、基準作りが必要ではなかったかということ。⑤復興基金そのものも財源を国に依存しており国の財源なくして住宅再建が難しいこと。 2.県レベルでの義援金による住宅再建支援について、宮城では津波浸水区域での住家被害に対する加算や震災孤児への支援等メニューが多いが、1世帯当たりの金額は岩手の方が多い。そして、被災者の手元に渡る義援金は、①赤十字や共同募金等全国ベースで集まったもの、②県ベースのもの、③市町村ごとのもの、からなるため結果的に住宅再建支援に差が生じることが明らかになった。 3.市民や民間による財源面での被災者支援は難しいが、新たなコミュニティ形成を支援する中間支援組織があり、福島原発事故に伴う広域避難者への支援を福島県内外で調査した。その特色として、ネットワーク力、アウトリーチ、専門性といった機能を有することがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
市民や民間の資源を取り入れた海外での社会貢献策に関する調査が実施できなかったものの、26年度の大きな目標である東日本大震災被災地における復興基金・義援金の住宅再建支援策及びその運用実態、効果に係る調査と、国内での市民や民間の資源を取り入れた社会貢献策にかかる調査は概ね達成できたことから、全般的にはおおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
1.東日本では、高台移転、土地区画整理、住宅建設等にさらに数年要すると見込まれることから、住宅再建支援調査を継続する。過去の復興事例からして、今後は「コミュニティの復興デザイン策定」「まちづくり協議会形成」「まちづくり専門家活用」といったコミュニティへの支援に移行すると考えられることから、これらについても精査する。申請時に福島県については、原子力発電所事故により多数の広域避難者が全国に点在し帰還の見通しがたちにくいこと等を理由に本研究の対象に含めないとしたが、全国の避難地では居住をも想定した支援が進んでおり、福島県内でも住宅再建が始まっていることから、考察の対象に加えることとした(24年度から調査開始)。 2.そうした上で、発災から5年を契機に住宅再建支援策をまとめ、その中での復興基金、義援金の役割について、過去の事例とも比較しながら検証する。特に、これまでと異なる仕組みとして、県に設置された基金の一部を市町村に交付したこと、民間財団を設立せず被災県及び被災市町村の予算に組み込んだ点が、被災者支援にどのような効果や影響を及ぼすのか考察する。 3.市民や民間の資源を取り入れた社会貢献策調査として、例えば、米国の低所得者向け住宅建設や衰退コミュニティの再生を手掛けるコミュニティ開発法人や、英国でNPOが自治体と連携、高齢者・単身者等へアフォーダブル住宅を提供する一方で補助金の交付や融資・税制面での優遇を受けるハウジング・アソシエーションのような事例を調査する。 4.巨大災害発生後における復興基金、義援金活用を中心にした新たな住宅再建支援モデルを提示するため、将来巨大災害による被災想定地域(例:南海トラフ地震、首都直下型地震)を対象に、現在の住宅・まちづくり状況、災害後予想される住宅再建支援・復興まちづくり政策等について調査する。
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Causes of Carryover |
住宅再建支援にかかる東日本大震災被災地の調査を優先させ、海外における市民や民間の資源を取り入れた社会貢献調査を実施しなかったことから、生じたものである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度は、例えば、米国の低所得者向け住宅建設や衰退コミュニティの再生を手掛けるコミュニティ開発法人(CDC : Community based Development Council)や、英国でNPOが自治体と連携、高齢者・単身者等へアフォーダブル住宅を提供する一方で補助金の交付や融資・税制面での優遇を受けるハウジング・アソシエーション(HA : Housing Association)のような事例を調査することで、次年度使用額を執行する予定である。
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Research Products
(14 results)