2014 Fiscal Year Research-status Report
個体内・個体間の資源競争による樹木成長・衰亡過程の統計モデリング
Project/Area Number |
26540009
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
久保 拓弥 北海道大学, 地球環境科学研究科(研究院), 助教 (80344498)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 樹木の直径成長 / 植物個体内の資源分配 |
Outline of Annual Research Achievements |
名古屋大学稲武フィールドのヒノキ林分の成長・衰亡データ (以下,稲武データ) に見られるパターンをうまく説明できるような樹木内各部の成長・衰亡をあらわす階層ベイズモデルを構築する準備作業を行った.稲武データの整理とヒノキ林分の成長・衰亡の可視化のプログラミングなど完成させた.この林分に関する追加データの探索とデジタル化も並行して進めた.稲武データから各年の個体ごとの幹の直径変化がわかるので,このデータとパイプモデルを組み合わせることで,年ごと個体ごとの垂直葉群分布が構成可能になった. データにもとづいて三次元葉群を生成するとき使用するマルコフ連鎖モンテカルロ法 (MCMC) の実装などについて研究を進めた.複雑な葉群構造の生成のためには,パラレルテンパリングなどの手法を使って多数の「温度」異なる葉群セットを準備し,適切に入れ替えていく方法が必要になることがわかった.複数葉群のパラレルテンパリングの実装を行い,温度分布の設定に関する知見を得た. 樹木個体内の局所的な成長から資源分配の様子を推定する方法を確立するために,いきなり三次元的な問題を検討しなければならない稲武データではなく,一次元的な問題だけを考えればよいミズナラの直径成長ならびに道管構造の時系列データを状態空間モデルで説明する手法を開発した.これによって樹木成長の時系列データの統計モデリングに必要な知見が得られた.共著者の一人として,この研究の論文を作成し,樹木生態学の国際学術誌に投稿し受理された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
葉群の三次元構造を特定するためアンサンブル葉群の生成モデルの開発が遅れている.これは葉群の形状に関する統計モデルにもとづいて,マルコフ連鎖モンテカルロ法を 使って可能な (尤度の高い) 葉群のアンサンブルを構成する方法である. 原因は再構成された葉群内の光分布を評価するシミュレイターを高速化する作業が遅れている.今後の対策としては,光分布のモデルを可能なかぎり単純化して高速化を実現する方法を検討している.モデルを簡略化した場合の問題点などを調べながら,光分布モデルの設計を見なおしていく予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
樹木個体ごとの成長・衰亡モデルにおいて基本となる同化物のsink-sourceモデルの開発を進める.これは樹木の個体先端・枝末端の各モジュールにおける「得点」を評価し,その得点に応じて同化物を分配するものである.稲武データの時系列変化にもとづいて,上のような機構のみならず,さらに個体差などを考慮した階層ベイズモデルを構築し,パラメーターの事後分布を推定する. 個体内・個体間の光資源をめぐる競争の帰結として,個体ごとの同化物生産力が決まり,さらに個体内部の同化物分配によって樹木のどの部分が成長し,あるいは衰亡するのかを決めるパラメーターが推定される. さらに個体そのものが死ぬ確率の統計モデルまで発展させる.このような問題は植物生態学にとって未知の問題であり,稲武データにおける生存個体・死亡個体をうまく説明できるような統計モデルを試行錯誤によって作る必要がある.第1年目の成果もとりこんで,個体の死亡確率モデルを探索する.これらの研究で得られた成果を生態学の国際学術誌に投稿する.
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Causes of Carryover |
平成26年度の受領額累計 650,000 円の約5%に相当する34128円が次年度利用額となった理由は,物品費・旅費をやや過大に見積もっていたためであり,この点に関しては研究上の支障は生じていない.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用となった34128円などについては,消耗品を主とする物品費と論文の英語校閲のための謝金として充当する予定である.
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Research Products
(4 results)
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[Presentation] GLMMの紹介2015
Author(s)
久保拓弥
Organizer
第 2 回日本社会心理学会春の方法論セミナー
Place of Presentation
上智大学
Year and Date
2015-03-25 – 2015-03-25
Invited
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