2014 Fiscal Year Research-status Report
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26510018
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
久徳 康史 中央大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (70569706)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
檀 一平太 中央大学, 理工学部, 教授 (20399380)
山科 満 中央大学, 文学部, 教授 (40306957)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | PTG / PTS / PTE / 東日本大震災 / 心理的適応モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
東北地方太平洋沖地震などの大規模複合災害は非常に大きなストレスを伴い、心理的トラウマとなりうる出来事(PTE)の最たるものである。PTEにより最も頻繁に引き起こされるネガティブな心理的反応の一つとして、心的外傷後ストレス(PTS)があげられる。PTEはネガティブな心理反応だけではなく、外傷後成長(PTG)というポジティブな心理的反応も引き起こすことがしられている。PTSとPTGの関係性に対して、PTSがPTGに先行するのか、PTSがPTGと相関するだけなのかと言う理論上の論争が起こっている(ZoellnerとMaecker、2006)。この問題に対してDekelら(2012)は、測定1(T1)と測定2(T2)第四次中東戦争の退役軍人を被験者として7年間の縦断的研究を行い、T1で測定されたPTSがT2で測定されたPTGと正の相関があることが分かった。しかし、この研究だけでは、測定間隔の長さによりPTSとPTGの関係性がどの様な影響を受けるのかは明らかにされていない。そこで本研究では、2つの時点で測定されたPTSとPTGの間の関連性を、短い間隔(約3ヶ月、12ヶ月の災害の後)と長い間隔(約3ヶ月と災害後の42ヶ月)それぞれにおいて、反復測定による自己相関をモデル内に含んだ特殊な形の構造方程式モデルであるauto regressive cross lagged modelを用いて検証した。その結果、測定期間がトラウマ後短期的である場合はPTSとPTGの関係性は検出されないが、長期的な場合には検出できることが分かった。これは、測定期間が短い場合、同一の変数のT1とT2の相関が高く、PTSとPTGの関係性がとらえられないことに起因すると推察される。これらの知見は査読付き国際学会である2015年度APAにおいて発表が確定している。また、本研究に関する手法をオペレーションズリサーチ誌上にて報告し普及につとめている(久徳,檀,2015)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、測定期間のインターバルの長さによりPTSとPTGの関係性がどの様に変化するかと言う理論上の論争に一定の解決をつけることが出来得る知見が得られた。ただし、研究計画時に予定していた震災後40か月、45か月、50か月の測定よりも測定単位として6か月区切りで行う研究が多く発表されていることから、当初の予定を変更して測定時期をそれぞれ震災後42か月、54か月、66か月の1年間隔に変更した。それに伴い、平成26年に計画していた縦断的測定による震災に対する心理的適応モデルの確証に先駆けてPTSとPTGの関係性の変化を検証し、査読付き国際学会である2015年度APAにおいて発表が確定している。また、本研究に関する手法をオペレーションズリサーチ誌上にて報告し普及につとめている(久徳,檀,2015)。
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Strategy for Future Research Activity |
当初平成26年度に計画していた縦断的測定による震災に対する心理的適応モデルの確証的分析を震災後54か月の測定後に行う。この結果を平成28年度以降のアメリカ心理学会による発表やPlosOneなどの学術誌による報告し周知を目指している。
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Causes of Carryover |
研究計画時に予定していた震災後40か月、45か月、50か月の測定よりも測定単位として6か月区切りで行う研究が多く発表されたことから、先行研究との比較のし易さを考慮し、当初の予定を変更して測定時期をそれぞれ震災後42か月、54か月、66か月の1年間隔に変更した。それに伴い、研究計画時に予定していた使用額と本年度の使用のに差が次年度使用額として生じた。又、この変更に伴い本年度は研究分担者である檀の理論構築にかかる費用等が発生しなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
約500名のインターネット質問票調査を行うため、調査費用が発生する。データ収集後は当初平成26年度に計画していた縦断的測定による震災に対する心理的適応モデルの確証的分析を震災後54か月の測定後に行う。平成26年度得られた結果を査読付きの国際学会であるAPAでの発表が確定しているため、渡航費用と学会発表費用が必要となる。更に、研究結果の打ち合わせのための出張費が生じる。データ解析に関し、複数のコンピュータープログラムによる検討を行う必要があるため、ソフトのアップデート費用が生じる。データ解析に際し、取得データの保存メディアや解析に用いるコンピューター関連機材の購入を行う。 また、参考文献の購入費用とする。
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