2015 Fiscal Year Research-status Report
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26510020
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
吉野 馨子 (谷垣馨子) 東京農業大学, 国際食料情報学部, 教授 (70448918)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 三陸 / 漁村 / コモンズ / 資源 / 多様性 / 共同 / 地域社会 / 暮らしの成り立ち |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、漁村におけるコモンズ的なものを可能とし支える暮らしの基盤の成り立ちに注目し、漁村での共有資源管理とそれを支える基盤の仕組みの固有性と普遍性を見出すとともに、その価値と継承の可能性を模索することを目的としている。 二年度目である平成27年度は、宮城県石巻市雄勝町の外洋に面した浜を中核とし、連続的に連なる女川町、牡鹿半島も視野に入れつつ、地域住民が利用・管理・作り上げてきた伝統的な資源の確保と利用、そのための共同の戦略を探索した。 まず、明治40年代の宮城県漁業統計をもとに、各浜の漁業の特徴の類型化をおこなった。主成分分析の結果、「魚種が単一的か多様か」と、「漁具に依存的(投資大)か漁場の豊かさに依存的か」という2つの分析軸が抽出された。中核となる雄勝の調査浜は、漁場の豊かさに依存し魚種が多様な浜と分類、された。同様な特徴をみせた江島、寄磯浜にて聞き取り調査を行った。離島であり土地に大きな制約のある江島では、多くの資源を外部に依存せざるを得なかったが燃料源確保のために共同で鮫の漁を行われていた。寄磯浜でも、同様に燃料確保のための共同作業などがあった。さらに、寄磯浜では、えびす子という形で、地域の子供たちが血のつながりのない浜の大人と疑似親族関係を結び、地域の共同性を高めていた。 このように、それぞれの地域の立地、漁場の状況、港の条件、森林や平地のあり方等に影響され、漁業の形が作られ、多様な協同の形がみられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、漁村におけるコモンズ的なものを可能とし支える暮らしの基盤の成り立ちに注目し、漁村のもつ共同性、共有資源の利用と分配のあり方を描き出す。その知見より、漁村における共有資源管理とそれを支える基盤の仕組みの固有性と普遍性を見出すとともに、その価値と継承の可能性を模索する。 宮城県内の三陸漁村全体に視野を広げ、複数の浜での漁村での資源利用と生活の成り立ちや地域運営について聞き取りを行うことができた、また、雄勝の中核的な浜での、異なる年代の住民、異なるミマキ(親族グループ)の住民への聞き取り調査をおこない、さらに多角的に地域の暮らしを捉えた。
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Strategy for Future Research Activity |
3年度目からは、以下の調査を予定している。 1)中核的何浜を対象に、漁村コミュニティが伝統的に形作ってきた資源利用の形や共同性に関する現況及びそれへの評価について、次世代を担う地域の子供や高齢世代を支える他出子など、多様な年齢層、立場の人たちへの調査を行う。 2)浜ごとの多様性について、さらに、聞き取り及びデータの収集を続け、より深い共同の論理を探る。 3)対照となる山村地域における共同性の現状について、とくに現在も活発に維持されている集落の水路について、明治初年度の古地図と現在の土地利用を結ぶ歴史的な展開を捉え、その協同のロジックを探るともに今後の展望について聞き取りをおこなう。 これらを通し、山村と比較した漁村のコモンズ、共同性の特徴を明らかにするとともに、調査地が抱える課題とポテンシャルについて、地域資源、共同の視点から検討をおこなう。
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Causes of Carryover |
3年度目は配票調査等、地区住民全体への意識調査を実施予定、かつ成果の還元にも力を入れていく計画であり、大きな支出が見込まれるため、3年度目に予算を繰り越した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
雄勝町大須地区での住民に対する配票調査を実施予定。調査結果の地域への還元の意図も含めた地域の子供たちへの参加型調査を実施予定。さらに、中間報告書も執筆予定である。
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Research Products
(1 results)